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間取りの考え方~間口の狭い3階建て

アラフォー女性建築士の『さわ』です。
主に関西で住宅を設計しています。

今日は土曜日恒例『間取りの考え方』を書いていきます。

最近は忙しくしていてネタになりそうな間取りを書けていないので過去に書いた間取りからちょっと建築士っぽい話(一応建築士)のネタに間取りを紹介しようと思います。

間取り図

この間取りはこんな敷地に家を建てれるの?という依頼から書いた間取り図です。
理由は『THE ウナギの寝床』な間口が狭くて細長い敷地だからです。
ではまずは私が書いた間取りを見てください。

鉄骨3階建て 狭小住宅

一応間取りになったのか?という間取りです。
間口いっぱいで2450しか取れないので3階から考えると前後に1部屋ずづしかとれないので階段は建物の中心に配置することになります。

間口の狭い間取りのとセオリーとして極力廊下はとらない。取れない??
ところが階段も縦長にしか配置できない寸法だったのでちょっと無駄な廊下の空間が多くなってしまった間取りです。
(特に1階が)

2階は2~3階の階段をスケルトン階段にすることでフロアー全て見通せて少しでも広くは見えるかなと思います。

ダイニング側から見るLDK

狭小住宅ほど造り付けがおススメ

狭小住宅の場合造り付けの家具や収納をおススメしています。
理由は狭すぎて家具の寸法など限られる為です。
あとは狭小住宅の場合空間の使い方が限られてくるので建築時に造ってしまう方がコンパクトに納める事ができ使い勝手がよくなるからというのもあります。

ダイニングベンチと一体の収納棚

鉄骨柱の奥行きに合わせて収納棚と下部はダイニングのベンチにしました。
ベンチの中も収納できるようにすれば収納スペースの無いLDKにしっかり収納を作る事ができます。

構造の話

私は構造専門の建築士ではありませんが、少し木造の構造計算も勉強していたり取引のある構造設計事務所との打合せで学ぶ事があります。

今回この間取りに関して書きたかった事は間口が極端に狭い建物に関する構造の負担です。

鉄骨造にした理由

まずは間口が狭すぎて木造在来工法では建てられません。
基本の木造在来工法は壁で耐力をバランスよくとる為、最低でも600×2枚の壁が正面と背面に必要です。
この建物は1200も壁を取ったら駐車場が取れなくなるのでそれは難しいです。
また門型フレームなど木造でも正面に開口をあける方法もあるのですが、それでもこの建物は間口が狭すぎるという事で鉄骨造で検討することになりました。

鉄骨造にするメリット・デメリット

まずメリットは木造で建てれない建物でも建てれる事。
鉄骨造は壁ではなく柱と梁だけで支える構造なので、建物内部にも余計な壁をとらなくて済みます。
だからワンフロアーで見通しのいいLDKの間取りを計画する事ができました。

デメリットの一番は木造に比べて建築費が上がる。
材料の問題もですが、鉄骨造にすることで地盤の補強が木造より必要になる場合が多いので見えない部分でも費用が嵩んできます。

また鉄骨の柱は木造より大きくなるので部屋内に突出してきます。
梁も大きい場合部屋内に下がってくる場合があります。

間口の狭い建物は構造の負担が大きい

今回この間取りで一番伝えたかった事はこれです。
「アスペクト比」
と聞くと一般的に思い浮かべるのは画面のサイズ。
縦と横の比率の事です。

建物の構造計算でもこの比率を使います。
理由は『アスペクト比が4以上の場合に転倒の検討が必要』という建築基準法があるからです。
逆をいうと住宅の建物ぐらいではそうそう超えないから転倒の恐れがないとみなされています。

ところがこの建物でアスペクト比をざっくり検証してみましょう。

まず建築のアスペクト比は建物高さ÷建物間口(狭い方)です。

大体の住宅3階建ては軒高9m以下に抑える為、この間取りの建物高さは大体10m前後。
今回は10mとして検討します。

アスペクト比=10m/2.45m=4.0816.…

と言う事で4以上になります。
4を超えたから建物として建てれないかと言われるそういうわけではありません。
先に述べたように転倒の検討を行いそれに対応した構造にすると建てれるのですが住宅の構造ではそこまですると構造の負担が大きいと考えて諦めています。

理由:建物の規模に対して構造の費用ばかり嵩んで坪単価が上がる為

早々4以上になる事はないのですが、極端に間口が狭い場合の3階建てに関しては間取りを書く際に注意が必要です。

さいごに

今回は珍しく間取りの考え方でもちょっと難しい内容になったかなと思います。
読みにくかったですか?
まぁシンプルにこの記事を説明すると、積み木で真四角の積み木は横から押してもこけないけど細長い積み木は横から押すとこけるよねって話です。
(2000文字も書いた記事を自分で2行で説明する私)

あと意匠設計を専門とする建築士も一応わずかな知識ですが構造も考えながら間取り図考えているんですよって話です。
全く考えないとあとで費用ばかり嵩みますし・・・とはいえ考えすぎても固定概念から抜け出せない間取りを書きがち。
このバランスが常々難しいと考えながら間取りを書いています。

こんなまだまだ勉強と経験中のアラフォー女性建築士です。
また土曜には『間取りの考え方』を普段は色々モヤモヤも書きますが応援してみようかなと思ってもらえたらフォローとスキをよろしくお願いいたします。

左巴建築設計事務所 さわ。

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