石楠花 直

どっぷり昭和の売れない物書き屋だす。 本にならなくても多くの方に作品を読んでいただきた…

石楠花 直

どっぷり昭和の売れない物書き屋だす。 本にならなくても多くの方に作品を読んでいただきたく登録しただす。 宜しくお願いしますだすなー。

マガジン

  • 天国へのmail address

  • 『野菜大王』と『文具大王』

    細かく投稿した小説をマガジンにしてみました。是非一話からお楽しみいただけると幸いです。もうすぐ最終回になります。

  • 石楠花直のものがたり集

    石楠花 直(しゃくなげなお)です。 子どもが主人公の小説を書いてみました。クリエータの皆さん是非読んでください。

最近の記事

【小説】天国へのmail address第八章・勇気の言葉と正義の刃

第三者委員会の授業参観  宮山小学校の会議室には第三者委員会の委員が集まっていた。数日間の教師への聞き取り調査に加え、保護者や児童への面談も実施してきた。倉田がゴリ押しをして再度実施された四学年児童全体に対する『いじめ』に関するアンケート調査の集計と検証もすでに終了していた。 「委員の皆様には大変お疲れ様でございます。本校における『いじめ』に関する調査も本日が最終日、四時間目の授業参観の後、この場所で報告書をまとめて頂きまして、午後三時から体育館での公開報告会を残すのみと

    • 【小説】天国へのmail address第七章 戦いの日・会えない二人

      橘が黄泉の国(よみのくに)に渡り、再度現世に戻る申請をし、許可が下りた時には、黄泉の国の時間では七日の月日が流れていた。しかし、現世の時間では一日しか経っていない。告別式で初七日の法要も行ってしまうからだ。以下は現世での話になる。第四章を参照 別れと再会 女性は隣人から回覧板を受け取ると後ろに立っていた優輔を見つける。隣人が立ち去るのを見定めてから優輔は恥ずかしそうに語り出す。 「あのー、龍馬さん、あ、橘さんはいますか?」優輔は戸惑いながらやっとの思いで言ってみた。そう

      • 【小説】天国へのmail address第六章・ひと時の奇跡から『黄泉の国』へ

        ひと時の奇跡  病室で紀子は涙にくれていた。ほんの数十分前に医師から臨終を宣告された。覚悟をしていた事とは言え、現実になると涙が溢れて立っても居られない状況であった。本来ならば医師が臨終の宣告をした時点で、看護師は患者だった方の体に取り付けられた器具や設備を外し、消毒をして次の患者用にスタンバイするのが原則だ。しかし、橘の担当看護師だった渡辺雅恵(わたなべまさえ)はそれをしなかった。紀子の落胆が大きすぎて彼女の目前でその作業を行う事がはばかれたからだ。雅恵は少しの間だけでも二

        • 【小説】天国へのmail address     第五章・そうだったのか優君!

          旅立ちの時  橘は清々しい思いで山間の舗装がされていない道を歩いていた。周りにいろいろな世代の人が同じ道を真っすぐに歩いている。 「ずいぶん長い時間この道を歩いているけれど疲れないですね?」橘は隣を歩いていた老婆に尋ねてみた。 「そうですね。この道は何処まで続くのやら長い道ですね」老婆は息が切れる事もなくすいすいと歩きながら言った。 「大丈夫ですか? 少し休んだ方が良いのではありませんか?」橘は老婆を気遣って言ったが老婆はすいすい歩きながら言った。 「ありがとうございます。で

        【小説】天国へのmail address第八章・勇気の言葉と正義の刃

        マガジン

        • 天国へのmail address
          8本
        • 『野菜大王』と『文具大王』
          9本
        • 石楠花直のものがたり集
          2本

        記事

          【小説】天国へのmail address 第四章              いじめの刃

          いじめの刃  授業が終わり、給食の準備が慌ただしい教室で貴子は俊に話しかけた。 「俊君! 国語の教科書見せて!」俊は首を振って自分の机を抱え込んだ。 「そうだよ、教科書見せて」優輔も一緒になって貴子の横に立っていた。 「みせて!」貴子は半分力ずくで俊の国語の教科書を取り上げて、授業の時に俊に変わって読んだページを開いてみた。 「どういう事?」俊の教科書は所々ページが破られていた。 「先生のところに行こう!」貴子は俊の手を引っ張ってそう言った。 「……」俊はただうつむいて首を振

