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【詭弁】本は高いけど実質無料

 本、高いですよね。でも、実質無料であると言えなくもないのです。
 まず、本の購入とその他の消費活動の違いについて考えて見ましょう。消費とは、品物を手に入れたりサービスを受ける対価としてお金を払う消費者の活動を指しています。
 人は日々、様々な消費を行っています。例えばレストランで食事をする、コンビニで弁当を買うなど。お金と食べ物を交換した上で、手に入った食べ物は消化してしまう。結果として手元にあったお金が無くなっているので、「消費」の例として分かりやすいと思います。美術館を見学するのに入館料を払う、電車に乗って運賃を払うなども、結果として持っていたお金が無くなっています。
 一方、本の購入はというと、持っていたお金が無くなるのは同じですが、交換で手に入れた本は手元に残ります。
 
 会社の経営を例にして見ましょう。A社は会社の資産である現金1000円から、200円を給料として従業員に支払いました。結果、資産1000円から費用として200円が引かれ、A社の資産は現金800円に減少しました。
 別日、A社は土地・建物500円相当を現金800円から購入しました。この結果、現金は300円に減少するものの、同時に土地・建物500円を取得しています。この時のA社の資産変動を確認すると、資産800円(現金800円)→資産800円(現金300円+土地・建物500円)となっており、資産の内訳が変化しただけで資産の総額は変わっていないことが確認できます。

 以上の例から、食事やサービスへの支払いは給料の支払いと同様に資産が減っているのに比べ、本の購入は土地・建物の取得のように、消費行動の結果支払った現金と等価の本を得ているため、所有資産が減っていないことが分かります。このことから、本は買っても実質無料だと言うことができます。

 では、食べ物や消耗品ではない、買った後手元に残るような品物は、本と同様に買っても資産が減らないのでしょうか。
 品物を買った場合について考えて見ます。電子レンジなどの電化製品を買ったとします。お金とレンジを交換し、手元にはレンジが残ります。以降、このレンジは自分の資産として自由に使うことができます。しかし、電子レンジの寿命は10年前後だと言われています。使用できる間は資産でも、壊れてしまえばゴミになり、価値は失われます。食べ物を食べたら無くなったように、電化製品もゆっくり消滅していくと言えます。
 機械以外にも、例えば生活には不可欠な衣料品も、何度も着て洗ってを繰り返すうちに着られなくなる時が来るので、やはり、いつかは消滅します。
 このように、大体の品物の購入も、長い目で見ると食事などと同じく手元から物がなくなる消費なのです。

 さて、購入して以降消滅することがない品物があるとすれば、その購入は資産の内訳が変動しただけ、つまりは資産の減らない買い物と言えそうです。そのような、例外的な品物の一つが本です。
 本は、大切に扱っても経年劣化はするでしょうが、書いてある文字を読むことができる、というのが本の本質であり、経年劣化だけで読めなくなることはまずありません。機械が動かなくなる、服が着られなくなるといったような本質的価値の消滅は起こりません。

 純金を投資目的で買うことがあるようですね。これもやはり、純金に価値の消滅が起こらないからこそ可能なことです。金と本は性質が同じ、と言えそうです。現金を純金に代える資産運用を行っても資産が減ったことにはなりませんよね?しかも、本は読むとおもしろいので金に比べ実用性もあります。
 本、いくら買っても資産が減らないってことは実質無料ってことだね!やったー!!!!本を買おう!!!!!!


きべん【詭弁・奇弁】本来つじつまの合わない事を強引に言いくるめようとする議論。
(『新明解国語辞典』第七版)

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