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マジに怖い話#大阪松竹劇場楽屋


大阪松竹劇場

それは高校生の頃に体験した話です。

大阪松竹劇場にバンド演奏の仕事で来ていました。

1週間公演で、1日に7回本番をやる強行スケジュールでした。
しかも泊まりはホテルではなく劇場。

空いている楽屋に布団を敷いて雑魚寝です。
最初の2、3日は修学旅行気分で楽しんでいたのですが、
日々の本番をこなし疲労困憊で床に着くようになります。

夜遅くまでトランプをやったり、テレビを見たり、
初日こそ楽しみましたが、2日目からはそんな事一切なく
真っ暗な6畳一間でバンドメンバー男4人が寝ます。

当時の亮太はお付き合いをしている女性がいました。
高校生で同じクラスの女の子。

ただ、この頃は忙しい時期でもあったので
彼女と2人で遊びに行くことはほぼなく、
相手の不満も爆発していて、お別れ一歩手前で大阪に来ていました。

みんなが寝静まった暗い寝床で着信音が鳴ります。

ピピピピ、

亮太の携帯に彼女から電話です。
布団を頭からかぶりお話をしました。

なんで会ってくれないの?
そんなに仕事が大事?
付き合ってる意味あるのかな?

会話からお別れするのは目に見えていました。
もう別れる事が決まっているかのような会話の受け答え。

おい、うるさいよ、

寝ていたバンドメンバーが起きてしまったので楽屋を出ます。

楽屋の扉は襖で横にスライドして開く。
出たらすぐに廊下で隣の楽屋が空室になっています。
楽屋の表札の位置に書かれた名前を見上げます。

ジャニー喜多川様

楽屋の襖横に貼られていましたが一度もお見えになってはいません。

今宵もくることはないでしょうからお部屋をお借りしました。

部屋に入ると、今みんなで寝ていた部屋とまったく同じ広さ。
明かりは付けずに襖を少し開けて廊下の光、非常口の蛍光灯の灯りを部屋に入れ込み話の続きをしました。

だから、私は待ってるんだよ
なんでいつも電話くれないの
付き合ってる意味ある?

ひたすら溜まった愚痴を聴きながら、
亮太はゆっくりとお別れを伝えます。

ごめんね、もう無理かもしれないね、俺たち、別れ、、、

お別れを電話口から伝えようとした時です。

うぉぉォォォオオ、、、、うォォォオオ。。。

半分ほど空いた襖から、
光が差し込む廊下から、
うめき声が聞こえる。

男性の声で、野太い響き、苦しいうめき声が廊下から聞こえてきました。

部屋の奥にいた亮太は電話口の彼女に
ちょっと待ってと伝え、半分開いた襖を開けに行きます。

ガラン、勢いよく襖をスライドさせ前回に開け廊下を確認しました。

誰もいません。声もしません。

隣の部屋のメンバーのいびきかな、
そう思って隣の部屋も確認しましたが
先ほどと同じで無音で真っ暗でした。

明かりは廊下にある非常口の明かりだけ。
再び社長の部屋に戻り、襖を半分閉めて、電話を続けます。

どうしたの、亮太、大丈夫?

心配してくれる彼女でしたがこれから別れを告げなくていけないので
心を鬼にして会話を続けます。

だから、もう、俺たちは無理だとおも、、、

うウウウオぉぉォォォオオ、、、、うォォォオオ。。。

先ほどより確かに近く、
わずかな光が差し込む襖の横、
誰かが口の横に手を当てて
この部屋に向かって明らかに発している声でした。

おい、いい加減にしろよ。
部屋から勢いよく襖を開け、
声の相手を確認しようとしました。

が、
そこには誰もいなく、
静まり返った廊下に非常口の電気だけが光っています。

ちょっと、亮太、何してるの

電話口で怒る彼女、不思議なことに困惑する亮太。
部屋の中で聞こえたうめき声は明らかにこちらに向けて発せられていました。
誰かが悪戯でやっているなら隠れる時に物音や気配がするはず。
しかし、そんな形跡や、物音は一切何もない。

だんだん怖くなってきた亮太は信じたくない気持ち、
認めたくない考えを塞ぎ込みながらまた襖を半分閉め部屋に戻ります。

なぁ、さっきから俺の声以外に何か聞こえてない?

電話口の彼女に恐る恐る確認します。

はぁ、何言ってんの、そんなに私のこと馬鹿にしてんの

怒り出す彼女、暗い部屋、半分開いた襖、

その時です。

うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお

部屋中にうめき声が響き渡り体が振動しました。

頭がおかしくなる程の恐怖の中で電話口の彼女に聞きます。

ねぇ、こ、この声、聞こえてるよね?

泣きながらの亮太からの問いかけに、

もういい、そんなにふざけて、何も聞こえないわよ!

部屋は男の野太いうめき声で埋め尽くされている、
携帯を暗い部屋の中で辺りに響き渡るうめき声に差し出すように掲げ、
声を聞いてもらおうとしました、

ね、聞こえるでしょ。

ふざけないで、何も聞こえないもう怒った、切るね。

悪ふざけかと思われたがここで電話を切るのはヤバすぎると感じた亮太は絶対切らないで、別れない、絶対に別れないから。

そう言いながらメンバーのいる楽屋に足早に戻り自分の布団を頭からかぶります。

じゃ、じゃあ、また明日電話するから。

暗闇の中で体を震わせながら気を失うように眠りにつきました。

朝、起床したメンバーに聞いてみたら皆反応は一緒です。

何言ってんだこいつ。

悪戯や悪ふざけなら少しでもリアクションが違ってくるはず。
メンバーは確実に寝ていました。

やはり、昨晩のあのうめき声は誰かの仕業では無かったんだと思います。

あのうめき声はなんだったのか、
なぜ誰にも聞こえなかったのか
いまだにわからず思い出すたびに
恐怖に怯える、男のうめき声の話です。

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