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「私の10冊」紹介

 私はTwitterに読んだ本の感想など投稿しているのですが、Twitterの読書界隈には、どうやら「#名刺代わりの小説10選」という文化があるようです。

 特に好きな小説を10作選ぶ。日によってちょっとずつ変わる気もするし、かなり難しい仕事になると思ったので今までやってませんでした。

 が、今日はちょっと暇でしょうがないので、ちょっと本棚を眺めてみて、10作選んでみることにしました。せっかくなので軽く紹介もしたいと思い、noteに記事を書きます。

1,野崎まど『[映]アムリタ』
 
芸大の映画サークルにて、天才の撮った最高の映画をめぐる話。
 優れた創作物は人の心を動かすものなのだから、それが最高の映画ともなれば……というSF。SFなのだが、コメディが多くてずっと面白く読める。会話でギャグをやり続けている。
 『舞面真面とお面の女』『死なない生徒殺人事件』『小説家の作り方』『パーフェクトフレンド』『2』と続くシリーズの第一作。
 新装版が発売された時に偶々本屋で積んであったのを見て買って、面白かったので続々出る新装版を全部買って読んだ。せっかくなので前の表紙のものも集めたいな~と思っているが、今のところそれは思うだけに留めている。

2,辻村深月『かがみの孤城』
 
不登校になってしまった中学生の女の子が自室の鏡を通り、同じような事情を抱えた仲間たちと出会う話。
 鏡の世界について、割と早い段階で気付いてしまったこともあったが、それを差し引いても抜群に面白かった。
 著者の小説、他に『ツナグ』とかも良かったが、私が一番好きなのは『かがみの孤城』だな~。

3,伊藤たかみ『ぎぶそん』
 友情と恋愛、王道の青春小説。
 仲間とバンド組む系青春小説なんてみんな好きなのだが、中でもこの本が好きだし、私の中で青春小説といえば『ぎぶそん』みたいに思っている。
 別の著者だが、最近読んだ『処女のまま死ぬやつなんていない、みんな世の中にやられちまうからな』とかもバンドをやる話でよかった。別にバンドじゃなくてもいい。どうやら私は、青春小説の、仲間が集まって何かするのが大好き。

4,東川篤哉『もう誘拐なんてしない』
 組長の娘を連れて逃げるたこ焼き屋サイドと追うヤクザサイドが交互に展開。裏表紙の内容解説で言うと「青春コメディ&本格ミステリ」。
 東川篤哉のコメディ色のあるミステリ、とても好き。多分最初に読んだのは『謎解きはディナーのあとで』だったと思うが、「烏賊川市」シリーズ、「鯉ヶ窪学園」シリーズも大好き。

5,森見登美彦『四畳半神話大系』
 京都の大学生のアホな話。大学入学時どのサークルに捕まるかによって運命は変わるか?というパラレルワールド。
 この本がめちゃくちゃ好きだったので、森見登美彦の書籍化している分の小説は多分全部読んでいる。森見登美彦作品は乱暴に分けると、コメディ色の強いものと幻想文学的なものがある。『きつねのはなし』『夜行』『熱帯』などは幻想文学の方で、何が起こっているのか分からなくなったりする。私が個人的に幻想文学が苦手なので結構分からなめだが、インタビューか何かで綾辻行人の『深泥丘奇談』のようなのを書こうとしたとあり、なるほどそれならちょっと分かるぞと思った。
 入りが『四畳半神話大系』なのもあってか私はコメディ色強めの方が好きだが、コメディの方でも幻想的なモチーフは含んでいる。『太陽の塔』も『夜は短し恋せよ乙女』も『恋文の技術』も『ペンギン・ハイウエイ』も狸シリーズも皆好き。

6,京極夏彦『姑獲鳥の夏』
 古本屋の中禅寺秋彦を探偵役とするミステリの「百鬼夜行」シリーズ、その第一作。このシリーズでは、殺人事件の背景にある関係者の柵や葛藤を妖怪になぞらえて祓う。ミステリの枠に収まらない面白さがある。外伝まで全部読んでいて、来月17年ぶりに出る新作も楽しみ。
 恐ろしく分厚く、シリーズは巻を重ねる毎さらに厚くなっていくことで有名だそうだが、私はシリーズ本編はみんな文庫分冊版で持っている。

7,宮部みゆき『ブレイブ・ストーリー』
 難しい家庭状況に陥った小学5年生のワタルは、運命を変えるため剣と魔法の異世界に旅立ち、異種族の仲間たちと冒険を繰り広げる。王道なRPG風ファンタジーが壮大に描かれている。
 宮部みゆきのゲーム風世界観小説は何冊かあるが、絶対に魔王を倒してめでたしめでたし、にはしてくれない。同じ冒険ファンタジーで『英雄の書』という本もあり、これのラストはあんまり好みではなかった。『ブレイブ・ストーリー』にしても何もかもうまくいくようになりました、という結末ではないのだが、少年の成長が伺える良いものだったと思う。
 実は『ここはボツコニアン』というなんでもありファンタジーのシリーズも大好きなのだが、本好きたちを前にして、宮部みゆきの話で『ボツコニアン』を語ったらボコボコにされるんじゃないかと心配している。

8,庄司薫『赤頭巾ちゃん気をつけて』
 東大入試は中止になり、愛犬が死に、足の爪が剝がれた満身創痍の薫くんの一日を描いた青春小説。『白鳥の歌なんか聞えない』『さよなら怪傑黒頭巾』『ぼくの大好きな青髭』と続く。
  斉藤美奈子の『日本の同時代小説』で知ってなんか気になり、探して買って読んで、なんか大好きな本。

9,ブラム・ストーカー『吸血鬼ドラキュラ』
 文学上の分類は正確に分かっていないのだが、『オペラ座の怪人』や『フランケンシュタイン』、『ジキル博士とハイド氏』のような、有名なモンスターたちの小説群をゴシック小説と呼ぶらしい。
 今回選んだうち海外の小説はこれだけになった。
 トランシルヴァニアの屋敷からロンドンにやってきたドラキュラを、ヴァン・ヘルシングと仲間たちが追い詰める。

10,太宰治『パンドラの匣』
 日本文学っぽいのからも一作選ぶ。『パンドラの匣』は、療養所に入院中の主人公と親友との手紙を中心にした、明るい話。『人間失格』で有名な太宰のイメージとは違うので際立っていて、そのまま太宰作品中で一番好きなものになった。
 私はそれまでミステリなど中心に読んでいたので、大学に入ってすぐのころに文豪を読み漁った時期があった。志賀直哉の『暗夜行路』などが長くて苦戦したような記憶がある。その時は太宰と芥川が読みやすくて好きだった。芥川は『河童』と、短編だと『奉教人の死など色々好き。


 というわけで、10作選びました。
 本棚を見まわして、「この本好きだな」と思うものを選んだのですが、読んだのが何年も前で記憶が朧気なものもありました。でも好きだと思ってるのは本当なんです……。

 自分が好きだと思う本を改めて抜き出して見て分析すると、「自分はこういう本が好きなのだな」と気付いたきっかけの本だったり、キャラクターにすごく魅力を感じた本が多くありました。
 今回は小説から選びましたが、小説以外の本にも好きなのはたくさんあります。これからも色々読んでいきたいもんです。

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