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本は走るように読む

読むことと走ることは似ている。その類似性から、速く、たくさん本を読むコツを紹介したい。

はじめに

ここ3年、本をたくさん読むようになった。その前も読んでいたが明確に目標を決めて意識的に読むようになった。
たまたまだけれど、同じタイミングで走るようになった。こちらも、目標を決めて、意識的に。マラソンからウルトラマラソンへと速く・たくさん走れるようトレーニングをするようになった。
そして、旅。旅は昔から好きだ。毎月どこかに旅に行かないとムズムズしてくる。
そんなわけで、最近、趣味は本・走・旅と言っている。

読むことと走ること、読むことと旅すること、は似ているところがある。走るように読むことを目的型読書、旅するように読むことを発見型読書と言ってもよい。
ここでは読むことのうち、楽しむためというよりも、目的を持って速く・たくさん読むための目的型読書について話をすすめる。(もちろんそれはそれで楽しいのだけれど)。 小説や詩を味わうように読むことはここでは話さない。

たくさん走って読むうちにマラソンと目的型読書の類似性が面白いと思うようになったので紹介したい。
これはあくまでも僕のスタイルなので、みんなこう読むべしという意味ではないし、そもそもある程度本を読む人は、多かれ少なかれこういったことをしていると思う。

なお、僕の読書法は速読の師匠である寺田先生のメソッドを使っている。速読の本は色々読んだが、その中で寺田先生は間違いなく本物だと思う。(4年ほど前に講習にも通った。おすすめです。)

さて、前置きはこれくらいにして、走ることと読むことの類似性をハウツー的に紹介する。
1) 計画をたてる = 本を選ぶ
2) ペースをコントロールする
3) コースを知る = 3回読む
4) ちゃんとしたフォームで
5) 淡々とペースを刻む


1) 計画をたてる = 本を選ぶ

走るときにはまず計画をたてる。目標はなんなのか、そのためにどんなコースをどれくらいのペースで走るか。
読書も同じで、まずは読む本を決め、なぜその本を読むのかを決める。
僕は時期によってテーマを決めて、そのテーマで古典と呼ばれる思考の源流を5-10冊くらい探し出しAmazonで買っている。
2018年は年間100冊読むことを目標にし、2019年は質を上げて古典を50冊読むことを目標にした。
具体的には、原則として50年以上前の本しか読まない。AIの技術書などを除いて、乱暴に言ってしまえば50年後に読まれなくなる本は読まなくても困らないと僕は思っている。

ちょっと話が逸れるがなぜこんなヘンテコなルールを作ったのか。
新入社員時代に僕はほかの誰もがするようにビジネス書を読み漁った。話題の本は殆ど読んだと思う。そうしているうちに「なんかこれ、この前も読んだな」という感覚を覚えるようになった。
それもそのはずで、自己啓発は遡ると7つの習慣->ナポレオン・ヒル->ベンジャミン・フランクリンに行きつくし、マネジメントはドラッカーに行き当たる。さらにいいとも形式で遡るとみんなプラトンに行きつく。
こういう古典は古臭いし、読みにくい。結果として多くの人が古典の焼き直しの似たような本を何十冊も読むことになる。(自分がそうだった)
それならば気合を入れて源流たる古典を1冊読んでしまったほうが絶対早い。
そう確信した僕はなるべく古臭い本を読むことにした。それでも本屋に立ち寄ると押し寄せる新しい本の好奇心と強迫観念を断ち切るため、2019年は原則として50年より古い本しか読まない自分ルールを作った。

写真が僕が直近1年で読んだ本である。テーマとしては上から哲学、ギリシャ/ローマ神話、近代哲学、歴史、科学。大体2-3ヶ月で1テーマ。これから読む予定のテーマは現代哲学、経済、宗教、日本、中国で、最後に文学。1年先くらいまで読書スケジュールは決まっている。

ちなみに本を選ぶときのはじまりは複数のブックガイドを組み合わせて使っている。マニュアル男は面白みがないが、基本がない男はもっと駄目である。(別に男だけではないか)
この辺のブックガイドを手に取ると、そのリストの重複ぶりと、自分が読んだことのある本の少なさに驚くことになる。
世界中のみんなが時代を越えて良いと言っている本は実はそんなに数は多くないのだ。だったらそれくらいは読んでみたいものである。

歴史を変えた100冊の本

教養のためのブックガイド

必読書150

2)ペースをコントロールする

走る人ならわかると思うが、マラソンは自分のペースを知ってコントロールできないと速く遠く走ることはできない
本を読むことも同じだと思う。あなたは自分の読書ペースを知っているだろうか。
文庫は大体41文字x18行≒700文字/頁。僕は読みやすい本なら3頁/分 = 2,000文字/分、難しい本だとその半分くらいのペースで読む。 (このスピードは倍くらいにしたいと思ってトレーニングしている)
そうすると大体の本は1冊2時間くらいで読める。1日1時間読書時間を確保すれば難しい本でも100頁ずつ読める。こうやって考えると自ずとスケジュールが立つ。

ところで、下の図にあるように、読書の理解度は速度に非連続的に反比例する。(これは経験論なので学術的根拠はない。あったら教えてもらいたい。)

