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担当する利用者の方をもつ、就労支援者に求められること

前回は、これからは「働き始める人」に向けて書きました。
今日はその続きというか、担当利用者さんをもつ支援者に求められることを書きたいと思います。

*前回の記事

 

ちなみに担当利用者とは、個別支援計画を作ったり、定期面談をしたり、通院同行や企業訪問・面接同行などを主に担当させてもらう利用者の方のこと。
利用者の方にとっては、メインの支援者って感じでしょうか。

「担当する」とは、そんなイメージです。

 

1、文章で伝えることができるチカラ

僕のなかで、一番大切なチカラはこれだと思っています。
いわゆる文章力です。

僕たちは就労支援を利用者の方に提供する人ですから、当たり前ですが「プロ」です。
プロは、お客様である利用者の方にサービス提供の内容や進捗、結果などを説明する必要があります。
これも当たり前ですよね…。

 

少し話はそれますが、自閉症のコミュニケーション支援について実践と研究をされている香川大学の坂井先生が書かれた「知的障害や発達障害のある人とコミュニケーションとのトリセツ」では、以下のようなことが書かれていました

・音は消えていく
・視覚情報は消えにくい
・聞いて理解よりも、見て理解

知的障害や自閉症、発達障害の人にとって、視覚的な支援は合理的配慮の視点で言っても、とても有効なものだと思います。

 

さて、話を戻します。

文章で伝えるチカラとは、坂井先生の言葉にあるとおり、利用者の方と関わる上でもとても大切です。
個別支援計画の作成ひとつにしても、支援計画は利用者の方のために作成するものですから、読みやすい文章で書くことが大切となってきます。

また、福祉の仕事は、ケース記録やケース会議の議事録、個別支援計画の作成、暫定支給など行政に提出する書類の作成、履歴書や職務経歴書の添削など、文章に携わる仕事はとても多いと思います。
その時の様子や支援の進捗・結果などを分かりやすく書く必要がありますし、読み手を意識した言葉選びも大切となります。

それに、就労支援は企業や地域との接点も多い仕事ですから、メールでのやりとりも多いでしょうし、noteのようなブログで情報発信することも多いと思います。
YouTubeや5Gなどで動画に対する注目度が高まっていますが、文章でコミュニケーションすることはまだまだたくさんあり、プロとして仕事する上では避けては通れないことだと思います。

…とは言っても、文章を書くのは難しいです。
僕もこうやってnoteを書くことでテキストコミュニケーションのスキルアップを鍛えているようなものですし、描き続けることで上手くなりたいって思っています。

この項目の締めくくりは、おすすめの本をご紹介。
以前、noteでも書いた「20歳の自分に受けさせたい文章講義」です。

とっても読みやすい本ですし、シンプルにまとめられていて、すごくわかりやすいです。
ぜひ、読んでもらえたらと思います。

ついつい口頭で伝えたくなりますけど、音(口頭)は消えてしまうものですから、形に残る文章でわかりやすく伝えられるよう努めていきたいですね。

 

2、「できる」「できない」は、企業が評価

ここでは、評価の話。
ポイントは、企業の視点で考えることです。

就労支援の現場では、利用者の方の「できるorできない」を支援者間で話題にすることは多いものです。
例えば、就労移行支援事業所なら「就職するためには○○を身につけたほうがいい」「今の状態だと企業に受け入れてもらえないんじゃないか」などなど、できるorできないというよりは「できないことに着目しがち」なことは多く、企業の立場に立って考えているように思えることでも、結局は支援者の価値観で発言していることは結構多いものです。

2006年、国連において障害の「社会モデル」が示された障害者権利条約が採択され、日本は2014年に批准。 国内では障害者雇用促進法が改正され、障害者差別解消法などが新たに施行されました。

何が言いたいかというと、「障害は社会モデル」だということです。
周囲の理解、合理的配慮、ナチュラルサポートなどがあれば、「できない→できるに変わることもある」ということです。

