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恋愛を素晴らしいと思える日~鈴木涼美『YUKARI』を読む~

「日本人、結婚好き過ぎんのよ。」
そう喋っていた我が親友は、最近唐突に彼女が出来た。フリーである時は「恋人が途切れないのはむしろ悪いこと」「彼女がいないこの2年ほど、自分はとても調子がいい」などと語っていた彼も、やはり唐突に目の前に現れた相性の良さそうな女性に知らぬ間に惹かれていたということだ。彼は「決して自分が惚れているわけではない」という点を強調しているが、彼自身が惚れた腫れたくらいの不合理かつ強い理由が無いと付き合わないような人間であることも、なんとなく付き合いの長さゆえ理解できてしまう。

自分の中では、誰かを親友と呼ぶ時の共通点は「意思と思考が明確にあり、それが自分のものとは異なるが、それでも居心地がいいやつら。」ということで、幸いにも親友と呼べる人は少なくない。今回の彼もそのうちの一人なのだが、いやはや、そんな彼をサクッと彼氏彼女の関係に落としこめてしまう恋愛の理不尽さたるや、そして強さたるや。

恋愛と言えば、人の数だけ考えやイメージがあるものだけど、自分自身はどうかと言うと、やはり作家による影響がとても大きい。鈴木涼美さんはそんな作家のうちの1人だ。

自分の20代後半から、女性関係や恋愛に対する考え方で強く生きてこれたのは、鈴木涼美さんと原カントクさんのPodcast『恋する女のロマンス食堂「鈴木涼美のBISTRO LOVIN」』に巡り会えたのが大きかったと思っている。

「いや、なんで野郎のお前がそんなもん聴いとるんじゃ?!」とリアルな友人は言うかもしれないが、あの作家の道尾秀介さんだって本Podcastの大ファンで、たまにゲスト出演までしてるんだから、おかしな事は何もない。

何が気に入っているのかというと、やはりこれは鈴木涼美さんの男女の関係や女性の心境についての新鮮な意見だろう。

これだけスマホとかLINEとか、相手が何をしてるか気になることが多いんだから、浮気とかを見つけないようにする方がいいと思うんです。

いつだったか、上のような事をラジオ内で涼美さんが言っていて「いや、やっぱりそういう努力必要だよな!?」となった自分は、仕事帰りに一目散に本屋に駆け込み、鈴木涼美さんの『愛と子宮に花束を』と『身体を売ったらサヨウナラ』を購入した。それ以降、新刊を待ち遠しく思っている。

ちなみに言うと、この数日前に「便利なツールが増えた分、スマホとかLINEとか、相手の行動が気にならないような努力をした方が良くない?」とおんなじような自論を女性の知り合いに言ったのだが、大ブーイングを喰らっており、本podcastは「なんか俺間違ってるかな?」と疑問に思ってるところへの天啓だった。

さて、今回読んだYUKARIだが、ちょうどこの前出た鈴木涼美さんの新刊である。

ホステスだった女性が、かつて関わりのあった男性への手紙を認めるかたちで物語が進んでいくが、夜の蝶として歌舞伎町を舞うことも、結婚して一般人となることも、どちらをも否定も肯定もせずに、また男性一人一人に向ける顔(これは手紙の文面から感じることができる。)がそれぞれ違うことすらも美しく書かれている。

恋愛に対して、考えや語る言葉が多くなるほど、普通に気持ちを盛り上げることが難しくなってくるというのは自分の持論だが、それでも今後また夢中になれる恋愛があるなら、それは特別なことだという希望もまだ捨ててはいない。
その時はこのYUKARIのように、美しく緩やかな言葉で気持ちを綴れるようにいれたらいいなと、男ながら思うのであった。

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