例えば、1分に1頁読もうが3頁読もうがそんなに理解度に差は出ない。ギアーみたいなもので、スピードを徐々に上げていくと理解度がかくん、と下がるポイントが出てくる。この、"スピードのギア"を意識していると”無駄にゆっくり読む”ことがなくなる。そして、ペースを使い分けることができる計測されないものは、改善されない。ペースを知ることで徐々に速度を早めることもできる。

ちなみに左の方で理解度が下がっているのは、あんまりじっくり読みすぎると時間がかかって逆に理解度が下げってしまうからである。「本は時間があるときに、読めるところまで読む。読むときはじっくり読む。結果、1冊の本をいつまでもダラダラ読んでしまい、気づくと前と同じところを読んでいたりする。読み終わることにははじめの方に書いてあったことはおろか、そもそもなんのために読んでいたのかも忘れてしまう」こんな経験は誰しもあると思う。ペースをコントロールできればこういうことにはならない。

3)コースを知る = 3回読む

走るときはまずコースを知ることが大切だ。どれくらいの距離なのか、アップダウンはどこなのか。どこがハイライトなのか。
コースを知らずに走るのは精神衛生上よろしくない。どこを走っているのか、あとどれくらいでなにがあるのかわからないで走っているようなものだ。読むことも同じである。
僕は、同じ本を3回読む。気に入った本は3回読む、という意味ではない。読むと決めた本は概ね3回、ペースを変えて読む。

①1周目は100頁10分、理解度25%くらいで読む。どんな構造でどんなマナーで書かれている本なのかを掴む。このときに気になった箇所はペンを入れたりする。目次・はじめに・おわりに・解説はある程度じっくり読む。時代背景や歴史的な意味がわかるし、構造を整理してくれている事が多いためである。どんな本でも1時間くらいあればなんとなく様子がわかってくる。本によってはこれだけで十分と感じ、止めることもある。(古典だと少ないが)

②2周目は100頁30分-1時間、理解度80%くらいで読む。ラインを引いたり書き込みをしたりする。(よっぽど簡単な本でない限り理解度100%は難しいし、僕は割り切って読むこととしている。80%を100%にするより、他の本を読んだほうがよい)

③3周目は総ざらいの意味を込めて100頁5分くらい。ここまで来ると勝手知ったるコースだ。流れも構造も自分にとっての洞察も整理できる。今後の課題も見つかる。
読後に松岡正剛の千夜千冊を読んだりすると目眩く知の世界にトリップすることができる。

一般的には②しかやらないと思うが一度①③を試してみてほしい。難しい本であればあるほど、①なしで読み解くのは至難の技だと思う。

4)ちゃんとしたフォームで

ソファーやベッドに寝転びながら本を読んでいる人をよく見かける。気晴らしに読む雑誌や漫画ならいざしらず、目的型読書の本をこれで読むのは無謀だと思う。
サンダルをはいてポケットに手を突っ込みながら走るようなものである。
本を読むのはかなり頭と眼を使う。ハイペースで読む場合はなおさらである。

(『速習!フォーカス・リーディング講座』より)
椅子に浅く腰をかけ、背筋を伸ばし、呼吸は深く鼻で行い、本はできれば眼の高さに持ってくる。(この”眼の高さに持ってくる”がやってみると結構難しくてクッションを使ったりしている) 立って読むのも実は結構よい、特に眠くなってしまうときなど。(騙されたと思って試してみて欲しい。僕の友人は立ちながら本を読む奇怪な姿を目撃している)。
そして一番重要なのは眼の使い方である。これが一番難しくて、ここには書ききれない。寺田先生の本を読んで欲しい。基本的な考え方は自分の視点と視野を意識しながら眼を動かすことでペースと理解度をコントロールする。
上の①②③で眼の使い方が異なる。それぞれの動かし方を体得するにはある程度の練習が必要となる。
①③では視点を頁単位で動かしながら広めの視野でざっくりスキャンしていく。(スキャナーのイメージ)
②では、視点を行単位で動かしながらなるべく視点の移動距離を短くしつつ見ていく。

5)淡々とペースを刻む

コースを決め、ペースを決め、コースを知り、フォームを整えたらあとは淡々と走るだけである。一番大事なのはきついときもペースを崩さないことである。決めたペースを守って足を一歩づつ淡々と進めれば、ゴールは少しずつ近づいてくる。きつくなったらまずは次の給水所までがんばることだけを考える、あと3kmで給水所、そこまではがんばろう。
僕が読むことと走ることが似ていると感じた一番大きな要素はこれである。読むときも淡々と頁を進めていく。1行1行積み重ねていく。だんだん頭や眼が疲れてくる。ペースが落ちてじっくり読みすぎてしまったり、あるいは速くなりすぎて理解度が下がったりする。フォームが崩れて眼の使い方が変わってきたりもする。補正をしながら淡々とペースを刻む。きつくなったら次の章まで。

というわけで、ここまで走ることと読むことの類似性を紹介してきた。
1)計画をたてる = 本を選ぶ
2)ペースをコントロールする
3)コースを知る = 3回読む
4)ちゃんとしたフォームで
5)淡々とペースを刻む

きっと走ることが好きな人は本を読むことも好きになれると思う。逆も然り。

今後は読んだ本の内容も紹介できればと思う。
コメントお待ちしております。

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