日記殴り 2024/4/10~4/16 (4042字)

4/10
俺ってさあ、俺ってさあ、惨めじゃない? と黒猫が言う。全然そんなことないと思う。それ誰に言われたの? 君のこと知りもしないどっかの誰かが言ってる適当な話なんか真に受けんなよ。俺は心の中で幸せが溢れ出すあの感覚をまだ鮮明に憶えてるから、全然それでずっと笑える。
なすに勧められたモーニングノートを早速始めた。やっぱり誰にも見られない方が素直に書ける。
俺はお母さんに真っ直ぐ立っていてほしかった。母自身が母を愛してほしかった。
算数だった。坊主頭について一切言及してこなくてやっぱこの人最高〜と思った。

4/11
…。

4/12
そんなに一生懸命何かをやる必要ってあるんですか? と思った。文字が身体の中に入っていくのを、ただ見ていればいい。

4/13
母も父も超キモい人間だった。尊敬できるところが一個もなかった。でもそんな自分の感覚は間違っているんじゃないか、俺は何か誤解してるんじゃないかと、心のどこかでまだ思っている。それが苦しい。もしそれが正しいんだとすると、俺の存在自体が全て間違っているということになる、という気がしている。
誰かに必要とされたい。人の役に立つことでしか満たされない渇きがある。でもそんな気持ちは何の役にも立たない。必死になってはいけない。人の役に立ちたいなら、もっとちゃんと考えてやらないと。俺は結局自分のことしか考えてないので、上手くできない。傲慢で醜い。誠実じゃない。溺れかけて遠巻きに心配されるのが関の山だ。
ユリさんが俺を勝手に占って塔のカードしか出ないらしい。悔しくて、うるせえてめえーと思った。塔、というのはこの身体のことだろう。俺はずっと自分の肉体を塔のように感じてきた。この身体から魂を出すことしか、真の救いはない。救いなんていらない。
自分という人間にほとほと嫌気が差して、人と深く関わる気を失くした。人に期待しすぎるから人間不信になる。水の中で暮らしたい。うるさいのはもう嫌だ。
お願い誰か助けて、どうして助けてくれないの、と言っている。俺は死んだら悪霊になるのか。

4/14
自分が入力した内容からは、想定外の結果が帰ってくる、そういうものが見たい。想定外だけれど、自分が働きかけなければ決してあり得なかった、そういうものが見たい。
持てるエネルギーを全て使い果たせるようになること、目の前の対象に全力を注ぐこと、そのための練習だ。何故そうするのか。命の可能性というものに興味があるのだ。この身体を使ってどこまでやれるか。一生懸命やれば何かしらには手が届く。それは最初に求めたものとは違うかもしれないけど、とにかく何かにはなる。その過程は退屈ではないはずだ。
信じてもらえないかもしれないけど、俺は一人で色々やるのが好き。
今朝モーニングノートを書きながら泣いた。「寂しさ」に関する一つの回答が出た。つまり、俺の内側の一番深いところに煮えたぎるマグマがある。俺はそれに触りたい。そこへ目がけて、息を止めて、深く深く潜水していくことだけが唯一俺がやるべきことで、生まれた意味と言ってもいい。俺は俺の生まれた意味を内包している。それが命だ。でもそれは寂しい旅だ。このマグマは俺しか見えない、触れないものだから、一人で行くしかない。孤独な上に危険も伴うので、つい表層に留まろうとしてしまう。しんどいとか、恥ずかしいとかいうのは、表層を漂う泡だ。そういうものに翻弄されながら、何となく心地が良いのでそこにいる。でもうんざりしている。本質的じゃないことが分かっているから。本質から目を背けていると苦しい。そういう風にできている。表層で出会えた人たちに手渡された勇気と光を握りしめて、結局は息を止めて、一人で潜っていくしかない。それは俺の生活のそばに、誰かがいてもいなくても、同じことだろう。
そういう風に考えた時に、自分が具体的に何をやりたいのかということが、自然と浮かび上がってきた。それは大きく二種類の方向性に大別できる。
①研究
→supercollider、エフェクター制作、数学、語学、プログラミング
調べ尽くしてその成果を残す
②精神世界の探求
→瞑想、読書、執筆、旅行、哲学、対話、トラウマと向き合う、音楽
自分とは何か知る、自分がどのような状態か気づく
外側の探求と内側の探求、という風に言い換えることができるかもしれない。だがこの二つは根っこの部分で繋がっていると思う。近頃の俺は②の場所にいすぎた。それは①に行くためには精神を外向きにするための明確な動機づけを必要とするからだろう。生まれた時から意識が高い人々と違って俺は、②を疎かにして①に行くことに躊躇いがあった。でもどちらもこの命を最大限使っていく行為に変わりはないわけで、それはマグマに手を伸ばすということだ。一生懸命やれればそれでいい。これからは①も②と同じくらい大事にしていきたい。
そういうわけで一日中supercolliderを触っていた。どう考えてもこれは楽しい。DAWのように時間軸に音を配置するのではなく、論理的な集合として音を組み立てていく。組み立てる過程は論理的なのに、出力される音は簡単に論理を飛び越えて、明後日の方向に飛んでいく。自由度が高すぎてどうにでもなる。可能性を感じる。毎日八時間仕事でやっていることとリンクしてくるのも、一石二鳥という感じで嬉しい。練習の成果が活きる。予測のつかない音を創り出すこと、プログラムの品質を高めていくこと、二種類の喜びが一度に味わえる。以前ほうしょうが、テクノロジーや都市に張り巡らされた文明を指して、「蛇」と表現していたことを思い出す。蛇を捕まえたい。幻の巨大な蛇を探しに行きたい。俺はツチノコハンターになった。いつか音響プログラミングで変なソフトシンセ作って生計立てたいなーとか夢想している。
俺は精神が荒んでいなかったら、普通の家に生まれて普通に愛されて育っていたら、大学を出て研究者になりたかった。そんなことを思っていた時もあった。今の仕事は、社会の荒波の中だけど、ほんの少しだけ研究者の生活に近い。プログラムを書きながら、新たな技術を取り入れながら、時々そう感じたりもする。本当は社会と隔絶された静かな部屋で好きなことを研究したいけれど、そうも言っていられない。これも練習だと思って頑張る。とにかく俺には「知りたい」という執念がある。この執念に忠実でいたいと思う。

