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週末読書メモ91. 『反脆弱性 不確実な世界を生き延びる唯一の考え方』

(北海道十勝の農家6代目による週次の読書メモ)

弁証法で導く、不確実性溢れる現代での生き残る方法とは。


「反脆弱性」。タイトルのこの言葉が、本書最大のキーワードです。

本書は『ブラック・スワン』の著者ナシーム・ニコラス・タレブさんによる続編。

ブラック・スワンという「絶対ないは、絶対ない(ありえないなんて、ありえない)」という現実を直視した上で、この不確実性溢れる世界での向き合い方が書かれています。


筆者は言います、世の中には「脆弱」なものと「頑強」なものがあると。

そして、人々は「脆弱性」を避けるために、「頑強性」を高めるいきます。

しかし、皮肉にも、頑強な存在はブラック・スワンをはじめとする予期せぬ変化へ対応できず、翻弄・崩壊することになると。

その現実を踏まえて、「脆弱性」と「頑強性」という相反する事象から、弁証法で導き出された解が「反脆弱性」という考え方になります。


風はろうそくの火を消すが、炎を燃え上がらせる。
それは、ランダム性、不確実性、無秩序も同じだ。それらから隠れるのではなくて、利用しなければいけない。
(中略)不確実性を生き抜くだけじゃいけない。乗り切るだけでもいけない。不確実性を生き抜き、ローマ時代のストア哲学者たちのように、不確実性を自分のものにするべきなのだ。その目的は、見えないもの、不透明なもの、説明不能なものを手なずけ、支配し、さらには征服することだ。

衝撃を利益に変えるものがある。そういうものは、変動性、ランダム性、無秩序、ストレスにさらされると成長・繁栄する。
(中略)反脆いものはランダム性や不確実性を好む。つまり、この点が重要なのだが、反脆いものはある種の間違いさえも歓迎するのだ。

脆さを手なずけ、不確実性を自分のものにせよ。

筆者は、「イノベーションを起こすには?まず、自分からトラブルに足を突っ込むことだ」と述べます。何かを変えていく、何かが変わっていくというのは、引かれたレールの中で行なっていくことではなく、不確実性すら呑み込みながら前進していくと。


脆さを手なずけるポイントは、以下のように筆者は述べます。

脆さをコントロールするのは、あなたが思っているよりもずっと簡単だ。ポイントをまとめると次の3点となる。
①脆さや反脆さを見極めるのは、事象の構造を予測したり理解したりするよりもずっと簡単だ。したがって、私たちがしなければならないのは、予測ミスによる損失を最小化する方法を考えることだけだ。つまり、私たちが間違いを犯しても崩壊しないシステムを築くことだ。
②差し当たっては世界を変えようと思っていけない。私たちがすべきなのは、問題や予測ミスに対して頑健なシステムを作り、レモンでレモネードを作ることだ。
③レモネードといえば、レモンからレモネードを作るのが歴史の役目のようだ。反脆さとは、あらゆるストレスの生みの親である時の流れのもとで、物事が前進していく仕組みなのである。

目から鱗が…!

筆者の軌跡を見ても、このポイントに辿り着くには、膨大な学習と実践の先に、メタ的に世界と自分を捉えていく必要性を感じます。


繰り返しになりますが、「脆弱性」が、「頑強性」(否定)を通じて、新たな・より高次な概念「反脆弱性」へと再生成いたるのは、まさに弁証法的な思考プロセスを経ているように思えます。

これは、『自由の命運』で述べられていた思考プロセスとも、かなり近しいものです。

繁栄の前提条件となる個人の自由と安全は、強力な国家=「リヴァイアサン」なしにはあり得ない。
しかし国家が強すぎれば「専横のリヴァイアサン」(独裁国家)が生まれ、逆に弱すぎれば「不在のリヴァイアサン」(無政府状態)に堕ちてしまう。
専横と不在のふたつのリヴァイアサンに挟められた「狭い回廊」に入り、国家と社会のせめぎ合いをへて「足枷のリヴァイアサン」を生み出した国家だけが、自由と繁栄を維持できるのだ。

『自由の命運』

『自由の命運』では、「専横のリヴァイアサン」と「不在のリヴァイアサン」というテーゼとアンチテーゼから導かれた「足枷のリヴァイアサン」というジンテーゼこそ、国家・組織が持続的に成長し続ける道だとありました。