          【小説】天国へのmail address 第四章              いじめの刃

          【小説】天国へのmail address第三章・勇気の意味

          朝デート 「優君おはよう!」ラジオ体操が終わるのを待って橘は優輔に声を掛けた。 「おはよう! 龍馬さん」 「昨日、優君が言っていた学校の事、新聞に載っていたね。優君は何年生なの?」 「僕、僕も四年生」 「そうか、亡くなったのはお友達?」 「龍馬さんごめん、その事は言っては駄目とパパとママに言われてる。」 「そうか、そうだね、龍馬さんが悪かったね。もう聞かないよ。でもね、優君がもしも学校で辛い状況になってパパやママにも相談出来ない時は龍馬さんに言ってね。龍馬さんは優君の友達だか

          【小説】天国へのmail address第三章・勇気の意味

          【小説】天国へのmail address    第一・二章までのあらすじと第三・四章の予告

          体調不良から仕事を引退した橘克巳は、早朝の散歩途中、笑顔ながらもどこか影を持った少年優輔と出会う。 スマホゲームを切っ掛けに仲良くなった橘と優輔、しかし、優輔の学校では、夏休みに児童が死亡するという事件が起きていた。自殺か、事故か? 橘とその妻紀子は母校で起こった事件に困惑する。 変わり教育の環境の中で、一体優輔の小学校で何が起こっているのか? 優輔は自分達が抱える問題に立ち向かう事が出来るのか?  そして、急展開の第四章! こうご期待。

          【小説】天国へのmail address    第一・二章までのあらすじと第三・四章の予告

          【小説】天国へのmail address 第二章・夏休みの大事件

          夏休みの大事件  橘が家に戻る頃には、朝顔が元気いっぱい我先にと晴れわたる大空に向かって背伸びをしていた。橘はポストから朝刊を取りいつもより軽快に言った。 「ただいま」そう言う橘に向かって、妻の紀子(のりこ)は心配顔で「お帰りなさい。いつもより時間がかかりましたが、少し遠くまで歩いたのですか? お医者様には決して無理をしないようにと言われているのですから気を付けて下さいよ」と言った。 「ああ、分かっている。今日もいつものコースしか歩いていないよ」橘はリビングルームのソファ

          【小説】天国へのmail address 第二章・夏休みの大事件

          【小説】天国へのmail address 第一章・優君との出逢い

          出逢い お天道様がまどろみから覚めて伸びをする。東の空から薄明かりが浮かび上がると夜空で躍り廻っていた星達の輝きを、魔術のように消していく。 朝顔のつるに溜まった夜露が、ぽたりと地面に落ちる音が一日の始まりを告げる。 朝日ケ丘公園のベンチには老人がスマホを片手に座っていた。 橘克巳(達ばなかつみ)はこの夏で定年を迎えた。会社からは延長の話もあったが体調不良を理由に退職の道を選んだのだ。事実、橘の体調は決して良いと言える状態ではなくなっていのだ。 主治医からは健康維持のため

          【小説】天国へのmail address 第一章・優君との出逢い

          『野菜大王』と『文具大王』最終章

          ネロがくれたもの  放課後、防災無線が地域の方々へ児童の下校見守りをお願いしていた。康太も普段の道を下校していた。前にはサッカー部の先輩が女子に囲まれて歩いている。先輩はエースストライカーで勉強も学年でトップクラス、康太とは比べ物にならないヒーローだ。網に入ったサッカーボールを左の肩から下げて、右手でペン回しをしながら歩く姿は格好が良い。そんな平和な風景に、突然春風が襲い掛かった。クルクルと先輩の右手で回っていたシャープペンシルが風にあおられ地面に落ちてしまった。コロコロ転