それに、ここが最大のポイントですが、できるorできないといった評価基準は企業が考えることです。
採用基準があり、採用して雇用契約を結ぶかどうかは、企業が決めること。
就労支援をする支援者が決める権利はない、ということです。
そう考えると、ビジネスマナーといった就労準備性の訓練は必要な一方で、利用者の方の「今の状態」は企業の中で「働ける状態であるかどうか」は、企業に聞いてみないとわからないってことになります。

これは、就職活動で5社、10社と応募する利用者の方を見ていていつも思いますが、5〜10社受ける際に利用者の方は急成長されることはそんな多くないはずです。
履歴書やプロフィール表などがブラッシュアップされることはありますが、利用者の方の状態像が急変化することは考えにくく、1〜4社目までは採用基準に満たなくても5社目で採用基準とマッチングすることもある。
利用者の方の「今の様子」を、不採用とする企業もあれば採用と考える企業もあるわけです。

繰り返しになりますが、障害は社会モデルです。
社会というか、職場が障害をどう捉え、どう理解し、どう戦力化するかは企業によってそれぞれです。
「できるorできない」を支援者同士で議論する時間があるのなら、「理解ある職場を探すこと」に時間を使ったほうが有効かと思います。

「できるorできない」を支援者が勝手に決めないよう、支援者として常に意識することが大切ですね。


3、ケースマネジメントとチームワーク

最後は、ケースマネジメントとチームワークです。
簡単に言うと、ケースマネジメントを上手く進めるためにはチームワークが大切という意味です。

マネジメントとは、「経営」「管理」などをイメージされる人は多いかと思います。
ケースマネジメントですから、利用者の方(ケース)を支援者の管理下におく(マネジメントする)、なんて感じでイメージする人もおられるでしょうか?

ケースマネジメントは、介護や社会福祉の用語でよく使われている言葉です。
ケースを個別的に捉え、課題解決のために支援方針や内容を決め、地域の社会資源もフル活用しながら、利用者の方のQOLを最大化するために全体の調整役を担うこと。
ざっくり書くと、こんな感じが役割期待だと思います。

就労支援の現場においても、利用者の方の作業スキル以外に生活や余暇のこと、将来設計など、利用者の方の人生をトータルでマネジメントすることは大切な視点です。

また、「調整役」という意味では、利用者の方を取り巻く方々と話し合うことも多く、家族、医療、福祉、学校、地域、企業など、さまざまな立場の人と協働することも必要になってきます。

その際、難しさや悩ましさを感じたり、進み具合をペースダウンさせることもあり、その原因のひとつに「多様な価値観」があると思います。
これは、外部との連携に限らず、利用者の方のことを家族と話し合う際に意見が食い違うこともあるでしょうし、所内のスタッフ間においても同じようなことはよく起こるものです。

マネジメントを進める中で、「多様な価値観」に触れる機会は必ず増えます。
ですし、それを排除の理論で押し通すことは、障害福祉の仕事に携わるものとして望ましいことではありません。
むしろ、多様な価値観は、「対話を続けること」が大切なんだと思います。

障害のある人は、周囲からの無理解が障害の程度を大きくさせることで生きづらさを感じておられることは多いように思います。
世の中には色んな立場の人がいますし、周囲の無理解や価値観のズレはある意味仕方ないことなのかもしれません。
ただ、プロとして、そのような状況を諦めることも適切ではありません。

ケースマネジメントをする中で、利用者の方を取り巻く人たちと対話を続け、それぞれが役割分担の中でQOLの向上をチームワークで目指していく。
多様性のあるチームであればあるほど、チームマネジメントはより大きな力を発揮するように思います。

 

今回の話は以上となります。

担当する利用者の方を支援する際、悩むことはたくさんあると思います。
自分一人のチカラで進められないこともたくさんあるでしょうし、答えがなかなか見つからず、苦労することもあるかと思います。

でも、上記の3つを意識することはとても大切。僕なりの経験ではそう思います。
ですし、僕もこうやってnoteに書くことで自分の考えを整理できますし、忘れないよう意識することの大切さをあらためて感じることができました。

また、どこかで、続きを書きたいと思います。

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