本書しかり、『自由の命運』しかり、共通しているのは、時代は、世界は必ず変化するという普遍の真理(大前提)。その世界で人工物が生き残るということがそもそも難しいからこそ、(自然界の生物が行なっているように)不確実性やストレスすら活かすことが、生き残る道になると。


『ブラック・スワン』・『反脆弱性』ともに、メルカリ創業者であり、経営界屈指の読書家である山田進太郎がオススメされていたことから手に取った本でした。

山田進太朗さんと言えば、「行動デザイン」という特殊能力を持たれていると紹介されていた記事が印象深く、ずっと頭の中にありました(このブログを初めて目にした時、どうしたらそんな能力を得られるのだろうかと…)。

しかし、山田進太朗さんの何冊か推薦図書を読む中で、(膨大な読書経験をから得られた)歴史や世界の全体観や法則に対して、実体験を照らし合わせながら、システムと人間行動の間にある因果関係をご自身の中で磨き上げているのだろうなあ、と感じます。

「反脆弱性」という概念しかり、弁証法的な思考プロセスしかり、このVUCA時代に生き残るヒントに溢れる一冊でした。


【本の抜粋】
風はろうそくの火を消すが、炎を燃え上がらせる。
それは、ランダム性、不確実性、無秩序も同じだ。それらから隠れるのではなくて、利用しなければいけない。
(中略)不確実性を生き抜くだけじゃいけない。乗り切るだけでもいけない。不確実性を生き抜き、ローマ時代のストア哲学者たちのように、不確実性を自分のものにするべきなのだ。その目的は、見えないもの、不透明なもの、説明不能なものを手なずけ、支配し、さらには征服することだ。

衝撃を利益に変えるものがある。そういうものは、変動性、ランダム性、無秩序、ストレスにさらされると成長・繁栄する。
(中略)反脆いものはランダム性や不確実性を好む。つまり、この点が重要なのだが、反脆いものはある種の間違いさえも歓迎するのだ。

イノベーションを起こすには?まず、自分からトラブルに足を突っ込むことだ。といっても、致命的ではない程度の深刻なトラブルに。私は、イノベーションや洗練というものは、最初は必要に迫られて生まれると思っている。いや、そう確信している。最初の発明や何かを作ろうという努力が思ってもみない副作用をもたらし、必要を満たす以上の大きなイノベーションをや洗練につながっていく。

脆さをコントロールするのは、あなたが思っているよりもずっと簡単だ。ポイントをまとめると次の3点となる。
①脆さや反脆さを見極めるのは、事象の構造を予測したり理解したりするよりもずっと簡単だ。したがって、私たちがしなければならないのは、予測ミスによる損失を最小化する方法を考えることだけだ。つまり、私たちが間違いを犯しても崩壊しないシステムを築くことだ。
②差し当たっては世界を変えようと思っていけない。私たちがすべきなのは、問題や予測ミスに対して頑健なシステムを作り、レモンでレモネードを作ることだ。
③レモネードといえば、レモンからレモネードを作るのが歴史の役目のようだ。反脆さとは、あらゆるストレスの生みの親である時の流れのもとで、物事が前進していく仕組みなのである。

教科書の”知識”には、ある次元が抜けている。平均の概念と同じで、利得の隠れた非対称性が見落とされているのだ。世界の構造を研究したり、「正しい」か「正しくない」かを理解するのではなく、自分の行動のペイオフ(対価)に着目する発想が、文化史の中からすっぽりと抜け落ちてしまっている。恐ろしいくらいに。いちばん大事なのは、ペイオフ(事象によって生じる利得や損失)であって、事象そのものではない。

私たちはランダム性にだまされる。高いランダム性が潜んでいる状況では、成功する人に実力があるのか、実力のある人が成功するのか、はっきりとはわからない。しかし、その否定ならかなりの精度で予言できる。つまり、まったく実力のない人はいずれ失敗するということだ。

まっとうな予言とは引き算であり、脆さを見極めることだと話した。だが、身銭を切る(ダウンサイドを受け入れる)ことが、正真正銘の思想家と後付けの”くっちゃべり”と違いを生むのだとすれば、預言者の地位に到達するにはもう一歩が必要だ。それはコミットメント(誓い)である。

P.S.
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