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野球場で冷凍みかんを売るために冷凍みかんのお兄ちゃんになったブランド戦略

このnoteは、学生時代に西武ドームのお茶屋さんでバイトしていた僕の冷凍みかんを売るべく、「冷凍みかんのお兄ちゃん」というブランドを界隈で獲得し、当時の冷凍みかん売り上げ記録を作ったお話。
涙なくしては語れない(?)、本当にあった負けられないシーズンを記します。

球場の売り子は歩合制

野球の試合で売り歩いているビールの売り子さんはよく目にすると思うのですが、実際に球場にいる売り子はビールだけでなく、さまざまな商品を担いで売り歩いています。

  • 球場で売り子から買えるもの(例)
    ・ビール
    ・酎ハイ
    ・お茶/水
    ・ポップコーン
    ・ホットドック
    ・ソフトドリンク
    ・おにぎり
    ・スナック菓子
    ・冷凍みかん←今日はこの話
    など

そしてそれぞれに歩合が決まっていて、1つ売るごとに最低時給に足されるのが売り子の給与システムなのです。
つまり、売れる子は青天井、売れない子は地獄。そんな世界です。

なぜ冷凍みかん!?

数ある商品の中でなぜ冷凍みかんなのか….
前述した通り、売り子の給料は基本給+歩合になっており、その中でも冷凍みかんの歩合はめちゃくちゃ高かったのです。
お茶1本定価¥300→歩合¥15に対して冷凍みかん定価¥300→歩合¥30という具合でした。
そして、前提条件として基本的に男の子の売り子は女の子に比べて売れません。
女の子がお茶を爆売りするせいで男の子の売り子からはほとんどお茶が売れず、、歩合も獲得できないという地獄のような日々。
しかし夏になると、あるアイテムが追加されるのです。
それが、冷凍みかん。
なぜか女の子からお茶は売れるが冷凍みかんが売れない…一番歩合のいい商品がなかなか売れないのにはきっと理由があるはず!
と思い立った僕はお客さんの目線と購入するものに着目してみたところ、どうやら女の子には固定客が存在し、その固定客を中心にしてお茶が売れていることに気がつきました。
つまり、当店の女の子の売り子=お茶を売っている人という強固なブランドが根付いており、そっとやちょっとじゃ勝つことができないという事実があったのです。
「じゃあ、冷凍みかん売りまくって歩合ガッポガッポもらってやる!」
と意気込んだのがきっかけでした。

ここからどうやって冷凍みかんを売ってきたのかをつらつらと書いていきます。

冷凍みかんを売る戦略①TTP

まず、冷凍みかんのお兄ちゃんブランドを獲得するために始めたのは、【売れている売り子の観察】でした。
TTPという言葉は有名ですよね。そう、「徹底的にパクる」。
というわけで観察する日々を始めた僕は、売れている売り子の特徴に気がつきました。
それは

  • 愛嬌がいい

  • 売り子衣装がとにかく似合っている

  • 移動スピード速い

  • 外野席にほとんど行かない

  • 内野指定席に固定客がいる

ということです。
愛嬌は急につけられるわけもなく、男の子用の売り子衣装は普通を極めていたので却下。その他は勝ち筋があるかもしれない!と睨んだ若かりし頃の僕は早速TTPを実行したのでした。

冷凍みかんを売る戦略②狙いはソフトバンクホークス

なぜソフトバンクホークスだったのか、というとなぜか僕のことを認知してくれている観客の方が多かったから。
キャップをかぶって売り子仕事をしていたのですが、角度によっては日ハムの陽岱鋼選手に似ていたらしくソフトバンクホークスの応援団の方から認知していただいておりました。
陽岱鋼選手の参考はコチラ↓

球場の売り子は、ホーム側とビジター側でシフト側変えれており、僕はビジター側で働いていたので対戦相手の応援団を固定客につける必要があったのです。(ホーム側だったらもっと楽だったかも。。。)
というわけでソフトバンクホークスの応援団を中心に球団ファン界隈で「西武ドームには陽岱鋼に似た冷凍みかんを売っているお兄ちゃんがいる」という噂が広がることになります。

冷凍みかんを売る戦略③内野指定席は激戦!まずは外野席を攻める

野球観戦に行ったことのある人ならご存知かもしれませんが、座る席によって入場チケットの価格は異なっています。
内野指定席はその中でも価格帯が高く、比較的お財布に余裕のあるファンの方々が多いため、売り子の多くは固定客を内野指定席に保有し、売り上げを立てていました。

そのためか内野指定席は激戦区。数多くの売り子がひしめき合い顧客を奪い合う戦場になっているのです。(大袈裟)

そんな血生臭いところで弱小売り子の僕が勝てる筋があるわけもなく、誰もいないブルーオーシャン?の外野席へせっせと売りに行くことにしたのです。
外野席には純粋に球団を応援したいファンが多くいるため、試合応援以外のことにお金を使わない傾向にありました。

冷凍みかんを売る戦略④夏が来る前に認知を獲得


外野席を主戦場に選んだ僕ですが、前述の通り外野席で売るにはなかなか難易度が高いことには変わらないのです。
しかし、ファンたちの財布を緩めるきっかけがありました。
そう、「暑さ」です。

夏の西武ドームは外気の影響をもろに受けて、灼熱と化します。そのタイミングを見計らって冷凍みかんの販売が始まる頃までにポップコーンとお茶を売りつつ、球場全体を歩きつつ、冷凍みかんを夏になったら僕が売り始めるという認知を広める活動をしていきました。
そして夏が到来する頃に冷凍みかんのポップを貼り付け闊歩するとポンポン売れていったことは語るまでもありません。

「冷凍みかんのお兄ちゃん!こっちこっち!」と呼ばれる

そうして冷凍みかんを売り続けていくと徐々に「冷凍みかんのお兄ちゃん」ブランドが認知され、
「あ!冷凍みかんのお兄ちゃんきた!こっちこっち〜!」
とお呼ばれされることが増えてきます。

そんな大声で呼ぶもんだから近くにいる席のお客さんにも広まりまた呼ばれる、その繰り返しで球場全体へと「冷凍みかんのお兄ちゃん」ブランドが広まっていきました。

認知→購買→リピート

が成立した瞬間でもありました。

最後に 冷凍みかんのお兄ちゃんになってみて

冷凍みかんが売れやすくなったのと、他の手持ち商品も売れるようになり、歩合の獲得が全体的に向上しました。

周りが売っているから自分も売れるわけではない、売れていないのには理由がある、そして売るまでにはある程度の準備が必要で勝手に売れるものはないことが冷凍みかんのお兄ちゃんになってわかったことです。

とまあ昔話ではありますがマーケティング・ブランド認知から購買・リピートまでを前知識ゼロでやっていた時代の備忘録でした。

最後まで読んでくれてありがとうございます。

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