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『野菜大王』と『文具大王』

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細かく投稿した小説をマガジンにしてみました。是非一話からお楽しみいただけると幸いです。もうすぐ最終回になります。
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『野菜大王』と『文具大王』第1章・大王の使者

『野菜大王』と『文具大王』第1章・大王の使者

野菜大王の使者

ママがお店の壁にポスターを貼った。
「ママ! それ何?」康太が聞くと「これはね、パパとママがボランティアをしている[世界に学校を増やそう会]のポスターよ」とママは言った。
[世界に学校を建てよう!]のキャッチコピーの下には鉛筆とノートを抱きしめて、それにキスをしている外国の少年がアップ写真で載っていた。
「学校なんか沢山あるのに」
「世界では色々な事情で学校を建てる事が出来ない国

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『野菜大王』と『文具大王』第2章・文具大王に摑まった少年

『野菜大王』と『文具大王』第2章・文具大王に摑まった少年

文具大王につかまった少年

第1章大王の使者あらすじ
康太はピーマンが嫌いでいつも人の目を盗んでは捨てていた。そんなある日の夜不気味な音楽と共にピーマンの化け物の連帯が「野菜大王」と連呼し康太は囚われの身になってしまう。地球から遠く離れた大王の星の牢獄で康太はひとりぼっちで泣いていた。

文具大王につかまった少年 
康太は独りぼっちの不安と恐怖でどのくらいの時間泣いていたか覚えていなかった。ただ、

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『野菜大王』と『文具大王』第3章・大王裁判

『野菜大王』と『文具大王』第3章・大王裁判

大王裁判

前章までのあらすじ
ピーマンが嫌いな康太はこっそり捨てて誤魔化していた。ある晩野菜大王の使者と名乗る化け物の隊列に囚われ見知らぬ星の牢屋に入れられてしまった。独りぼっちの康太の牢屋にひとりの少年が囚われて来る。鉛筆を万引きし文具大王の使者に摑まったのである。少年の名はネロ、カンボジアの少年であった。
 康太はネロの故郷の貧困さを知り絶句、寂しさをかばい合う二人は友達になった。そして、大

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『野菜大王』と『文具大王』第4章・パプリカーン

『野菜大王』と『文具大王』第4章・パプリカーン

パプリカーンとの出逢い 

前章までのあらすじ
食べ物を粗末にして大王の星に連れてこられた康太は、牢獄の中でカンボジアの少年ネロと友達になる。ネロは鉛筆を万引きして文具大王に摑まったのだ。そして、ふたりの大王裁判が始まった。
裁判の結果、康太は有罪となりファーム行きを命ぜられる。一方ネロは無罪になったが、自分も康太と一緒にファームへ行くと大王に頼み込む。
ふたりを乗せたかぼちゃの飛行船はファームに

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『野菜大王』と『文具大王』第5章・台風襲来

『野菜大王』と『文具大王』第5章・台風襲来

前章までのあらすじ
裁判にかけられ有罪となった康太は、ファームの師匠パプリカーンと出会った。厳しい農作業に耐える康太に比べてネロは成れたものだ。パプリカーンはネロに遣り過ぎたと教える。康太の為にならぬと言うのだ。日々ピーマンを育てる康太とネロの絆が深まる中、農作物にとって最大の敵がやって来る。

台風襲来

 きっかけは、住所の交換であった。お互いの住所を交換したが紙に書かれた言葉は互いに読む事は

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『野菜大王』と『文具大王』第6章・別れの時

『野菜大王』と『文具大王』第6章・別れの時

別れの時

 翌日、康太たちが目を覚ますとベッドの横に綺麗に洗濯された作業着と茶色い紙袋に入ったピーマンが置いてあった。
「ふたりとも目が覚めたかな」たれ目のパプリカーンが部屋にやってきた。
「師匠、作業着を洗って下さったのですか?」ネロが聞いた。パプリカーンは頷きながら言った。
「別れの時が来た! 大王様がお呼びである。その服とピーマンは記念に持って帰るが良い」
「師匠!」ふたりは泣いていた。家

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『野菜大王』と『文具大王』第7章・さよならネロ

『野菜大王』と『文具大王』第7章・さよならネロ

前章までのあらすじ
食べ物を粗末に扱い不思議に星に囚われてきた康太はカンボジアの少年ネロと知り合う。ファームでピーマンを育てながら二人の友情が深まった時別れの時がやって来た。

さよならネロ

プシュ―という音と共にドアが上に向かって開いた。それはまるで康太が普段使っている筆箱その物が大きくなり、窓が付いているようであった。
「康太は一両目に、ネロは二両目に乗車しなさい」鉛筆の化け物が指示をした。

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『野菜大王』と『文具大王』第8章・大王の正体

『野菜大王』と『文具大王』第8章・大王の正体

 パプリカーンは野菜大王と向かい合って座っていた。
「台風まで起こしたらしいな。そこまでやる必要があったのであろうか?」野菜大王は言った。
「山村康太に対する教育だけでは必要なかったでしょうな」
「ならば何故?」
「康太とネロの絆を深めたかったのです」
「なるほど」
「野菜大王、なにをお惚けです。大王は既に見抜いておいででしょう。ですからお互いの街を見せて帰すようにガジャジャにご指示なさったと私は

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『野菜大王』と『文具大王』最終章

『野菜大王』と『文具大王』最終章

ネロがくれたもの

 放課後、防災無線が地域の方々へ児童の下校見守りをお願いしていた。康太も普段の道を下校していた。前にはサッカー部の先輩が女子に囲まれて歩いている。先輩はエースストライカーで勉強も学年でトップクラス、康太とは比べ物にならないヒーローだ。網に入ったサッカーボールを左の肩から下げて、右手でペン回しをしながら歩く姿は格好が良い。そんな平和な風景に、突然春風が襲い掛かった。クルクルと先輩

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