りょう 読書感想文

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最近の記事

読書感想文『百年法』上

【百年法 上】 ・山田風太郎賞 ・山本周五郎賞 ・2013年本屋大賞第9位 不老技術“HAVI”を導入した日本共和国の話 HAVIを受けたものは百年後には死ななければならないという通称「百年法」と向き合うことになった者たちは、それぞれの立場や思いによって行動を起こす。 読めば人生が如何に『死ぬこと』が前提として成り立っているのかを思い知る。 HAVIを受けるとそこから体の老化は止まる。それは即ち、百年後も若いまま死ななければならないことを意味する。 この設定から感

    • 読書感想文 『変な家』

      【変な家】 あっという間に読めて、シンプルに面白い。 変な間取り図のカラクリと、その家にまつわる住人の真相に迫る本作は、260頁弱という手軽さと間取り図が随所に挿入されている事、基本が会話による展開などで読みやすく、引き込まれたらすぐに読み終わってしまう。 かと言って、消化不良さが少ないのは後半の展開のお陰だろう。前半は変な間取り図自体の不可解さの解明が主となるが、読みどころは後半のその家に住んでいる住人を巡る真相を追求していく展開だ。 おすすめは単行本より設計士栗原

      • 読書感想文 『死んだ山田と教室』

        【死んだ山田と教室】 第65回メフィスト賞受賞 夏休みが終わる直前、人気者の山田が死んだ。その山田は教室のスピーカーに憑依したようだ。 スピーカーから聞こえる山田とクラスメートたちの会話は思わず笑ってしまうものが多く、その場面を外で読んでなくてよかったと心から思った。くだらない面白さほどシンプルに面白い。 各章毎に月日は流れていき、成長することのない山田と、徐々に卒業とその先の進路へ向かっていく同級生との隔たりは心痛むところも多い。それだけでなく、普段意識はあるけれど

        • 読書感想文 『告白撃』

          【告白撃】 完全に大人向けスパイシーな青春。しかも、同世代すぎてのめり込んだ。こんな青春の当事者になったらメンタルもたない。それだけ、大人の青春は甘酸っぱいでは済まされない大人の味。 千鶴は親友の男に自分を諦めさせるため、告白されて失恋させることを計画する。 コレだけでこの物語の突拍子の無さが窺える。 でも、その計画を遂行するにつれ、恋や友情がどれだけ難しいバランスの上に成り立っているのかを知る。 特に後半は人物たちの感情が揺さぶられまくって、読んでいるこっちもとても平

        読書感想文『百年法』上

          読書感想文 『アルジャーノンに花束を』

          【アルジャーノンに花束を】 ・ヒューゴー賞 ・ネビュラ賞 32歳になっても幼児なみの知能しかないチャーリイが手術を受け知能が向上していく。 これだけを感想の冒頭に持ってくると、頭が良くなってハッピーエンドだけな話。しかし、急激な変化に翻弄されるチャーリイをみているとフィクションだと分かっていても胸が締め付けられる思いであった。 人間が年を経て成長していく、もとい知能が上がっていくのは自然な速度である。そして、知能の向上の同じく心も成長していくのが一般的だろう。もしこれ

          読書感想文 『アルジャーノンに花束を』

          読書感想文 『煙鳥怪奇録 忌集落』

          【煙鳥怪奇録 忌集落】 実話怪談にはフィクションの怪談とは違う怖さがある。 本作では会津地方の取材で語られる「土地遣い」が興味深い。 帯にある通り、忌み地を操るという怪談であるが、そもそもが忌み地を操ろうとすること自体が相当なタブーを犯している感があり怖い。そんなことしたら確実に自分自身が呪われそうである。いや、もしかしたら、操ろうとすること自体が既に、もう呪われている結果なのかもしれない。 取材形式の怪談の怖さのひとつとして、語り手(取材対象)がどの程度情報を開示し

          読書感想文 『煙鳥怪奇録 忌集落』

          読書感想文 『君が手にするはずだった黄金について』

          【君が手にするはずだった黄金について】 ・2024年本屋大賞第10位 これはフィクションだと頭では理解していても、本当はエッセイなのでは??と思ってしまった。むしろ、「最後の受賞エッセイだけがフィクションです。」と言われても納得してしまいそう。間違いないのは、この小説の内容もリアルの捉え方についても、判断するのは自分自身であることかな。 どの短編もシチュエーションが小説としてリアルというより生々しく、語り手の『僕』が感じるモヤモヤ感のようなものがダイレクトに伝わってくる

          読書感想文 『君が手にするはずだった黄金について』

          読書感想文 『斬首の森』

          【斬首の森】 今回も期待を裏切らない読後の後味の悪さ。 ある異様な団体の研修合宿から逃げ出した先は斬首の森だった。果たして、より恐ろしいのは「研修」と「森」どちらだっだろう。 森から命がけで抜け出してきた女の証言によって、徐々に斬首の森の恐ろしさが浮き彫りなっていくドキドキというかワクワクというか、どんな森なのかということとどうやってこの女が生きて脱出できたのかということが明らかになっていくのが本作の醍醐味。 最後は冒頭で述べたように、澤村伊智さんの代名詞とも言える(

