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感想『日日是好日』森下典子

映画版を見て泣けたので、原作も!と思い購入。何度も読み返したくなる本だったので、買って正解かもしれないです。

あらすじ

作者の、茶道を通じて気付いたことを物語とした小説。大学生の時から通い始めた茶道が人生の様々な場面でつながり、次へ進む後押しをしてくれている。

感想

私はこの本に影響を受けたなあと思うところが2つあって、1つは日頃の振る舞い、1つは自由の定義である。
前者はシンプルで、日々の動作の一つ一つに手を抜かないように意識し始めたところである。それまでは歩いたり物を取ったりする際にも、指先まで意識することなんてなかった。そんな私が、茶道の柄杓を持つように美しく!と思いながら生活してみると、歩く時に力を抜いていたことに気づいたし、食器を雑に扱っていたことにも気付けた。常に程よく力が入っている状態が美しいとも言うし、歳を取って気品ある紳士になるためにも、指先まで意識して生活することは当然のことと思った。

後者の方は作中の文章から投げかけられた部分である。

個性を重んじる学校教育の中に、人を競争に追い立てる制約と不自由があり、厳格な約束事に縛られた窮屈な茶道の中に、個人のあるがままを受け入れる大きな自由がある...。
いったい本物の自由とはなんだろう?
そもそも、私たちは何と競っているのだろう?

歳を重ねる中で、私たちは他人と比べることの無意味さを知る。優れていたり劣っていたりすることを数えることに意味はないし、それをすることによって幸せになれないことを理解していく。

それなのに、学校教育では到達度を点数化して、他人と競争するよう追い立ててくる。みんな違ってみんないいと言いながらである。
一つの方法を強いる茶道は、方法の多様性こそ許されないけれど、気付きや感じ方に点数は無いし、優劣もない。比較対象は過去の自分である。

我々が求めている「自由」とはなんだろうか。さまざまなアプローチで答えを出せることだろうか?方法が定まっていたとしても、出した答えが比較されずそのまま尊重されることではなかろうか?自分が受けた学校教育はなんだったのか。

茶道から気づく主人公の物語に寄り添いながら、もっとたくさん素敵な気付きがありながら、自分の望む教育について考えずにはいられなかった。

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