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週末読書メモ22. 『フェルマーの最終定理』

(北海道十勝の農家6代目による週次の読書メモ)

正しいと信じているもの。それを証明していくとは如何なることか。

噂に違わず、素晴らしい一冊でした。


本書には、数学界最大の難問を巡って、3世紀に渡り、天才数学者達が苦闘した軌跡が描かれています。

17世紀、1人の天才数学者が残した超難問「フェルマーの最終定理」。

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数学者で無くても、内容が理解できてしまうほどシンプルな定理。

しかし、その証明は困難極まりないものであり、数多くの天才達が挑み、そして、敗れてきました。

そんな中、本書の主人公アンドリュー・ワイルズは、10歳の時にこの定理を知り、惚れ、これを解くという夢を抱きました。そして、そんな夢はいつしか強い信念へと成長し、人生を投じた戦いを行うことになります。


本書では、フェルマーの最終定理を巡り、古代のピタゴラスから始まり、様々な天才数学者達の軌跡が描かれ、壮大なドキュメンタリーを見たような読後感があります。

その上で、最も印象深かったのは、信念の実現に立ち向かうあたり、難問に対する主人公の向き合い方でした。

ワイルズはまず、最新の数学雑誌にかたっぱしから目を通し、新しいテクニックをいじりまわして徹底的に身につけた。目前に迫った戦いにそなえて武器を集めるというこの作業は、それから一年半続くことになる

大事なのは、どれだけ考え抜けるかです
(中略)とくに、袋小路に入り込んでしまったり、未解決の問題にぶつかったりしたときには、定石になったような考え方は何の役にも立たないのです。新しいアイディアにたどりつくためには、長時間とてつもない集中力で問題に向かわなければならない。その問題以外のことを考えてはいけない。ただそれだけを考えるのです。それから集中を解く。すると、ふっとリラックスした瞬間が訪れます。そのとき潜在意識が働いて、新しい洞察が得られるのです

フェルマーの最終定理との闘いでワイルズが武器としたのは、紙と鉛筆、そして純然たる論理だけだった。数論の最新テクニックを取り入れはいたものの、ワイルズの照明は、ピュタゴラスやエウクレイデス以来の伝統に則った正統的なものなのだ

王道。凄く良い。

難問と向き合うにあたり、小手先の楽な方法などでは解決出来ないことを、まざまざと見せつけられます。

「巨人の肩の上に立つ」ことの大切さ。先人の積み重ねた原理原則の上に立ち、そこで最大限の力で向き合うことによって、新たな道が開けると。

しいて言うと、インプットやひらめきを、解決プロセスの中に取り入れていることが示唆に富みます。当然のように、難問を解くには時間がかかることを認識し、回り道や待ち時間すらも必要なものとしています。


主人公ワイルズが、フェルマーの最終定理を解こうとした時代、300年以上に渡る天才達の敗北から、解決は不可能とまで言われていたそうです。

しかし、ワイルズは、決して自らの信念を捨てませんでした。

定理が正しいという信念、そして、自らが証明するという信念。

きっと、少なくない苦悩があったはず。しかし、その解決までの過程において、自らを信じ続けた生き様が見て取れます。強い方だ。


ピーター・ティールさんが言った有名な言葉、「賛成する人がほとんどいない、大切な真実とはなんだろう?」。

賛成する人がほとんどいない真実にこそ活路があること、そして、その活路を開くとは如何なることかを、本書からも感じることができます。

きっと、農業界にもそんな真実は沢山ある。


【本の抜粋】
この二千五百年のあいだ数学者たちを突き動かしていたのは、証明という方法によって究極の真理をつかみたいという強い願望だったのである。
フェルマーの最終定理も、必要なテクニックはすべて手の届くところにそろっているのかもしれない。欠けているのは、”工夫”だけなのかも…。ワイルズは降参する気など毛頭なかった。フェルマーの最終定理を証明することは、少年の憧れから大人の信念へと成長していた。

一見すると関係なさそうなテーマ同士が結びつくことは、どんな学問分野においてもそうであるように、数学においても建設的な意義を持っている。というのも、そんな結びつきが存在することは、両方のテーマをいっそう豊かにする基本的に真理の存在をほのめかすからである。

ワイルズはまず、最新の数学雑誌にかたっぱしから目を通し、新しいテクニックをいじりまわして徹底的に身につけた。目前に迫った戦いにそなえて武器を集めるというこの作業は、それから一年半続くことになる。

大事なのは、どれだけ考え抜けるかです。
(中略)とくに、袋小路に入り込んでしまったり、未解決の問題にぶつかったりしたときには、定石になったような考え方は何の役にも立たないのです。新しいアイディアにたどりつくためには、長時間とてつもない集中力で問題に向かわなければならない。その問題以外のことを考えてはいけない。ただそれだけを考えるのです。それから集中を解く。すると、ふっとリラックスした瞬間が訪れます。そのとき潜在意識が働いて、新しい洞察が得られるのです。

フェルマーの最終定理との闘いでワイルズが武器としたのは、紙と鉛筆、そして純然たる論理だけだった。数論の最新テクニックを取り入れはいたものの、ワイルズの照明は、ピュタゴラスやエウクレイデス以来の伝統に則った正統的なものなのだ。

大人になってからも子供のときからの夢を追い続けることができたのは、非常に恵まれていたと思います。これがめったにない幸運だということはわかっています。しかし人は誰しも、自分にとって大きな何かに本気で取り組むことができれば、想像を絶する収穫を得ることができるのではないでしょうか。この問題を解いてしまったことで喪失感はありますが、それと同時に解放感を味わってもいるのです。
(中略)長きにわたった波乱の旅もこれで終わりました。いまは穏やかな気持ちです。

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