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就労アセスメントをニーズや目的別で整理して、就労選択支援事業に備えていく

就労選択支援の基本報酬も公開され、いよいよカウントダウンといったところでしょうか。

うちの事業所として、就労選択支援事業をどれくらいやれるかはまだよく分からないものの、「所内アセスメントを見直す」にはちょうど良いタイミングであることは間違いなさそうです。

スタート時期となる来年10月も見据えて就労アセスメントに関することを情報整理したく、一旦は思うままに書いておきます。

たくさんのアセスメントツール

ひと口にアセスメントと言っても、支援現場では様々なツールでアセスメントを実施している現状があります。
(以下は、僕らの事業所で活用しているアセスメントです。)

・知能検査や心理検査の結果
・職業評価の結果
・インテークや個別面談でのアセスメント
・就労移行支援の暫定支給に関するアセスメントツール(所内ではアセスメントパックと呼んでいます)
・練習用軽作業(ワークサンプル)でのアセスメント
・企業実習(インターンシップ)後の評価表
・TTAP (TEACCH Transition Assessment Profile)
・BWAP2 (Becker Work Adjustment Profile 2)
・WAVES
・就労支援のためのアセスメントシート(JEED)

ツールというか、アセスメントの「場面」も含んでしまいましたが、就労支援においてのアセスメントツールは、様々にあるように思います。

これらをニーズごとや目的ごとに整理することで、アセスメントツールは現場でも活用しやすくなりそうです。

本人ニーズに対するアセスメント

次は、利用者の方のニーズをもとに整理してみたいと思います。
まずは、よくお聞きするご本人ニーズです。

・自分の得意苦手を知りたい
・障がい特性や配慮事項を知りたい
・自分に適する仕事や職場環境を知りたい
・早く働きたい

これらの本人ニーズに対するアセスメントツールは、以下で整理してみました。
ざっくりした整理ですがいかがでしょうか。

▼自分の得意苦手を知りたい
→PCスキルチェックやワークサンプルでアセスメント

▼障がい特性や配慮事項を知りたい
→知能検査や心理検査、TTAPやBWAP2などでアセスメント
→就労支援のためのアセスメントシート

▼自分に適する仕事や職場環境を知りたい
→職業評価や企業実習後の評価表

▼早く働きたい
→アセスメントパックや職業評価で短期アセスメント

アセスメントは、本人ニーズが満たされるためのものでもあり、ニーズをもとにツールを選定することも求められそうです。

家族や先生等の周囲ニーズに対するアセスメント

また、今度は本人ニーズとは違う視点で考えてみます。
例えば、ご本人の周りにいる家族や学校の先生、医療機関などは、上記の本人ニーズとは違った視点でアセスメントの結果を望んでいる場合があるかと思います。

・本人が自身の障がい特性や職業的な課題に気づくきっかけにしたい
・自信が持てていないため、自己肯定感を高めることにつなげたい
・本人が納得できるようなレポートで分かりやすくフィードバックをしてほしい

などなど、就労を目指して進んでいく際に、理想と現実のズレを修正していく必要があり、そのためのアセスメントとフィードバックは周囲にとって重要であったりします。

こういった場合は、以下のツールが活用できそうに思います。

・TTAP
・BWAP2
・職業評価
・就労支援のためのアセスメントシート
・企業実習後の評価表

ここでのポイントは、アセスメントの結果がきちんとレポートできるツールであることでしょうか。
TTAPやBWAP2、職業評価などは、アセスメントの内容をもとに支援者がレポート作成を行い、それを本人や家族などにフィードバックすることができます。

また、就労支援のためのアセスメントシートは、本人と支援者が面談や作業場面をもとに一緒にアセスメント項目に取り組んでいくため、アセスメントに取り組む過程で本人自身が振り返るきっかけに繋がることも期待できます。

それに、企業実習後の評価表では、企業からのフィードバックが本人にとっての納得感に繋がることも期待できるため、インターンによる実体験がアセスメント結果をわかりやすく理解できることもあるかと思います。

就労支援プロセスで整理するアセスメント

さて次は、就労支援のプロセスでアセスメントツールを整理してみたいと思います。
まずは、就労支援プロセスについてです。

①インテーク面談
②本人アセスメント
③職場アセスメント
④ジョブマッチング
⑤集中支援、移行支援、定着支援

上記のプロセスに対して、アセスメントツールを照らし合わせてみたいと思います。
こちらもざっくりですが、以下で情報整理をしてみました。

①インテーク面談
→アンケート等の基礎情報シートや面談でのヒアリング
→知能検査や心理検査の結果

②本人アセスメント
→PCスキルチェックやワークサンプルなどでアセスメント
→TTAP、BWAP2、WAVES
→就労支援のためのアセスメントシート
→職業評価の結果

③職場アセスメント
→企業開拓後の企業情報シート
→企業実習後の評価表
→ハローワーク等の求人票

④ジョブマッチング
→ジョブマッチングシート
→プロフィール表

⑤集中支援、移行支援、定着支援
→日報や定着支援面談でのヒアリング

企業情報シートやジョブマッチングシート、プロフィール表など、所内で使用する独自ツールも加えてみましたが、就労支援プロセスで整理することでツールが使いやすくなる面もありそうです。

アセスメントの標準化と人材育成

最後は、「標準化」と「人材育成」をテーマにして、アセスメントの実施者(就労支援者)について考えておこうと思います。

アセスメントは、知能検査や心理検査、TTAPやBWAP2などのいわゆるフォーマル検査ではなく、「インフォーマルな検査」がアセスメントツールとしては多くを占めるように思います。所内での作業場面、フリータイムや休憩中の過ごし方、企業実習の様子など、状況によってアセスメントの内容に違いが出ることは就労支援の日常でもあります。

特に、就労を目指すためにアセスメントを実施するとなると、「職場環境との相互作用」が重要なアセスメント情報にもなります。企業ごと、職場ごとでアセスメントを行う必要性は出てくるように思います。

そう考えると、就労支援者は障がい特性を正しく理解した上で、環境との相互作用も含めた行動観察からアセスメント情報を収集する必要があります。
もちろん、そこには支援者の力量が問われることにもなりそうで、ある程度の知識と経験を有している支援者であれば、標準的なアセスメントが整っていることで実施しやくなるように思い、アセスメント情報の中身にバラツキも少なくなれば、支援の質も保たれるように思います。

アセスメントを有益な情報としてチーム内に共有し、就労支援や個別支援計画をスムーズに進めるには、アセスメント項目や評価の視点をある程度標準化する必要性がありそうで、この辺りが就労選択支援の実施に向けた準備としての重要なタスクとなりそうと思っています。

まとめ

話が長くなりすぎてしまいました。
最後にまとめをして、このnoteは終わりとしたいと思います。

・アセスメントツールは様々に存在する
・ツールは、ニーズごと、支援プロセスごとで使い分ける
・アセスメント実施の課題は、標準化と人材育成である

また、以下はアセスメントをテーマにした過去のnote。
こうやって考えながら自分のためにアウトプットしておくことはこれからも必要そうです。

引き続き、書きながら考えていこうと思います。

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