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21世紀のポピュラー音楽からみる、ヒップホップの時代とビートルズ神話の終焉。

『ローリング・ストーン』(Rolling Stone)は、音楽や政治、大衆文化をあつかうアメリカの雑誌である。

さて、『ローリングストーン』誌の「オールタイム・グレイテスト・アルバム500」が、2020年9月に8年ぶりに改訂された。この「オールタイム・グレイテスト・アルバム500」は、一般的に世界のポピュラー音楽における価値基準となるランキングだといって差し支えないだろう。

興味深いのは今回2020年に発表されたランキングが、2012年版と比べて大きく様変わりをしていることである。戦後ポピュラー音楽において絶対的な評価を得ていた作品は、まぎれもなくザ・ビートルズの『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』だった。当然、2003年、2012年の『ローリングストーン』誌の「オールタイム・グレイテスト・アルバム500」でも、このアルバムが第1位を獲得していた。

ところが、2020年版で『サージェント・ペパーズ』は、なんと24位にまで順位を落としているのである。しかも2012年ではビートルズのアルバムが10位以内に4枚もランクインしていたのに、今回ビートルズのアルバムで10位以内に食い込んでいるのは、5位の『アビイ・ロード』のみなのだ(ちなみにロック音楽の最高位はビーチ・ボーイズの『ペット・サウンズ』で第2位)。

私自身はビートルズのリアルタイム世代ではなく、現在はクラシックやジャズ、アンビエントなどを聴くことがほとんどで、ロック音楽はほぼ聴かない。ポピュラー音楽といえばエモ・ヒップホップを聴く程度だが、それでも一時期はロック音楽にどっぷりハマっていた時代もあったし、ビートルズは数曲だが演奏できるくらいに好きなバンドではある。だからこそ、ビートルズがポピュラー音楽界でいかに巨大な存在であるのかは骨の髄まで知っている。

それだけに今回の『ローリングストーン』誌の「オールタイム・グレイテスト・アルバム500」は、これまでのビートルズ信仰に一石を投じるものとして注目に値すると思う。

実はこの雑誌の発表に先立つこと5年ほど前にも、これまでのビートルズの価値を揺るがすような学説が唱えられている。2015年のロンドン大学の研究発表では、「ヒップホップの登場が、それまでの音楽の歴史を丸ごと変えてしまっている。それに比べれば、『ザ・ビートルズ』が及ぼした影響は、大きなものとは言えない」という結果を導き出しているのである。それどころか、ビートルズも他のバンド同様過去のミュージシャンの模倣にすぎないという意見すらでているのだ。

それだけに今回の『ローリングストーン』誌のランキングで、第1位を獲得したのがマーヴィン・ゲイの『ホワッツ・ゴーイン・オン』であったというのは実に象徴的である。現代の音楽シーンでは、ヒップホップにいかに多大な影響を与えたかということが、極めて重要視される結果となっているからだ。

ビートルズが現代においても多くの人々から愛され、尊敬されている存在であることは、疑い得ない事実ではある。しかしクラシック音楽でもヨハン・カスパール・ケルルやヨーゼフ・ラインベルガーといった、評価も高く著名であった作曲家の名が現代ではほとんど忘れ去られていることを鑑みると、永久不滅のようにさえ見える「The Beatles」という輝かしいバンド名が、あと100年後の世界で人々に知られているかどうかはわからない。

私自身はビートルズの名が長い時を経ても聴かれ続けることを願うが、世界のメインストリームがヒップホップで溢れかえっている実状を目の当たりにしていると、長い時のふるいにビートルズが耐えられるのか、一抹の不安を抱かざるを得ないのである。


※しばらく投稿していなかったので、テーマも構成も決めず、お酒を飲みながら、書きなぐりのような記事を書いてしまいました。すみません......。

最後まで読んでいただきまして、本当にありがとうございました!