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まいにち易経_0517【真心は姿が見えずとも通じ合う】鳴鶴陰に在り、その子これに和す。[61䷼風澤中孚:九二]

九二。鳴鶴在陰。其子和之。我有好爵。吾與爾靡之。 象曰。其子和之。中心願也。
九二は、鳴鶴(めいかく)の陰(いん)に在り。其の子これに和す。我に好爵(こうしゃく)あり。吾爾(われなんじ)とこれを靡(とも)にせん。
象に曰く、其の子これに和するは、中心願えばなり。

風沢中孚(ふうたくちゅうふ)
ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る

こんにちは、皆さん。今日は、古代中国の知恵「易経」について、特にその中の一つである「風沢中孚」二爻についてお話ししましょう。少し難しそうに聞こえるかもしれませんが、わかりやすくお話ししますので、リラックスして聞いてくださいね。

「風沢中孚」というのは、心の中にある真心や誠信を意味します。この九二(きゅうじ)の爻では、親鶴が陰で鳴くと、見えないところにいる子鶴が応えるというエピソードが出てきます。これは、親が子を思い、子が親に応える真心が、姿が見えなくても遠く離れていても通じ合うということを示しています。

「親鶴が陰で鳴くと、見えないところにいる子が声を合わせて鳴く。」

つまり、親鶴が鳴けば、離れたところにいる子鶴も応答して鳴くということです。これは、親と子の間に深い愛情の絆があり、たとえ姿が見えなくても心が通じ合っているという教訓なのです。

例えば、皆さんが親しい友人と心から願い合うとき、その思いは必ず相手に伝わるということです。これは、量子論でいう「量子もつれ」にも似ています。量子もつれは、二つの粒子がたとえ遠く離れていても、一方の状態が他方に影響を与える現象です。真心も同じように、距離に関係なく通じ合うものなのです。

ここで面白い比喩が出てきます。現代物理学の「量子もつれ」という概念を知っていますか?簡単に説明すると、微小な世界では2つの粒子が相互作用すると、距離に関係なく状態が共に変化するという不思議な現象があります。まるで心が通じ合っているかのようですね。

鶴の親子の絆と量子もつれ、一見無関係に見えますが、実は深いところで共通しているのかもしれません。物理的に離れていても、心の中の確かな絆があれば、互いを思う気持ちが通じ合うのです。
昔の人は現代科学を知る由もありませんでしたが、自然の摂理を敏感に感じ取っていたのでしょう。鳴鶴の譬えには、人間関係の本質が言い得て妙にこめられています。

さて、具体的なエピソードに戻りましょう。親鶴が暗いところで鳴くと、その声に子鶴が応える。この親子の関係は、リーダーシップにも通じるところがあります。真心を持って部下や仲間を思いやるリーダーの声は、必ず部下や仲間に響きます。姿が見えなくても、その思いは伝わるのです。

例えば、リーダーとしての資質が問われるとき、部下への思いやりの心が何より大切になります。たとえ立場が違おうと、互いの気持ちが通じ合えば、組織は強固な絆で結ばれるはずです。
逆に言えば、上から目線で部下を見下すようではいけません。気持ちが通じ合わなければ、組織はバラバラになってしまうでしょう。
リーダーには、部下一人ひとりの人格を尊重し、思いやる心を持つことが不可欠なのです。そうすれば自ずと信頼関係が芽生え、組織は強固な絆で結ばれていくはずです。

さらに、「我に好爵あり」という句も重要です。これは、美味しいお酒があるけれど、それを一人占めせずに分かち合いたいという意味です。リーダーシップにおいても、自分の成功や利益を独り占めせず、仲間と分かち合うことが大切です。自分だけが成功しても、本当の意味での成功とは言えません。仲間と共に喜びを分かち合うことで、チーム全体の成功となるのです。

ここで、もう一つ面白い話をしましょう。孔子もこの爻辞について語っています。「君子その室に居てその言を出だすこと善なるときは、千里の外皆之に応ず」と言っています。これは、優れたリーダーが家にいても、その言葉や行動が遠くまで影響を及ぼすという意味です。つまり、皆さんが真心を持って行動すれば、その影響は思わぬところまで広がるということです。

