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隔世の感

つい先日『パスト ライブス/再会』という話題の韓国映画を観ました。24年ぶりに再会した幼なじみの男女の7日間を描いたラブストーリー。ラブストーリーといってもあまい要素は皆無に等しく、あじわいある大人な映画でしたね。

この映画を観て思い出したのは20歳で知り合って、30歳まで連絡を取り合っていた韓国人女性のこと。そのあいだ1年くらいは日本と韓国で遠距離で付き合い、その前後も継続して連絡を取り合っていました。

そして30歳くらいのときから連絡も途絶えていつしか忘れてしまいました。そんな彼女から昨年15年ぶりにメールで連絡が来たんですよね。

最初は「元気にやってる?」というトーンで、こちらも「おお、なつかしいなー」くらいで連絡を交えていたのですが

やがて連絡を重ねてつつ、おたがいの近況を知るうちに隔世の感が深まっていきました。

というのも写真で見る現在の彼女が美貌や経済力、社会的な地位、すべての面においてパワーアップしているのです。なにもかも。彼女の年齢は44歳。

そうセレブなんです。自身が設計したという釜山の家を写真で見せてくれました。スタイリッシュな落ち着きのある自宅できわめてセンスがいい。羽振りがよさそうです。

子どもは小学生が二人。本人はアートスクールの先生をやっているようで、なにもかもが順風満帆。

いやもういいます!ズバリいうと、なにもかもが私と逆転しているのです!

それでいて決して鼻にかけているかんじではありません。たまたま話の流れで彼女の家や本人の写真を見せる流れになっただけで、性格はいたって穏やかな。。はず。

そもそも彼女とはインドのバラナシという街にあるドミトリーで知り合いました。おたがい大学生でしたし子どもみたいでした。意気投合してその後、カジュラホやサーンチという街をともに旅しました。その後おたがい日本や韓国を行ったり来たりするようになります。

そのころは私もまあ自分でいうのはなんですが、、前途有望な若者でした。そう、スポーツも勉強もルックもすべてのスペックが秀でていた(いや秀でていると勘違いしていた)のです。てへ

また20年以上前はまだ韓国の物価も安く、日本も技術力からくる経済力を残していたことから、どちらかというと彼女と会うと、カメラ付き携帯を見せてあげたり、ごはんをごちそうしたりと、なんとなしの優位性があったのは否めません。

彼女も当時は中流家庭といえども、三人兄弟でそれなりにお金の面は苦労してそうでした。旅費も日本と韓国では物価にまだ差があったので、旅先ではいつも経済的な面で負担になってる感もありました。

しかし今はどうでしょう。

彼女は中年の44歳を迎え、豪邸に住むセレブで美しい身なりをしています。美容や整形に存分にお金をかける余裕がありそうです。あと驚いたのが英語がとても上達していました。スピーキングもリスニングも。この15年で英語を話す土壌にも恵まれたのでしょう。

一方でわたしは中年の45を迎え、中古の団地に賃貸で住みメタボに悩まされています。美容や体型維持にお金をかけるほとの余裕がなく四苦八苦しています。あと驚くほど英語力が下がりました。スピーキングもリスニングも。この15年で英語を話す土壌も失われていました。

この対比がまさにいまの韓国と日本の状況を体現しているようです。

まさに隔世の感。おおお、感慨深いです。なにも私が国を体現するとは。そんな今わたしができることといえば、、、精一杯加工した自撮り写真を彼女に送る程度です。いや、これはもはや自分じゃないぞ。。

この格差。。

うん、感慨深い。

いまわたしはしっかり噛みしめています。そう、しっかりと最後の最後までガムをかむようにしっかりと噛みしめているのです。

味がせずともかみしめています。この格差による滑稽さをかみしめているのです。うまく表現できませんが、そこには不思議と落胆はありません。むしろ喜びすら含まれているのです。

そんなに嫌な感じがしないのです。わたしはわたしで自身の価値観を見つけて、それなりに楽しく暮らしています。経済的にも豊かではありませんが貧しくもありません。私生活もここではネタにはしていますが、まあ気楽に楽しく生きています。

そして彼女も彼女で楽しく暮らしているようです。きっとおたがいだれと結婚してもそれなりにしあわせになれたんじゃないでしょうか。それでいいんだと思います。

わたしを通りすぎていった人たち。みんなそれなりに楽しく暮らしていてほしいと願います。

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