ばばあもどきの日常と非日常 その7「差別のこと③」

こんにちは。
“ばばあもどき”のルル山ルル子(ルル)です。
女の容れ物(身体)に男の魂が宿っています。
「トランスジェンダー」とか「FTM」とかの呼称がどうもしっくり来ず、
普段は「見た目は女 中身はおっさん」と自己紹介をしています。

さて、今回は、私が受けた“最後の”大きな差別について書きます。
“最後の”というのは願望です。
もう生きている限りあんな怖い目には遭いたくないしあんな屈辱も受けたくない、
そんな思いから“最後の”と書いています。

希望に満ちた職場にて

30代の前半から後半にかけて、私にはある夢がありました。
それは、自分の店(飲食店)を開いて、食べに来てくれた人を全員 元気いっぱいにすることでした。
専門学校に通って調理師免許を取り、お金を貯め、人脈を広げ……
肝心の料理の腕がまだ心許なかった私に、私の夢に共感してくれる人が良い職場を紹介してくれました。
そこそこのお給料をいただいて働きながら、技術も知識も身に付けられて、人脈も広げられて(業者さんや同業者さんなど)、本当に良いところを紹介してもらったと感謝しながら毎日わくわくしていました。

入社する時に、役員の人から訊かれました:
若手が多いチームで新店舗を立ち上げるのと、売上が一番高い店で鬼軍曹にシゴいてもらうのと、ルル山さんはどっちが良い? と。
どっちも楽しそうだから迷ったのですが、新店舗の立ち上げは自分が店を出す時にどっちみちやれるのだから、今は厳しく鍛えてもらう方が良いかなと思い、後者を選びました。
40歳も近くなると、誰かに叱られたりすることも減ってきていたし、折角 新人として入るのだから、その“鬼軍曹”とやらに鍛えてもらおう、と思ったのです。
この時の選択が、大袈裟でなしに私の一生を左右することになるとは、この時の私は全く知りません。
“鬼軍曹”というのが単なる比喩ではなかったことも、この時は気付いていませんでした。

晴れて、売上が一番高い店舗で働きながら学ぶ毎日が始まりました。
今まで働いた飲食店の中で一番、料理の腕が磨けると思いました。
面倒見の良い料理長と、教育係として付いてくれた年若き先輩とに手取り足取り仕事を教えてもらいました。
でも、入って暫くした頃、料理長は部下に対して容赦なく暴力を振るう人だということが分かってきました。
ある日、先輩が料理長にタコ殴りにされているのを見ました。
その日は、予約が沢山ある忙しい日だったにも拘らず、料理長は殴るだけ殴ると家に帰ってしまいました。
残ったみんなで仕事を頑張りました。
その夜、殴られていた先輩が失踪しました。
入ったばかりの私に気さくに接してくれて優しかった先輩のことを、私はひたすら心配していました。
その先輩という“ターゲット”を失った料理長の次なる標的が私になるなんて、この時は知らなかったのです。

つづく

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