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音楽への好奇心が20代で固定されるという説は本当か?


年齢を重ねるほど多くの人は音楽から遠ざかっていきます。

一般的に大多数の人は若さを失っていくたび、新しい音楽への興味も失うといわれています。そして、やがては自分が若い頃に聞いていた音楽ジャンルばかりをずっと聴き続けるか、もしくは音楽そのものをほとんど聴かなくなってしまうのだそうです。

10代から20代前半にかけて何度もリピートした音楽のきらめきは次第に色褪せていきます。新しい音楽への無関心が示すのは、柔軟な感性がひっそりと朽ち果てていく感受性の鈍化といえるのかもしれません。

人間の音楽に対する嗜好は20代までに固定されるという説について

以前から音楽に対する個々人の嗜好は20代で固定されるといった研究結果は数多く発表されてきました。もちろん個人にもよりますが、一般的には14歳前後から24歳くらいまでが新しい音楽を吸収するもっとも感受性のすぐれた時期だといわれています。

そして20代も後半を過ぎるとしだいに音楽への探求心は失われていき、30歳を迎えるとほぼ人間の脳は新しい音楽への扉を閉ざしてしまうのだそうです。新たな音楽への知的好奇心と年齢との相関関係は、多くの学説からも証明されているといえるでしょう。

無論、人生に対する音楽への関わり方は人それぞれです。音楽がなければ生活ができないわけでもありません。ですから音楽に無関心であることをもって非難される理由などどこにもないわけです。

ただし音楽を生涯に渡って楽しみたいと考えているならば、10代、20代の若い間に、聴くにせよ、演奏するにせよ、様々なジャンルの音楽と接しておくと良いのかもしれません。

年齢とともに聴く音楽ジャンルが変化する?

しかしこの音楽探求心20代限界説は30代以降の大人たちにとっては絶望的な学説だといえます。30代を迎えたが最後、人は新しい音楽体験を若者のように愉しむことができなくなってしまうのでしょうか。

実はこの新しい音楽への好奇心年齢限界説に異を唱えるようなデータが存在します。日本レコード協会による、年齢によって人の聴く音楽ジャンルが変化するという調査結果です。

✓ 普段聴く音楽ジャンルは、「日本のポップス・ロック・ダンスミュージック」「海外のポップス・ロック・ダンスミュージック」が上位。昨年と同様の傾向。
✓ 性年代別でみると、女性10代・20代は日本・海外のポップス・ロック・ダンスミュージックに加えて、「アニメ・声優等 音楽」「アイドルミュージック」をよく聞いている。男性10代・20代は「アニメ・声優等音楽」の視聴率が他の年代と比較して高い。男性50~60代は「ジャズ」「演歌・歌謡曲」が高い。

音楽

この結果は20代で音楽の好奇心は固定され、30歳をすぎた人間はそれまで聞いていた音楽ジャンルをひたすら聴き続けるという、年齢による音楽嗜好の固定化を打ち破る鍵となりはしないのか私は考えてみました。

音楽選考の心理学

おそらく日本レコード協会の調査結果は「音楽選考の心理学」で説明ができると思います。

「音楽選好の心理学」とは、人が音楽を選ぶとき、その背景にある心理学的要因を研究する心理学のことです。つまり人間の性格やそのときの状況が、聴く音楽にどのような影響や変化をもたらすのかを、この心理学では明らかにしています。

この研究によれば、年齢が音楽に対する好みや考えの変化に重大な要素となりうると論じているのです。また年齢のほか、性別や季節、そのときの気分なども聴く音楽に影響を与えるとも語っています。

ただし年齢による聴く音楽ジャンルの変化というのは、積極的な新しい音楽への探求心から発生するものではなく、意思の介在しない自然発生的な変化です。しかし年齢が音楽選定の変化の要因となるならば、音楽への興味は歳を重ねても完全に失われるわけではないのかもしれません。

夢のプラットフォームが現代にはある

現代ではYouTubeやサブスクリプションなどで、古今東西の有名な音楽から個人製作のニッチなサウンドまで世界中の様々な音楽を聴くことができます。

CDで音楽を聴くことが当たり前だった私のような世代から考えると、現代の音楽プラットフォームはまさに夢そのものです(ただし日本ではサブスク登録者が有料、無料も含めて2000万人しか登録しておらず、音楽家が育たないという危機的状況に陥っているのですが……)。

音楽は多くの感動を人に与え、鋭い感受性を育み、人生を豊かにします。
私は音楽ファンの一人にすぎませんが、ぜひ一人でも多くの方に世界中の様々な音楽に接してもらい、新しい音楽と出会う喜びを体験してほしいと切に願って止みません。

最後まで読んでいただきまして、本当にありがとうございました!