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選挙システムからみる投票率向上策

4月28日、衆議院の3つの補欠選挙が実施されました。東京15区、島根1区、長崎3区。
ご存じの通り、結果は立憲民主党の3勝。自民党は唯一候補をたてた島根1区で敗戦、あと2つは候補擁立を見送った不戦敗でした。

事前の世論調査でも立民リードと出ていましたし、自民党の裏金問題や歴史的な円安など政権批判の要素には事欠きませんので、妥当な結果でしょう。永田町の動きに詳しい知人の記者いわく、岸田政権も3敗することは「織り込み済み」だったそうです。

今後の政局などについては数多くの報道が出ていますので、それはそちらに譲るとして、ここでは投票率について掘り下げます。

今回の3つの補選、いずれも過去最低の投票率でした。

投票率が低いというのは、端的にいえば民主主義が十分に機能していないということです。投票率を上げるのは簡単なことではありませんが、現地取材した韓国の総選挙を参考に、選挙システムで改善できる点を考えてみたいと思います。


そもそもゴールデンウィーク

前提として、補欠選挙は総じて投票率が上がらない傾向にあります。全国一斉の政治決戦ではないので、致し方ない側面はあります。

ただ、そうだとしても、今回の3補選はゴールデンウィークの最中に投票日が設定されたことからして、投票率の「足を引っ張った」のは間違いありません。選挙公報を読み込むより、旅行先を検討する方が楽しいものです。

一方、韓国の場合、大統領選挙や総選挙、統一地方選挙の投票日は水曜日に設定され、この日は公休日となります。

なぜ水曜日か。

週の真ん中に投票日(かつ公休日)を置くことで、「連休となって遊びに行く」のを防ぎ、投票を促すためです。まさに日本のゴールデンウィーク状態を避ける目的なわけです。

実は、2004年の総選挙までは木曜日が投票日でした。しかし、週休二日制が定着してきて、人々は金曜日さえ有給休暇をとれば4連休となり、ちょっとした海外旅行にも行けるように。

そこで、公職選挙法が改選されて水曜日に変更されたのです。月曜日や金曜日では自動的に3連休になりますし、火曜日でもやはり月曜さえ有給をとれば4連休。もう水曜日一択となったわけですね。

しかも水曜日は選挙のための公休日なわけですから、政府やメディア、BTSはじめ著名人たちが「投票日だ、投票所に行こう」と大合唱

保守派と進歩派の対立が激しい韓国ですが、こと投票率の話となると「高いことが国益に資する」というコンセンサスが国全体であります。

全国どこからでも期日前投票

もう一つ、今年の韓国総選挙で改めて感心したのは、期日前投票は自分の居住地だけでなく全国どこの投票所からでも実施できることです。とくに事前の申し込みも必要なく、身分証明書さえあればOK。
地方に長期間出張している人は助かりますよね。

この期間、地図アプリを開くと丁寧にも「あなたが現在いる場所に近い事前投票所」が自動的に表示されます。

大きな丸で囲んだのが「あなたの周辺にある投票所を検索してみてください」というメッセージ、小さな丸で囲んだのが事前投票所(NAVER地図より)

この「全国どこからでも期日前投票」は2014年から本格的に導入されています。韓国で10年前から実施しているシステムが、日本でできないとは考えにくいです。
今回はとくに期日前に投票をする有権者が多く、31.28%と過去最高に達しました。

今回紹介した韓国の選挙システムにおける2つの工夫は、全国規模の選挙だからこそ実施できるものであり、今回の日本の3補選のような限定的な選挙では難しいのは確かです。
ただ、普段から全国規模の選挙において投票率を上げる努力をすることが、ひいては補選の投票率アップにつながるでしょう。ご参考に、衆院選・参院選それぞれの投票率の推移です。

総務省の資料より
総務省の資料より

国政選挙だけでなく、地方選挙でも投票率は右肩下がりです。

日本の場合、韓国や台湾と違って、「安全保障政策をめぐって2大政党の考え方が鮮明に違う」という明確な対立軸が希薄なため、投票率が上がりにくいという本質的な問題はあります。
ただ、そこで思考停止したり諦めたりするのでなく、まずは選挙の仕組みで工夫を尽くすよう、各政党や総務省で今一度真剣に考える必要があると思います。

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