「和賀英良」獄中からの手紙(40) 紙吹雪の女
―理恵子の役割―
小田急線の百合ヶ丘駅に近い高木理恵子の家は、踏切の音がはっきりと聞こえるほど線路の近くにあって、築四十年あまりの西日が当たる古いモルタル壁のアパートだった。
蒲田の操車場近くで盗んだ自転車で、百合ヶ丘まで二時間ほど走った和賀は、近くに自転車を打ち捨てて、錆びた鉄製の階段を上り二階にある理恵子の部屋に転がり込んだ。
途中で警官に出くわさなかったのは幸運だった。三木を始末したという興奮はとっくに冷め、自転車を必死に漕いでいるうちにその高揚感は疲労へと代わっ