また、「誠心の通い合う譬え」として、夫と妻の間にもこの関係が当てはまります。九二の爻辞は、夫である九五に向けたものでもあり、夫婦の間でも真心が通じ合うことを示しています。たとえ障害があっても、その真心があれば通じ合えるということです。これもリーダーシップにおいて重要なポイントです。障害や困難があっても、真心を持っていれば、それは必ず通じ合い、解決の道が開けるのです。

このように、「風沢中孚」の九二の爻は、リーダーシップや人間関係において非常に重要な教えを含んでいます。真心を持って行動し、他者を思いやることが、成功への鍵となるのです。リーダーとして期待される皆さんにとって、この教えは非常に役立つことでしょう。

皆さんがこれからリーダーとして成長していく中で、ぜひこの教えを心に留めておいてください。真心を持って仲間と接し、思いやりを持って行動することで、必ずや成功を手にすることができるでしょう。そして、その成功は、皆さんだけでなく、周りの人々にも幸福をもたらすものとなります。

今日は、皆さんとこのような深い話ができて、とても嬉しく思います。これからも、鳴鶴の教訓を胸に刻み、優れたリーダーとなれる人材に育ってほしいと願っています。


参考出典

親鶴が陰で鳴くと、見えないところにいる子が声を合わせて鳴く。
親が子を思い、子が親に応えるような真心は、姿が見えず、遠いところにいても通じ合うということである。
風沢中孚の卦名「中孚」は心の中心にある真心、誠信をいう。
心の中で真から願うことは、必ず感通するものである。

易経一日一言/竹村亞希子

『陰』は日蔭。『靡』は散じて共にする。『好爵』は、美味い酒(好酌)。数多い爻辞のなかで最も美しい句である。
『鳴鶴』とは、親鶴で、その鳴き呼ぶ声に、子鶴が応えるのである。これを人に当て、『自分には美味い酒があるのを独り占めして喜ぶことをせず、爾にも分け与えたいと心の底から孚を尽くすようなものである』というのが爻辞の大意である。
九二と九五は内外卦の「中」で、実がある(陽は充実)。つまり中なる孚がある。誠信のある者同志、遠く離れていても、冥々のうちに感通するものである。たとえば鶴が暗い蔭で鳴けば、見えないところにいるその子が声を合わせて鳴くように。それというのも心中に願っていることが通い合うからである。親が子を思い、子が親に応えるような真心は、姿が見えず、遠いところにいても通じ合うということである。『中孚』は心の中心にある真心、誠信をいう。心の中で真から願うことは、必ず感通するものである。
陰に在りとは、二の位が下にあるからである。吾に好爵あり云々、好き爵位とは二が「中」の位を得ていること。自分に好き爵位があるが、一人占めしたくない。徳のすぐれた汝とこの爵位を分ち共にしよう。自分の願う物は汝もまた願う物だから。これも誠心の通い合う譬え。孔子は繋辞伝にこの爻辞を引いて次のようにいう、
「君子その室に居り、その言を出す。善ければ千里の外れに応ず。況んやその輝き者をや……言行は君子の枢機。枢機の発するは、栄辱の主なり」。
占ってこの爻を得た人、心に誠さえあれば、求めずして応援を得、爵位を得るであろう。

易(朝日選書)/本田濟

『鳴鶴=雌鶴』説
『其の子』というのを子供ではなく『夫子』とする。
そして『鳴鶴』は親鶴ではなく『雌鶴』なのである。夫に当たる応位の九五と、妻の九二の間には二陰爻があり、しかも両爻は陽同士なので応和することが妨げられている。それが『陰に在り』にあたる。
しかし中孚の時にあって、相孚(あいふ)しようとする情愛は強く、雄鶴を鳴き呼べば、九五もまたこれに応えて鳴き交わすと言うのである。そのように解釈することで、九五の爻辞『孚有りて攣如(れんじょ)たり』が照応してくるはずなのである。

[加藤大岳]

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