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ディーセントワークについて考えてみるー障害者雇用に重きをおいてー

もうすぐクリスマスということもあって、最近はシュトーレンにハマっています。ハイボールとシュトーレンの相性がばっちりで、LaLachocolatのシュトーレンが大人な味に仕上がっているのもまた、ハイボールをぐいぐいと飲ませてくれます。
皆さんもよかったらぜひ!


さて、今日はディーセントワークについて考えてみます。今晩の星明ゼミのテーマでもあるので、自分なりに考える良い機会になれたらと思っています。

ディーセントワークは、うちの理事長、松上さんもよく使う言葉でもあり、松上さんが研究してまとめた考え方があるのもあって、僕にとっては馴染みのある言葉でもあります。

改めて、ディーセントワークを考えてみます。

ディーセントワークとは

ディーセント・ワークとは、「働きがいのある人間らしい仕事、より具体的には、 自由、公平、安全と人間としての尊厳を条件とした、 全ての人のための生産的な仕事」のこと(ILO駐日事務所HPより引用)とあります。
Weblio辞書で調べると、ディーセントは「見苦しくない」「ちゃんとした」「きちんとした」などがあり、「ちゃんとした仕事」がディーセントワークの意味でもあるでしょうか。

ディーセントワークは、1999年の第87回ILO総会に提出されたファン・ソマビア事務局長の報告で初めて用いられ、「働きがいのある人間らしい仕事」とも言い換えることができるといわれています。
この考え方は現在においても浸透されていて、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals):SDGsでもゴール8に「働きがいも経済成長も」というディーセント・ワークを促進する項目が入り、世界共通の目標になっています(日本労働組合総連合会HPより引用)。

障害のある人のディーセントワーク

さて、話題は障害のある人に移していきたいと思います。先ほども少し触れた松上さんの研究の話から入っていきます。

まずは、平成25年(2013年)の研究事業の話です。平成25年度独立行政法人福祉医療機構社会福祉振興助成事業において、「B型事業所のディーセント・ワーク研修事業」が行われ、松上さんは委員長として研究事業に参加されました。その時の詳細はこちらです。https://npo-cw.net/wam/2014/

今年の11月に開催した当法人主催の「実践報告会」では、埼玉県立大学名誉教授の朝日先生に基調講演をお願いしましたが、朝日先生も上記の委員に入っておられ、豪華メンバーで研究がなされたことが伺えます。成果物としてのワークブックはとても見やすいものになっているので、ご参考にしていただけたらと思います。
https://npo-cw.net/wam/2014/pdf/workbook.pdf

障害のある人のディーセントワークを考える視点として、松上さんは法人のブログで以下の7点を重要な項目と位置付けています。詳細は法人のブログをご覧いただけたらと思いますが、どの項目についても、障害のある人の「働く」を考える際にとても重要な視点であると感じています。

1、地域社会での暮らしが提供されること
2、社会から認められる役割があること
3 、「働けない」ことを「障害の問題」にしないこと
4、合理的配慮がなされ、「強み」が発揮できる環境が提供されること
5、ニーズに応じた様々な働きが実現できること
6、働きに応じた正当な賃金が得られること
7、チャレンジできる、学習できる環境が提供されていること

https://www.suginokokai.com/matsugami/0063.html

障害者雇用におけるディーセントワークを考える

さて、本題というか、いつもnoteで取り上げる「障害者雇用」「就労支援」をテーマにして、ディーセントワークをもう少し深掘りしたいと思います。
考えを深めるにあたっては、前述の松上さんが考える7つの視点を用いていくこととし、特に、7つのうちの2,3,4,7について深掘りしてみます。
主には、「障害者雇用」「企業」を主テーマにして考えを深めてみたいと思います。

