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はるるん、海を渡る

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重症心身障害児として生まれ、盲目で車椅子が必須のハルが、家族とともにどこへでも出かけ、登山にも海にも行き、そうしてついに、家族と一緒に海を越えてインドにやってきた。インドでの彼女… もっと読む
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記事一覧

当たり前の、ウラガワで

当たり前の、ウラガワで

朝起きると、ブリキ缶のようにベコベコと音がした。
ような気がした。
疲れているのかもしれない。

あわててここ数日を振り返る。
少し前に、普段海外に住んでいる夫と次女が急に帰国して、10日ほど滞在した。滞在中、夫は私に代わってせっせと料理をし、家事も分担してくれた。分担というか、リモートワークをしながらほとんどの家事を夫が担って私はぐーたら。

それなのに疲れてるとかそんなわけあるかい、と思うでし

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「いや、血ぃ、出てるよ? なんで痛がったらあかんねん」

「いや、血ぃ、出てるよ? なんで痛がったらあかんねん」

2023年1月クール、「ブラッシュアップライフ」というドラマが話題になった。

主人公がよりよいものに生まれ変わるために人生を生き直すことでブラッシュアップし、徳を積むという話。主人公の職業は、最初は市役所職員だったのが、2周目の人生では薬剤師になり、3周目はテレビ局員、4周目は医者、そして5周目は…と物語が展開していく。

この「ブラッシュアップライフ」をみて、私ははて、と考えた。
人生ブラッシ

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はるるんの福祉クエスト

はるるんの福祉クエスト

はるるん、先日8歳の誕生日を迎えた。
誕生日前日深夜に帰国し、誕生日翌日にはまたフィリピンの自宅へ、という超強行スケジュールだったけれども家族みんなでお祝いすることができた。

彼女が生まれた8年前、出産した病院で何枚もの同意書にサインをしながら、先の未来なんてまるで思い描けずにいた。
ただ毎日やってくるトラブルをドッチボールのように体をくねらせてよけたり、時には正面から受け止めたりしながら、必死

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「特別支援教育」は特別なままなのか

「特別支援教育」は特別なままなのか

さて、前回の記事で、障害や特性に関係なく、地域の学校に多様な子どもたちが通えることの意義に触れて書いた。

はい。わかってます、あくまで理想です。
現状においては、校舎の問題、教育カリキュラムの問題、教員配置の問題など、ありとあらゆる点において、多様な子どもたちを地域の学校に受け入れる準備は到底十分とは言えない。だからこそ、現時点では副学籍制度に期待する部分が大きいのだけれど、副学籍制度においても

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「副籍」制度と公教育の本当の理想

「副籍」制度と公教育の本当の理想

学校ってなんだっけフィリピンで2年間学校に通っていなかった重症心身障害児の次女ハルは、小学2年生も終盤になって、日本の小学校に1日体験入学したわけだが、実はその少し前から、来年度以降の日本での就学について、教育委員会と相談を始めていた。

運動機能の発達も知的発達も生まれつき限られていたハルについて、学びについてもあまり期待していなかった。もちろんリハビリや療育を通じてトライしてみたことはあれど、

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はるるん、日本で学校に行く

はるるん、日本で学校に行く

2年3組質問タイムこれは、二学期の終業式前日、地域の小学校の2年3組でのやりとりである。

日本の小学校に体験入学夫とともにフィリピンに暮らし始めてまもなく2年の次女ハル。うまれつき肢体不自由で目が見えない。重い知的障害もあり、いわゆる重度心身障害児に分類される。

現在小学校2年生に該当するが、この2年、フィリピンで学校に通っていない。彼女が学校に毎日通う必要性を親の私達がそこまで感じていなかっ

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私は障害児であるハルのことをよく知っているけど、ハルじゃない障害児のことはよく知らない

私は障害児であるハルのことをよく知っているけど、ハルじゃない障害児のことはよく知らない

みなさん、どうも。こちらの世界ではお久しぶりです。
久々にいろいろな肩書や役割を取っ払って、ただの心の露出狂として、キーボードを叩いています。

最近は、わかりやすい文章の書き方とか、タイトルの付け方とか、SEOとかいろんな話があって。そのどれも大事な話だと頭ではわかるんだけど、あんまりワクワクしなくて、そうこうしているうちに、文章の書き方がよくわからなくなってしまいました。

