法の下に生きる人間〈第38日〉

国民学校令が施行された年の1月、当時の文部省が、国民学校制について解説したものがある。

その一部を抜粋して紹介しよう。

【解説】
国民学校の本旨は、「皇國ノ道ニ則リテ国民ノ基礎的錬成」をなすに在るのであるから、その内容を如何に区分、錬成すべきかを考察するには、皇國民たるに必須不可欠の資質が何であるかを吟味することに出発しなければならない。
それらの資質としては大体次の五つを挙げることが出来る。 

一、国民精神を体認し、國體(=国体)に対する確乎たる信念を有し、皇國の使命に対する自覚を有してゐること 

二、日進の科学につきて一通りの認識を有し、生活を数理的科学的に処理し、創造し、以て国運の進展に貢献し得ること 

三、闊達剛健なる心身と献身奉公の実践力とを有してゐること 

四、高雅な情操と藝術的技能的な表現力を有し、国民生活を充実する力を有すること 

五、産業の国家的意義を明らかにし、勤労を愛好し、 職業報国の実践力を有してゐること

以上である。

なんとも格調高い五箇条であるが、①皇国の使命、②国運の進展、③献身奉公、④高雅な情操、⑤職業報国という言葉を見ても、国家に尽くせと言わんばかりの書きぶりである。

そして、当時の国民学校の教科と科目は、次のとおりに定められていた。

〈国民学校初等科〉
→今の小学校1〜6年生が学ぶことである。

国民科:修身・国語・国史・地埋 

理数科∶算術・理科 

体錬科∶武道・体操 

芸能科∶音楽・習字・図画・工作・裁縫(女)

今では、小学校の教科は、こんなふうに科目と厳密な区別はされておらず、国語・社会・算数・理科・音楽・図工・体育・家庭・道徳といったような教科名になっている。

体育に当たるのは「体錬科」であり、武道と体操に分かれている。

道徳に当たるのは「修身」、社会に当たるのは「国史」と「地理」。

家庭科は、今では小学校高学年で習うが、当時は男女共通の科目ではなく、女子のみが「裁縫」を習っていた。

上記のとおり、「皇国民たるに必須不可欠の資質」を身につけるために、五箇条のうちの上から四つ目までの目指すべき理想像を体現すべく、具体的に各教科と科目で指導するわけである。

五箇条最後の五番目は、職業報国の実践力を養うものであるが、これは国民学校初等科修了に引き続く高等科で、さらに「実業科」という教科が加わり、その科目は「農業」「工業」「商業」「水産」の4つに分けられていた。

これらの科目を、当時の13才と14才の少年少女が学ぶことになっていたのである。








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