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もうすぐ さよなら  ホンダウェルカムプラザ青山【ファクトリーマシンのトビラ】

ミュージアムといえば、博物館や美術館を思い浮かべます。
そして企業ミュージアムとなると、企業の歴史や現在展開している製品群がズラリと並び、いわゆるショールームを兼ねるケースも。
青山一丁目の交差点の角に建つホンダの本社は、ホンダファンにとっては聖地のような場所といえます。斜向かいには赤坂御所、近隣にはハイエンドな高級車ディーラーがあり、走っている車を眺めていればそうそうお目に掛かれない車にも出会えます。
ただココでは、超一流の工芸品と同じようなワンオフの工業製品に出会えます。




本田技研工業株式会社 本社

本田技研工業(以下ホンダ)は本田宗一郎ほんだ そういちろう(1906-1991)が静岡県浜松市に設立した本田技術研究所から始まります。多くのエピソードや名言を残されていて、従業員から「オヤジさん」と呼ばれた人。イタリアのエンツォ・フェラーリ(1898-1988)と双璧。またホンダは2輪と4輪両方を事業展開する世界でも数少ない会社です。そしていまや地上だけでなく小型ジェット機で空まで進出しています。

令和の上場企業にはコンプライアンスとか株主利益とかややこしい要素があるようです。宗一郎さんもみんなのためになる製品を世に出すという事も言われていましたが、こんな言葉も

いいパンフです ある意味オヤジのワガママ

リーダーの情熱って大事です。

そんなホンダ本社の1階にウェルカムプラザ青山はあります。
 

東京都港区南青山2-1-1


ウェルカムプラザは通常、2輪と4輪の市販車を展示していて(特別なモデルを除き、車内に乗り込める)大人から子供まで楽しめる所です。カタログもいただけてありがたいです。以前はロボット・アシモのデモンストレーションが定番で、チビッ子やインバウンドの方々はクギ付けになっていました。ちょっとしたカフェスペースも併設されています。ここに足を運ぶのは、不定期で古いモノから新しいモノまでホンダ所蔵の珠玉のレーシングマシンの展示が目当てです。

今や隠居の身 アシモ
 
ホンダの源流 スーパーカブ(1959)
 

トーハクの150年後の国宝展でも展示されていたスーパーカブ。


レーシングマシン4輪編 レッドブルRB19ショーカー(2023)


RB19 翼を授ける~~

レッドブルRB19は2023年のF1選手権でドライバー部門とコンストラクター部門の両タイトルを獲得した車です。ドライバーはマックス・フェルスタッペン(1997- )、オランダ(ベルギーと二重国籍)の人で2021年から3年連続のチャンピオン。父のヨス(1972- )もF1パイロットだった人で、ホンダのF1テストカーをドライブしています。
ショーカーは実際にレースを走った車ではなく展示用の車です。F1は空力テクノロジーの頂点にあって、ライバルやメディアはその秘密をパクろう、知ろうとします。それで大事な部分は実車と異なります(あくまでイメージです的な)。またシーズン中も進化するので変わっていきます。

  

デザイナーは空力の鬼才とか魔術師と呼ばれるエイドリアン・ニューウェイ(1958- )。ウィリアムズ、マクラーレン、レッドブルでデザインした車がチャンピオンマシンになっています。空気の流れが見えてる人。

  
  
サイドポッドは絞り込まれて持ち上げられています
 
あなたの目には空気の流れがどう見える?

空力の処理が複雑で素人には何がなんだか分かりません。車体の前端から後端まで、空気の流れは複雑に絡み合っています(分かった風)。


車体にはホンダのロゴはなく、ノーズにはHRC(ホンダ・レーシング・コーポレーション)のロゴが。

A・ニューウェイをもっと掘り起こしたい方にはコチラ


ウェルカムプラザに行くと、時々ホンダを退職(定年? 花束を抱えている)と思しき方を見かけます。F1が展示されているとほぼ間違いなく、車の前に整列して記念写真をパチリ。どうせならF1に乗り込めばと思いますが、見るカンジ彼らの体形ではコクピットに収まらない。(笑)
ごく稀にF1に座れる機会があるのですが、だいたい小学生までの制限がかかっています。身長・体重制限で、痩せてる人なら乗せてほしい。マジで!
また小さすぎる子供は、座ってもキッチリ顔が出なくてかくれんぼ状態になり、見ていて笑えます(親は写真に収めたくて奮闘)。


レーシングマシン2輪編 RC211V(2002)


ヴァレンティーノ・ロッシの愛機

2輪レースの最高峰は、2001年までは排気量500ccが上限でした。2002年からのレギュレーションでは4ストローク(4st)エンジンは990cc、2ストローク(2st)は500ccまでと変更されました。エンジンが違う2st と4st 混走のシーズンが始まると4st がブッチギリの早さで、2st はおろか他社メーカーをも完全に凌駕したRC211Vは、全16戦中15勝して世界チャンピオン(ライダー、メーカー共に)になります。ライダーはV・ロッシ(1979- )と宇川徹うかわ とおる(1973- )。

目の前にするとほぼ1,000ccのバイクなのにコンパクト
 

もてぎのコレクションホールの写真で補完。

ホンダコレクションホール(栃木県芳賀郡茂木町)

ステアリングバーの垂れ角がスゴイ。最近のバーは車体を押さえつけやすいようにかなり一文字。

ホンダコレクションホール(栃木県芳賀郡茂木町)

アナログのタコメーターとバーの絞り具合に時代を感じます。個人的にはアナログメーターが好み。

ホンダコレクションホール(栃木県芳賀郡茂木町)

ライバル達に見せつけた後ろ姿。ウェルカムプラザの個体とはサイレンサーの素材が違います。

RC211Vのエンジンは、ホンダらしく過去に前例のないV型5気筒でバンク角は75.5度。V4エンジンにバランサー代わりの1気筒を追加する発想らしい。興味のない人には全く意味不明な説明かもしれませんが、振動が少なくバランスが良いうえに馬力が出るという良い事ずくめのエンジンなんです。結果シーズンを圧勝で席巻します。バイクは車と違ってエンジンの形式によってキャラクターが変わるトコロが面白い。工芸品と同じく味わいです。

RC211V ’02をもっと掘り起こしたい方にはコチラ


ウェルカムプラザは入り口に過ぎません。ホンダのアーカイブはもてぎのコレクションホールで所蔵、整備されていて、時々青山に顔を出しに来るのです。トビラを開けてみましょう。


ホンダ本社(ウェルカムプラザも)は、2025年の春から建て替え工事に入り、2030年の完成を目指すと発表されました。詳しい事やウェルカムプラザの今後ははまだ未定だそうです。代替施設が都内に設定されると良いのですが。
トーハクの次ぐらいにお世話になっているトコロなので、これからも展示の記録を重ねるつもり。


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