構成を考えて書くと

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はるるんと、きょうだいと、社会

はるるんと、きょうだいと、社会

刺激の少ない家生活はるるんについて書きたいことが、最近、あまりなかった。

ロックダウン開始後、ハルが通っていた特別支援学校でもオンライン授業が始まったけれど、ハルはなかなかセッションの時間に合わわせて生活のリズムを調整できずにいた。先生や級友やネット環境などの様々な都合で予定通りに開始しないオンラインセッションは、むしろハルにとって負担になることも多く、まるまる夏休みだった6月の終わり、休み明け

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その時はその時だ

その時はその時だ

ロックダウン下のインドに残留3月23日からデリーが、次いで25日からインド全土がロックダウンに入り、駐在日本人の多くは、しばらく様子を見ていたと思う。ロックダウンが延長し、事態が長引く様子をみて、避難便で日本に帰国することに決めたという家族も多いかもしれない。感染の拡大ということもそうだけれど、おそらくいざというときの医療体制が日本の方が安心できる、というのが大きな理由なのだろう。

WHO勤務の

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インドでケトン食療法⑤はるるん、ケトン食をやめた?!

インドでケトン食療法⑤はるるん、ケトン食をやめた?!

お久しぶりのはるるんネタです。

思えば1年前の2月、どういうわけかはるるん、生まれて以来ずっと苦しみ続けていたはずのてんかん発作がまったく消え去ったのだった。あの笑顔にあふれたハルはいったい何だったのか・・・あれから1年経ったのが嘘のようである。

結局発作がなくなったのはほんの1ヶ月のみで、その後は発作は増える一方であり、5月からはケトン食療法をスタートさせた。

一旦は発作も減ったものの、そ

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インドでケトン食療法④シェファリとの関係崩壊!?

インドでケトン食療法④シェファリとの関係崩壊!?

はるるん、タマンナのセラピーが最近は順調だ。OT(作業療法士)で脳性麻痺の子のトレーニング経験豊富だったハルミットが産休に入って、PT(理学療法士)のシュウェッタが担当してくれるようになり、明らかに改善したと思う。最初はシュウェッタに対しても警戒していた私(美人だから…)だったけれど、彼女がトレーニングを担当するようになって、彼女は子供との接し方をよく知っている、ということがわかってきた。ハルが泣

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はるるん、ファッションショーに出る

はるるん、ファッションショーに出る

最初に話をもらったのは、1ヶ月以上前のこと。タマンナのディレクターの先生から突如呼び出しがかかり、「毎年恒例のタマンナとデザインカウンシル主催のファッションショーがあるが、ハルも出たいかどうか」と聞かれた。

ファッションショーとハルがにわかには結びつかなかった私は、どういう意味なのかすぐには理解できなかった。何かの関係でタマンナの関係者がファッションショーに招待されているだけなのだとしたら、日曜

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インドでケトン食療法③:ケトン比3:1の実践

インドでケトン食療法③:ケトン比3:1の実践

様々な薬を試してもてんかん発作の数が減らず、ケトン食療法を勧められたはるるん。インドの栄養士さんに相談しつつ、一時帰国前にと見切り発車的になんとなくケトン食療法をスタートした。

日本でケトン食療法を仕切り直し5月8日からなんちゃってケトン食療法を初めたはるるん。当初は3日ほどでケトン体が出だし、ケトン試験紙のチェック表で言うところの3+程度を保ち、発作の回数も減ったように見えた(はるるん、ケトン

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はるるん、新学期始まる

はるるん、新学期始まる

インドの学校は5月後半から6月いっばい夏休みのところが多く、ハルが通う特別支援学校、タマンナも長い夏休みがあった。

薬の調整のせいなのかなんなのか、5月からずっと昼間うとうとすることが続いていたハル。休みがちなまま長い夏休みに突入し、そのまま日本に一時帰国をして7月に入り、なんだかずいぶん久しぶりの登校となった。

当然というかなんというか、上の子達が通うインターナショナルスクール(寒いほど冷房

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