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140字よりもすこしだけ長い、140字小説の書き方のお話。

 こちらは先日、Xにてポストした内容と(ほぼ)同一(すこし加筆修正)のものになります。

 どうも普段140字小説を書いている者です。久し振りにnoteを書いております。

 たまに140字小説の書き方を教えてください、と言われます。そう言われて、私はいつも、「分からない。私が知りたい」と答えることが多いです。冗談ではなく本心で、自分の書き方が正しいと思っておらず、いまも手探りです。

 ただ改めて自分の書き方、整理してみることにしてみました。


(心構え編)

1、140字小説は長い。

 短くしないと、削らないと、と思いながら書くと、結局じゃあ、もっと長い分量で小説書けばいい話じゃないか、となるので、決めたスタートからゴールへ向かって膨らませるイメージ。

 最初の段階で140字にきちんと収まるのが理想。

2、下手な鉄砲数撃ちゃ当たるが、自分の作品を下手な鉄砲と思うな。

 前提として、どんな理由で作品を書こうが自由です。自分の作品に辛辣であってもいいと思います。

 なので、これはあくまで私個人の心構えの話なのですが、もしかしたら140字小説は下手な鉄砲でも当たるタイプの創作かもしれません。ただ当たる当たらない関係なく、自分の作品を下手な鉄砲と思うと中々続かないし、続けるためにも、あまり自作に否定的になり過ぎないのが吉かな、と。いま自信がないという時は、「量を書いて、質を上げるのだ」と思うのだ。

3、アイディアは枯渇してからが勝負。

 これは先ほどのポストにも書いたのですが、私、現在4300本ほど140字小説を書いているのですが、一番つらかったのは、100話~200話の間。書きはじめる時なんて、わざわざアイディアが重視される(と思われている)ショートショートを選ぶくらいだから、ある程度、事前に自信のある複数のアイディアを持ってやってくる場合が多いと思います(違うのかなぁ……?)

 でも100話も書けば尽きます。勢いと一緒に尽きます。そこからは文章だったり、何気ない日常やちょっとした出来事の見方を変えてみたり、支えてくれる土台の大切に気付かされながら、色々試していく、粘っていく形に……小説って難しいね。

4、句読点は簡単に削るな。

 140字小説は長いに通ずる話ではありますが、140字を削って、なんとか収めようという考えになると、まず削ってしまいがちになるのが、句読点。 私も削っちゃうことはあります。だから偉そうには言えませんが、句読点だって大切な文字です。削り過ぎると、句読点くんが怒っちゃうぞ。

 そこよりも表現に見直すようにしています。父親を伝えるだけでも、「お父さん」「親父」「父」と色々な文字数の伝え方があります。

5、読んだひとの解釈は多様です。

 作者は作品を書く時に、自分なりの問いに対する答えを用意して書く場合が多いと思います。でも作者は読者ではないし、読者は作者ではないし、そもそも考え方はひとそれぞれ、良いじゃない、作者もこんな考え方があるんだ、って楽しめば……という心持ちでいつもいます。

 ただこの読まれ方をされたくないな、と思った時に、ある程度、答えを限定させる書き方をする時はあります。私の場合、創作系の時事ネタとか。意外と気を遣ってるのよ、あれ。

6、リアクションの数は過剰に気にし過ぎない。

 いいねの数とか気になりますよね。私も外に向かって発信している以上、やっぱり反応の量は気になったりします。貰えると大変嬉しいし、本当にありがたい。無関心でいるほうが難しい。ただあまり気にすると書けなくなります。リアクションの数はあくまで副次的なもの。

 実際の数の話で言うと、私、過去に書いた140字小説を再掲しているのですが、タイミングによってはいいねの数が当時といまで100倍くらい違ったりすることもあります。

 例えば、これ、とか。

 旧↓

 新↓

「気にし過ぎない、って簡単に言うけど、どうすりゃいいんだよ」というひともいますよね。私がやっていることだと、大きく反応があった次の作品はなるべくはやく書くように、とかやっていました。いまも結構やります。思いの外、反応があった時の後が、一番小説を書きにくくなる印象があるので。

(実作編)

1、スタートとゴールを決める。

 これは140字小説以外の小説でもやっていることですが、スタートとゴールを決めて、間を埋めるように書くことが多いです。仮にゴールが変わってしまったとしても、最初に決めておく。そして140字小説は起承転結の承転を抜いても、物語として成立するものが、私の中の理想。

 書いている中で、別の結末候補ができた時は、使わなかったほうの結末を逆算して、改めて物語を作る、なんていうこともたまに。そっちのほうが良い作品になったりするから不思議ですね。

2、ランダムに単語を回すサイトを頼る。 

 定期的に回して、色んな単語を目に入れるようにしています。とはいえ私は、お題をもとに作品を作るのが苦手なタイプなので、回してもすぐに三題噺を書くように物語を作れるわけではありません。その才能羨ましい、私にください……という戯言はさておき、ただとりあえず色んな単語を頭に入れておくと、後々、作品を書く上で結構便利。あぁそう言えば、あんな言葉あったなぁ、と。

3、ここまでは書かない、ここまではやらない、というラインを決める。

 もちろん書いてもいいし、やってもいい、と思います。ただ私がそれはしない、というラインを決めているだけ。反応を得やすい言葉や話題があります。どこまで書くか自分の中で明確なラインを引くようにしています。そこをこえると自分の中の際限がなくなる、と言い聞かせて。さっきの数字を気にし過ぎないにも繋がる、かもです。まず「小説を書いている」「面白いものを書くんだ」ということを意識する。反応が取れりゃなんでもいいや、とは思わないようにする。

4、日常のあらゆる物事の視点を変えてみる。

 これを一番大事にしてるかもしれません。 私が小説を好きになった理由に、『どこにでもある日常の見方を変えてみると、まったく新しい色が付く、いままで見ていた景色がまったく違って見える』というものがあります。私がミステリを読みはじめたきっかけ。斬新で独創的なアイディアも素敵ですが、私はどちらかと言えば、こちらに惹かれます。『新しい酒を古い革袋に入れる』と言いますか。

 日常に限らず、物語のよくある風景でもいいのですが、ちょっと視点をずらしただけで、魔法のように世界が一変する。例えば、なんでしょう、トラックに轢かれて異世界へ行った青年。その時、トラックの運転手は、トラックは何を考えたのか。残された側の人々は。そんなことを考えると、またひとつ新たな物語ができるかも……。

 何故トラックの話をしたか、と言うと↓

5、定期的な思考の整理。

 えぇっと、いまやってることです。たまに言葉にしておくと、意外と自分でも気付いてなかった自分に気付かされる、とか、そんな効果が。 私はいつも、明日……いや今日、何も書けなくなるかもしれない、と思いながらずっと書いてきましたが、気付いたら3年近く、4000話以上書いていました。

 いまも手探りで、書けなくなる不安を覚えながら、そして裏では中々進まない長編に四苦八苦しながら、なんとか続いています。何気なくはじめたものですが、たまーに思うのです、もっと140字小説を書くひとが増えたらなぁ、って。


 こんなの求めてないよ、という向きもあるかもしれませんが、たまには許してにゃー、ということで。 この長話はこれで締めです。 (こんなの書いて、次の140字小説書けるかな……)