2、社会から認められる役割があること

まずは、2について。
企業で雇用され、職場で働くことができているとなると、「社会から認められる役割」は十分に達成している感じでしょうか。このあたりがポイントのように思います。
「役割」とは、周りから与えられた役目を担うことにあり、職場や周りからの期待に応えることでもあると思います。どんな職場で、どんな人と一緒に働くかは、障害の有無に関係なく大事であると思いますが、その視点で考えると、職場などの周囲環境との関係性が「役割」を充実したものへと繋げるように思います。障害者雇用における「役割」は重要な指標なのではないでしょうか。

3 、「働けない」ことを「障害の問題」にしないこと

次に、3について。
就労移行支援やA型、B型など、いわゆる就労系福祉サービスでは、「就職を希望する障害のある人」が一定数存在します。職業訓練を経て就職する場合が多いですが、訓練時に「働けるor働けない」を支援者が勝手に決めつけている場合は少なくないように思えます。障害は「社会モデル」との考え方が近年は一般的となりましたが、働けるかどうかは個人に起因するのではなく、社会側の要因も多いため、企業開拓などで適する職場が見つかることで、「働ける」に繋がることは多いように思います。

4、合理的配慮がなされ、「強み」が発揮できる環境が提供されること

言うまでもないかもですが、合理的配慮はとても重要な視点です。
ただ、企業の価値観や職場環境によっては、配慮のあり方は企業によってそれぞれであることも多く、障害のある人一人ひとりに合わせた柔軟な配慮は、まだまだ不十分さもあるように感じます。
個人的には、個々の状況に応じた「配慮」と「支援」があってこそ、「強み」は活かされることができると思います。ディーセントワークの実現を目指すのなら、「配慮」と「支援」が土台となることは忘れてはいけないように思います。

7、チャレンジできる、学習できる環境が提供されていること

最後は7について。「チャレンジ」「学習」の視点です。
障害者雇用を企業の立場で考えると、「雇用はスタート」の意味でもあります。これから職場で一緒に働き、本人たちの成長が企業の成長に繋がることを期待しているのもあるので、雇用は先行投資の意味も含んでいるように思います。
もちろん、障害のある人の今までの経験、キャリアなどを活かした雇用もあるはずですが、職場でうまく適応し、本人らしさで力を発揮してもらうには、企業理念や職場のルール、今後の方針や個々の役割期待などを教えていく必要があり、個々がチャレンジできたり学習できたりすることがこれからの成長に繋がる大切な視点になるように思います。

ただ、多くの障害者雇用企業は、雇用がスタートというよりは雇用率ありきも多いために「雇用がゴール」になりがちです。チャレンジは個人の意欲を高め、ワークエンゲージメントを高めることにもなり、学習することで潜在能力を引き出すことも期待できますが、実際にそのような企業がどれくらいあるかは分からないような気もしています。

また、障害者雇用の多くは非正規採用でもあるために、チャレンジと学習の機会は限定的でもあるでしょうか。仕事が充実し、働きがいのある仕事を実現するのなら、「チャレンジ」と「学習」は重要なキーワートである思います。

まとめとして

冒頭では、ディーセントの意味について「見苦しくない」「ちゃんとした」「きちんとした」などがあるとご紹介しました。最近は、僕の個人的な意見の偏りもあって、「雇用率ありきの障害者雇用」がどうしても目立っているように思えてしまいます。「ちゃんとした働き方」はこれからの障害者雇用にとって重要なキーワードではないでしょうか。

働きがいを一人ひとりがどのように感じるかは、個人のことでもあります。でも、仕事は一人でできるものではないです。誰かとともに働くことで成り立つことは多いし、誰かと一緒に働くことで成し遂げられることは喜びに繋がることも多く、自己実現がOQLをよりよくするものと感じます。

「仕事は楽しいもの」
「働きがいのある仕事が一人ひとりの人生を豊かにする」

個人的には、そんなふうに思います。そんな障害者雇用の実現のために、就労支援はまだまだがんばる必要がありそうです。

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