wwdの記事を読んで思ったことを書こうとしたが書いてるうちに急展開してしまった。

 WWDで「“にこるんのブランド”じゃ終わらせない  藤田ニコルが「カルナムール」で届けるホンキ服」という記事があった*1。藤田ニコルは以前から「NiCORON(ニコロン)」というブランドをプロデュースするという形でモデル以外としてもファッション業界で活躍していたがこの記事から改めて本気具合が伺える。このように知名度のある人がファッションブランドを立ち上げるということについても藤田ニコルはファッション雑誌のモデルとしてデビューしたこともあり、ファッションに対しても意識も高いと考えられるのでブランドを立ち上げる気持ちは理解できる。
 しかし昨今、インフルエンサーやファッションに関する動画をアップロードしているでもないYouTuberがファッションブランド(以下インフルエンサーブランドとする)を立ち上げるという動きが活発である。
 この元々ファッション業界に属するわけではない人たちがアパレルを販売するということは以前からイベント、アーティスト、インフルエンサーなどのグッズとして存在していたが、それらはブランドとしての起能はなく、あくまでも特定のファンのための記念品的であった。ファンのためのものという考えはインフルエンサーブランドにも当てはまるかもしれないがブランドとして動いている以上記念品的なものではいられないし、実際記念品というわけではないようである。
 そう考えた理由は記念品的なものとは明らかに違うデザインにある。記念品は音楽ライブに代表されるようなイベント、アーティストなど発信者の名前が大きくデザインされ、いかにも記念品のようなものがよくあるが、インフルエンサーブランドはインフルエンサーの名前が大きくデザインされるようなものではないように感じられる。実際、YouTuberヒカルがクリエイティブディレクターを務めるブランド「ReZARD(リザード)」はヒカル自身がモデルとして露出することはあるが、ヒカルという名前が大きくデザインされるというようなヒカルという存在が前面に押し出されたデザインではなく、ヒカルのブランドだということは商品や名前を見ただけでは分からない。こうすることでファンのためだけのグッズという認識は、完全ではないがある程度避けられ、インフルエンサーにとっては自分がここまでの影響力をもった記念、ファンにとっては応援している人がグッズを出した記念というそういった一時の感情ではないのだ。だからこそブランドであるとも考えられる。
 そして、インフルエンサーブランドの売り上げはインフルエンサーの影響力に強く左右される。最も、売れる算段があるからこそブランドを立ち上げるまでの規模になっていると言われればそうだが。しかし、その売れ行きには目を見張るものがある。前述した「ReZARD」は「LOCOND(ロコンド)」とのコラボで1週間の内に約6億円を売り上げた*2。大手セレクトショップ「SHIPS(シップス)」の年商が194億7618万円 (2021年2月期)*3であるので、この1週間で6億円がどれほどの数字か分かる。このようにインフルエンサーブランドで驚異的な売り上げをたたき出すものがある中、ファッション業界全体の売り上げはというと、1991年に15兆円あったものが2010年代あたりで10兆円になると下降は終わり若干の上昇を見せているが1991年と比べると2/3まで落ち込んでいる。人口減少や少子化、モノがあふれる現代ではファッション以外の支出もかなり大きいので、ファッションに関わる身としては悔しいが当然のようにも思える。さらに新型コロナウイルスの影響もあり近年は更に雲行きが怪しい。
 しかし、悲観ばかりしてはいられない。「憧れのあの人が着ているから、あんな風になりたいから」といいうようにインフルエンサーとファッションは相性がいい。インフルエンサーの力もあり純粋にファッションの魅力とは言い切れないがファッション業界が盛り上がってほしい。入口は何であれ世間にファッションの魅力がより伝わってほしいと思う。筆者の勝手な思い込みかもしれないが世間的に見てファッション業界はどこか下に見られている気がする。世間的に学歴が大きな指標となりえる中、ファッション業界は高い学歴を必要としないことが多く、収入が高いわけでもないためそう思う人がいることも分かるのだが、少しでも多くの人がファッション業界に憧れるような世の中になってほしい。その1つの間口としてインフルエンサーブランドという選択肢もあっていいと思う。ただその後はレア物やネームバリューに惑わされるのではなく、もう一歩踏み込んでファッションリテラシーも意識してほしい。そうすることでリテラシーのないものは淘汰され現在のファッション業界が抱える問題も解決に近づくと思う。少しの意識がこれからのファッション業界が輝くことに繋がるかもしれない。


*1・・・WWD https://www.wwdjapan.com/articles/1223580 より
*2・・・yutura https://ytranking.net/blog/archives/24841 より
*3・・・SHIPS公式サイト https://www.shipsltd.co.jp/pages/company.aspx より


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