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眩しい闇 アド・ラインハート


0Abstract Painting No. 5  1962

アド・ラインハート(1913-1969)は米国ニューヨーク州バッファローに生まれました。

上の作品はラインハートの抽象表現の到達点である「ブラック・ペインティング」のひとつです。一見、黒一色に塗りつぶされているように見えますが、実は均等に九等分された色面で構成されており、色は緑、青、茶などのもっとも暗いトーンを使っています。

よく見ると9つの色面に分けられているのが分かるのですが、各色面の境界線は色彩ではなく光沢によって確認することができます。

ラインハートの「ブラック・ペインティング」には芸術作品にみられる意識的な錯覚が一切消滅し、完全な「闇」のみが明確に存在しているのです。この純粋性は通俗的な大衆芸術や高尚なハイアート(高等芸術)との断絶を宣言していると言えるでしょう。

虚無の世界から屹立するこの純粋性は、これまでの西洋美術の文脈にはなかった思想を反映しています。そういう意味でラインハートの絵画は西洋と東洋の思想を止揚した、唯一無二の輝きを放っていると言えるのではないでしょうか。

最後まで読んでいただきまして、本当にありがとうございました!