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【ショートショート】お花屋さんにて

「淳、お久しぶり!大学時代お世話になった研究室の倉橋先生が2023年度末で退職されるから、お祝いがてら飲み会をしないか?」

2024年2月。
松笠淳(まつかさ・じゅん)は大学時代の友人である近藤空介(こんどう・くうすけ)からメールを受け取った。

「久しぶり!是非行きたい!お誘いありがとう」

淳と空介は大学を卒業した2020年3月以来、連絡を取ることすらしなかった。
大学では同じバスケサークルに所属し、研究室も同じ。
履修する授業もかなり似通っており、大学時代のかなり長い時間を共に過ごした仲だ。
仕事をするようになってからお互いに元気がなくなり、何となく疎遠になっていた。
そんな2人が、先生の退職をきっかけとして再び会うことになったのだ。





「淳、倉橋先生にお花をプレゼントしようと思うんだけど、当日花屋に集合ということでいいかな?」

飲み会の3日前、再び空介からメールが来た。

空介は大学時代から熱くなりすぎる性格で、よく女の子に花を贈っては交際を断られていたっけ。
まだ付き合ってすらいない女の子に花を贈るのはどうかと思うが、大学の先生に対してならば粋で素敵だ。

淳はそんなことを思いながら空介に返事をした。



当日。

「ご退職の際でしたら、こちらのお花を贈られる方が多いですね….」

店員が話す声が聞こえた。淳の視線の先には、身長2mはあろうかという巨人。世界一花屋の似合わない男である空介が、背中を丸めて小柄な店員と言葉を交わしていた。

「空介ー!」

「おおお!淳!久しぶり!」

久しぶりの再会に抱き合う2人。

その瞬間、奥から店長らしき人物が現れた。

「お客様、感動の再会のようですね。私たちからお花をプレゼントいたします。我々は、感動のお手伝いをさせていただく身ですから」

店長の手には、真っ赤なゼラニウムが。
花言葉は「真の友情」だそうだ。


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