          読書感想文 『斬首の森』

          読書感想文 『レーエンデ国物語 夜明け前』 

          【レーエンデ国物語 夜明け前】 2024年本屋大賞 第5位 レーエンデ国物語の第4巻 異母兄妹のレオナルドとルクレツィア。間違いなくふたりは目指すところは同じく「レーエンデの自由」であるが、それを成し遂げるための正義は真逆と言ってよい方法をとる。 もし正義に色があるのなら、ふたりの正義は真逆の色をしているのだろう。だけど、相反する色であろうと、ふたりが描くのは「レーエンデの自由」なのである。どちらの色が欠けてもこの先にレーエンデの自由は無かっただろう。 読み終わって言え

          読書感想文 『レーエンデ国物語 夜明け前』 

          読書感想文『成瀬は信じた道をいく』

          【成瀬は信じた道をいく】 「何になるかより、何をやるかのほうが大事だと思っている」という成瀬の言葉が何よりも成瀬感あった。そして、そんなの分かっていると思っても、やるのは簡単ではないからこそ、成瀬の強さがカッコよい。 前作の「成瀬は天下を取りにいく」よりも直截的に、成瀬が周囲に及ぼす影響力が分かりやすく感じた続編であったと思う。 『やめたいクレーマー』の章では、普通の人であれば受け取り方が難しいお客様の意見を成瀬らしい解釈で対応しているシーンがスカッとして気持ちいい。そ

          読書感想文『成瀬は信じた道をいく』

          読書感想文『成瀬は天下を取りにいく』

          【成瀬は天下を取りにいく】 ・2024年本屋大賞受賞作 個性が突き抜けている主人公は魅力的である。 ただし、成瀬あかりは天下を取りにいける魅力の持ち主である。この本を読んだことで、200年に及ぶであろう成瀬あかり史のほんの一時を見届けることができた。なぜ200年かは読んだ人なら分かるだろう。 性格を表現する言葉の一つに「真っ直ぐな性格」がある。成瀬あかりを表すなら、「真っ直ぐしか知らない性格」であろう。もし、そんな人が身近にいたらと思うと、ずっと見ていたくなってしまうだ

          読書感想文『成瀬は天下を取りにいく』

          読書感想文『スピン/spin第7号』

          【スピン/spin 第7号】 表紙に光り輝く「スピン」は、美箔ワタナベさんの箔押し。 写真だけでは伝えきれない、凹凸感、艶感、表紙の和紙のようなザラザラ感との対比はいつまでも見飽きない。触り飽きない。 インパクトが強かったのは、中村文則さんの「彼の左手は蛇」 蛇だけでも字面から禍々しさが伝わってくるのに、男の心の歪み方がまた悍ましかった。 恩田陸さんの「そして金魚鉢の溢れ出す午後に、」では「しししりとり」なるしりとりが出てきた。しから始まり、しで終わる言葉を続けていく、

          読書感想文『スピン/spin第7号』

          読書感想文 『ビブリア古書堂の事件手帖Ⅳ』

          【ビブリア古書堂の事件手帖Ⅳ】 今回は扉子栞子智恵子、3人3世代それぞれの17歳の物語。 鎌倉文庫という貸本屋と、夏目漱石の名著から3人が17歳の時の物語がひとつに繋がっていく。このシリーズを読み続けてきた人からすると結構豪華な一冊かも。 特に、智恵子や栞子は基本的に成人での物語だったので、過去編は新鮮であった。3人は、鋭い観察眼をしているところや本に対する好奇心とかは非常に似ているのだが(当たり前?)、同じ歳ということで比較できるのも楽しかった。どうやらそれぞれちょっ

          読書感想文 『ビブリア古書堂の事件手帖Ⅳ』

          読書感想文 『存在のすべてを』

          【存在のすべてを】 ・2024年本屋大賞ノミネート 物語は『二児同時誘拐』から幕を開ける。 新聞記者の男と、誘拐された児童と接点のある女の2視点から徐々に真実が明かされていくのだが、この物語は事件の真相に迫る、ただの誘拐犯罪小説では到底収まりきらない。 男は誘拐事件の視点から、女は絵画の視点からそれぞれ物語は進んでいく。読者からすればこの2つがどのように繋がる或いは交差するのかを楽しみながら読んでいくだろう。しかし、こんなラストを予想できる人がどれだけいるだろう。

          読書感想文 『存在のすべてを』

          読書感想文 『ガニメデの優しい巨人』

          【ガニメデの優しい巨人】 『星を継ぐもの』シリーズ第2部 2500年前のガニメアン宇宙船が太陽系に帰還し、人間と邂逅することで、第1部で謎に包まれていたところが解明されていく第2部。 タイトルにある通り、ガニメデの巨人(ガニメアン)は優しい異星人だった。と言うより、優しすぎて人間の暴力性がよく分かった。作中でもガニメアンは地球を恐れている。しかし、ハント、ダンチェッカーたちがガニメアンが以前地球に来た時に何を企み、どんなことをしたのかを推察していくと意外な過去が浮かび上

          読書感想文 『ガニメデの優しい巨人』

          読書感想文 『ツバキ文具店』

          【ツバキ文具店】 ・2017年本屋大賞第4位 ぽっぽちゃんは文具店を営みながら代筆業をしている。 彼女のもとには老若男女問わず様々な人から代筆依頼が舞い込んでくる。ぽっぽちゃんが依頼に対してどのように代筆したのかは読んでのお楽しみ。そこには日常に溢れている、人工的な文字にはない感動が待ち受ける。 手紙の文字には、いくらフォントを換えようと電子の文字には決して真似できない、書き手(依頼主)の表情が存在する。ぽっぽちゃんは依頼主の言葉に表情を与える才能があって、それはただ字

          読書感想文 『ツバキ文具店』