          『野菜大王』と『文具大王』最終章

          『野菜大王』と『文具大王』第8章・大王の正体

           パプリカーンは野菜大王と向かい合って座っていた。 「台風まで起こしたらしいな。そこまでやる必要があったのであろうか?」野菜大王は言った。 「山村康太に対する教育だけでは必要なかったでしょうな」 「ならば何故?」 「康太とネロの絆を深めたかったのです」 「なるほど」 「野菜大王、なにをお惚けです。大王は既に見抜いておいででしょう。ですからお互いの街を見せて帰すようにガジャジャにご指示なさったと私は思っておりますぞ」 「さすが王国一の指導者と言われるパプリカーン先生じゃ。しかし

          『野菜大王』と『文具大王』第8章・大王の正体

          『野菜大王』と『文具大王』第7章・さよならネロ

          前章までのあらすじ 食べ物を粗末に扱い不思議に星に囚われてきた康太はカンボジアの少年ネロと知り合う。ファームでピーマンを育てながら二人の友情が深まった時別れの時がやって来た。 さよならネロ プシュ―という音と共にドアが上に向かって開いた。それはまるで康太が普段使っている筆箱その物が大きくなり、窓が付いているようであった。 「康太は一両目に、ネロは二両目に乗車しなさい」鉛筆の化け物が指示をした。言われるままに康太とネロはそれぞれの車両に乗り込んだが、車内は自由に行き来出来る

          『野菜大王』と『文具大王』第7章・さよならネロ

          『野菜大王』と『文具大王』第6章・別れの時

          別れの時  翌日、康太たちが目を覚ますとベッドの横に綺麗に洗濯された作業着と茶色い紙袋に入ったピーマンが置いてあった。 「ふたりとも目が覚めたかな」たれ目のパプリカーンが部屋にやってきた。 「師匠、作業着を洗って下さったのですか?」ネロが聞いた。パプリカーンは頷きながら言った。 「別れの時が来た! 大王様がお呼びである。その服とピーマンは記念に持って帰るが良い」 「師匠!」ふたりは泣いていた。家に帰れるのは嬉しいのだが、この涙はそれでは無い。ただ無性に師匠との別れが辛かった

          『野菜大王』と『文具大王』第6章・別れの時

          『野菜大王』と『文具大王』第5章・台風襲来

          前章までのあらすじ 裁判にかけられ有罪となった康太は、ファームの師匠パプリカーンと出会った。厳しい農作業に耐える康太に比べてネロは成れたものだ。パプリカーンはネロに遣り過ぎたと教える。康太の為にならぬと言うのだ。日々ピーマンを育てる康太とネロの絆が深まる中、農作物にとって最大の敵がやって来る。 台風襲来  きっかけは、住所の交換であった。お互いの住所を交換したが紙に書かれた言葉は互いに読む事は出来なかったのだ。「康太! 僕に日本語を教えてくれないか」  ネロの希望で康太は

          『野菜大王』と『文具大王』第5章・台風襲来

          『野菜大王』と『文具大王』第4章・パプリカーン

          パプリカーンとの出逢い  前章までのあらすじ 食べ物を粗末にして大王の星に連れてこられた康太は、牢獄の中でカンボジアの少年ネロと友達になる。ネロは鉛筆を万引きして文具大王に摑まったのだ。そして、ふたりの大王裁判が始まった。 裁判の結果、康太は有罪となりファーム行きを命ぜられる。一方ネロは無罪になったが、自分も康太と一緒にファームへ行くと大王に頼み込む。 ふたりを乗せたかぼちゃの飛行船はファームに降り立った。そこで待っていたのは…… 農業の厳しさを知る康太 康太達が外に出

          『野菜大王』と『文具大王』第4章・パプリカーン

          『野菜大王』と『文具大王』第3章・大王裁判

          大王裁判 前章までのあらすじ ピーマンが嫌いな康太はこっそり捨てて誤魔化していた。ある晩野菜大王の使者と名乗る化け物の隊列に囚われ見知らぬ星の牢屋に入れられてしまった。独りぼっちの康太の牢屋にひとりの少年が囚われて来る。鉛筆を万引きし文具大王の使者に摑まったのである。少年の名はネロ、カンボジアの少年であった。  康太はネロの故郷の貧困さを知り絶句、寂しさをかばい合う二人は友達になった。そして、大王裁判の時が来る。 大王裁判 遠くからまたあの声が近づいてきた。「野菜大王!

          『野菜大王』と『文具大王』第3章・大王裁判