4/15
夢を見た。ちょっと引くくらいの怪我をしていて、でも別に気にしていなくて、でも周りが気にするから包帯くらい巻こうと思った。「置いていかないで」と傷は開いたままだ。傷は時間が経てば治るものじゃないのか? あれから何年経った? 自然治癒力とは? それとも実は傷はもうないのだろうか? 身体の一部を失くした人がもうない部分を痛がるように? 俺は身体の一部を失くしたのだろうか?
雪を見た時ゆうちゃんが隣にいた。奈緒と星を見た。ユリさんとも星を見た。引っ越して音のない部屋で、あかりさんが電話してくれた。本当にドラマみたいなことの連続だった。みんな俺のそばにいたし、今もいるんだ。黒猫のそばには俺がいるしかないよな。驚きと感謝込めて。
外に出ると初夏の日差しだ。何だか懐かしかった。蓮見さんは体調を崩し続けていて、大沼さんは新学期早々熱を出す子供の世話で、今日も石川さんと二人だった。石川さんは痛風と腰痛で死んでいた。元気なのは俺だけだった。息のしやすい気候のおかげかもしれない。気力が漲っていた。これも練習だからな、と思ってちまちまとやり切った。乗りこなしていく練習だ。でもただ単に躁状態なだけかもしれない。昨日から今日にかけて稀に見る躁状態だった。鬱状態でも乗りこなせるかどうかということが本当の練習で、そういう練習を死ぬまでやり続けているが、最近はサボり気味だったかもしれない。気を引き締めていきたい。体力で負けても気力で負けないようにしたい。ちょっと早起きして今日やることを全部決めた。今のところ決めた通りに進んでいる。やると決めたことをやるというのは素敵だ。それに、今から何をしようかと決めなくていいのはかなり負荷が軽いという気がする。でも流石に疲れて失速してきている。夕食を食べながらとらドラを見て悲しい気持ちになった。とても寂しい。寂しいだけが人生じゃない。でも寂しい。
本人が見てると思うと書けないことがやっぱりある。
人間関係なんて、面倒臭いな。みんな硝子細工のように繊細なんだもの。お前も俺も。
明日も早起きしたい。

4/16
jsonはプログラミング言語であるjavascriptのオブジェクト構文だけを抜き出したデータ形式だ。json自体はプログラミング言語ではなく、ただのフォーマットに過ぎず、だからこそより汎用的にデータを扱うことができる。jsonはphpでもpythonでも扱える。jsonはjavascriptの中から「発見」されたらしい。つまり既存のものの中から見方を変えることで、違った使い方を編み出した人がいるということだ。そういうことを考えると、すごいなあと思う。
それで生計を立てる、とかは二の次で、それよりも、俺は在野の研究者だと胸を張って言えるくらい、一つの物事を徹底的に調べ尽くしてみたい。そうして、これまでになかったような画期的な何かを発見したい。それが蛇を捕まえるということだ。
蛇とか猫とか、俺の周りにいるのは天敵ばっかだな。
人と比べちゃって苦しいのは、自分の力を他人に証明しようとしているからだ。自分の力は自分にだけ証明できていればいい。他者の思惑が混ざり込むと足枷になる。人に分かってもらおうとしない方がいい。
さよならだけが人生? 全然違う。出会いと別れは表裏一体で、それ自体が巨大なエネルギーの塊なんだ。バカデカエネなんだ。バカデカエネ見つけちゃったら何もしないわけにはいかんだろう。自分という肉体の優れた技術者であれ。
今日も早起きした。

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