ファンベース

読書感想:ファンベース_佐藤尚之著

去年1年間は初めてweb広告の運用を行い、正に如何にCPA(1件当たりの獲得単価)を下げて新規顧客を獲得できるかの日々だった。その時、なんとなく感じてた違和感に対してのアンサーを得られた本。もちろん、web広告で、検索行動を起こしたユーザーや興味関心層への接触機会を持つことはサービスを知ってもらう上でとても大事なこと。でもその先でユーザーに満足してもらい、ファンにつなげていく施策とセットにしなければ資産化しない。タイトルの通りこの本では、そんなファン化を促進し、長く愛されるブランドを作るための方法を提示してくれています。

なぜ今ファンベースが必然なのか?

本書の内容をざっくりまとめてみました。

▼ファンベースが必然な3つの理由:

①売り上げの大半を支えているのファン
→コアファン・ファンだけで売り上げの8~9割を支えている。
(もちろんサービス・会社によって比率は異なるもののパレートの法則はだいたい当たっている)

②社会の変化による、
 「いいもの作ってマス広告」の勝ちパターンの終焉
→1)少子高齢化を伴う人口減少
 2)超成熟市場においては商品自体の差別化はすぐにパクられ、
   安価競争に巻き込まれる
 3)情報過多社会において、一過性の広告の影響力がダウン

③ファンが新たなファンをつくる

→少数のファンからでも「類友の連鎖」で広がり、その効力は絶大

読んでみると、確かに!と思う内容ばかり。(詳細は本書でぜひ・・!)toCのサービスだけではなく、toBのサービスにも効力的だそう。取り組めていなかった担当者はやるっきゃない!のファンベース施策。ただ実際にはファンベース施策は中長期施策になるため、これまで短期施策で会社にコミットしていた体質の組織においては上司や経営人を巻き込み、目標設定を変える必要がある。

ファンベースの3つのアプローチ

本の中では各項目について具体的な施策や事例なども交えて説明されていてイメージしやすいです。またここで紹介する3つのアプローチは基本編で、本書内では、この上級施策として他に3つのアプローチ方法も説明されています。


▼ファンベースの3つのアプローチ

①「共感」を強くする

A:ファンの言葉を傾聴し、フォーカスする
B:ファンであることに自信を持ってもらう
C:ファンを喜ばせる。新規顧客より優先する

ファンの支持する価値をきちんと把握する重要性が語られていて、ファンミーティングの具体的な実施方法も勉強になる。あとは、だれが「ファン」なのかを見極めるという観点。(これは個人的には面白かった)本当のファンは支持する価値の未来も応援してくれるが、企業側の事情は一切お構いなしで現状に固執しているファンは本当のファンではない。また、意外にファンは自信がないので、自信を持ってもらうための仕掛け作りが重要というのも学びでした。

②「愛着」を強くする

D:商品にストーリーやドラマを纏わせる
E:ファンとの接点を大切にし、改善する
F:ファンが参加できる場を増やし、活気づける

その商品・ブランドを唯一無二の存在にさせる、「愛着」の育て方。
webなどで商品誕生ストーリーを公開しよう!というものから、「真実の瞬間」を呼ばれるリアルでの体験の重要さも語られている。

③「信頼」を強くする

G:それは誠実なやり方か、自分に問いかける
H:本業を細部まで店、丁寧に紹介する
I:社員の信頼を大切にし「最強のファン」にする

その「価値」の提供元である企業自体への評価を大事にしよう、というお話。正直、G・I付近の話が胸にグサグサと突き刺さる。特に社内でwebマーケ・新規獲得チームみたいな形で役割が独立している企業では、自身の成果と相反することをせずには守れない部分でもあったりするが、本質は絶対に本書の内容。これを守れないのであれば、その組織編成・評価の仕方自体を変えるべき。

低CPA×新規獲得のマーケ時代の終焉 

ちょっと長くなってきたのでこの辺りでまとめます。
低CPAでどれだけ多くの新規顧客・売上を獲得できたかの短期施策だけのマーケの時代は終焉を迎え、ファーストセッション後、ファンと作り上げていく中長期施策の重要性がより高まる時代をすでに迎えています。そのことにきちんと向き合えば効果的なマーケティング施策を積み上げていくことができるはず。

最後は、本書の中で一番心に残ったことばで締めくくります。

いったい世の中に、自分たちが愛している商品の価値を支持してくれる「ファン」を喜ばすことほど、楽しい仕事が他にあるだろうか。


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