見出し画像

ようやく提出した卒業論文を要約する。

ryotaです。

先日、ついに大学五年間の集大成とも言えるべき卒業論文を提出しました。

長かった。

卒業論文といえど論文を書くには相当な労力が必要だということがわかった。
事実、卒業論文のことが頭の中をうろうろし始めてからストレスでニキビと肌荒れの酷さが通常時の15倍くらいになった(本人調べ)

加えてうちは英語教育専攻ゆえに卒論の執筆は英語で行う
アメリカに留学していた頃の10ページのエッセイを3日以内という宿題を4ヶ月間出され続けていた頃を思い出せば30枚の卒論など恐るるに足らずと思って後回しにしていたが、やはり英語は普段から触れていないと勘が鈍る
後回しにした自分を呪いながらなんとか完成させた。
まあまあギリギリの提出になってしまったが。

で、まあなんだ。
卒業論文は去年の春に取り組んでいた学科での一年生支援について書いた。
コロナでの大学閉鎖で不利益を被るだろう一年生を、学科の上級生を集めて大学の先生の助けも借りながらアシストしようぜってことでその枠組みを作って実践してたんだけど
それについて書いた。
https://drive.google.com/file/d/116EmOwA0uEiMdtiPTYH22pH2aKgnOqg-/view?usp=sharing
上の資料はうちの大学の教職員対象のFD(Faculty Development: 教職員の指導力向上のための研修会のようなもの)でこの取り組みを発表した時のものだ。
著作権は僕にあるはずだから公開しても問題ないだろう。

今回の卒業論文ではその中でも「プログラムに関わった学生の心理的な変容」「プログラムの危機対応としての妥当性」について検討した。
せっかく色んな人のサポートを受けてプログラムを遂行し、卒論の執筆までを行ったのだから、その色んな人の活躍を見てほしいと思い、僕の卒業論文を見たい人向けに公開したのだけども、どうも英語で書いたせいで「何書いてるかわからんから日本語で説明して」という声がちらほらと…
そこで、今日は僕の卒業論文の要約を日本語verでしてみようと思う
要約だからだいぶ端折ることになるので、英語でも原文で読みたいという人が万に一人でもいるのならば僕に個別に声をかけてほしい
ここからは文体が少し書き言葉になるので眠くなった人は遠慮なく眠ってほしい
もしあなたが寝付きの悪さに困っているのならば、この文章を眠る前の睡眠導入に使ってもいいだろう。
こんなふうに言っているが、もちろん僕は自分が書いたものについて誇りを持っているし、できることなら目をひん剥いてでも読んでほしいところだが、それは身体の自由と良心の自由の侵害になるだろうからここでは読んでくれるということをただ願うにとどめる。

では以下からが卒業論文の要約になる。

キーワード:


「ピアサポート」「教員養成」「レジリエンス」

1. はじめに

 子どもが不利益な状況にある時に、自主的に方針を立て他者と協働しながら困難の解決に向けて行動する実践的な課題解決能力は教師に必要とされている資質のうちの一つである。教師の養成の過程ではこういった資質を実際の課題解決を体験を通じて養うことができるプログラムの開発が求められている。
 筆者が所属するO大学は学生の多くが教員を目指す教員養成系の大学であり、未来の教師の育成は大きな使命である。そこでは先にあげた実践的な課題解決能力の育成も求められる。本研究では新型コロナウイルスによる大学の閉鎖への対応として、二年生以上の学生を中心に発足した一年生支援のためのO大学での”ピアサポート活動”を事例として、支援活動を通じて教師に求められる実践的課題解決能力を教師志望の学生が獲得することができるのかを検討する。
 本研究の手順としてはまずO大学でのピアサポート活動の実態を記述し、その活動が課題解決として方針立てられた活動となったかを検討するためにリスク対応の概念と参加者へのインタビュー調査の結果を照らし合わせてその妥当性を検討する。さらに教員養成課程の学生への教育的な意義を参加者へのインタビュー調査の質的な分析によって明らかにし、より良いプログラム計画の提言とする。

2.1. 先行研究: ピアサポート

“ピアサポート”とは友人や家族、同僚といった近しい関係性を利用した幅広い仲間支援を指す用語である。特に教育の文脈においてこのピアサポートは注目を集めており、初等教育から高等教育まで、学生主体のものや教育機関主導のものなど様々な形での実践が報告されている(中出, 2002)。
 高等教育の文脈では生活相談や勉強の支援、一年生サポートというような形で実践が見られる。学生が主体的に大学教育に関わることで学習意欲の向上を助けることができるといった側面がある(川島, 2010)と提唱されているが、具体的に社会に出る前の学生にどのような教育的な意義があるのかはということについてはまだ十分に議論がされているとは言えない。


2.2. 先行研究: 危機対応

様々な形で社会に潜むリスクに対しての対応として“リスクコミュニケーション”の重要性が説かれている。リスクコミュニケーションとは専門家や行政などの専門機関のみでリスクに対しての対処を寡占的に決定するのではなく、情報を民衆に正確に伝達しその最終的な判断を民衆の手に委ねるという民主的なリスクへの対応方法の手順である(National Research Council, 1989)。近年、生活様式の多様化などにより行政機関の決定が一様に民衆のニーズを満たすわけではないという考えと、様々な決定に対して民主的な合意形成を行うべきであるという風潮からこのリスクコミュニケーションの重要性は高まっている(木下, 2009)。こうして民主的に合意形成をすることはリスクへの主体的な対応を促進し、民衆のパートナーシップを向上させ(Fischhoff, 1995)、不安の増幅を抑える効果がある(Kasperson他, 1988)と考えられている。故に危機管理の妥当性を議論する場合には合意形成の過程を考慮して議論する必要がある。

3. 研究方法

 O大学で一年生への支援体制として発足した “ピアサポート活動”を事例として参加者へのインタビュー調査を実施し、先行研究から危機対応としての妥当性と参加学生への教育的な意義を検討した。

3.1. O大学でのピアサポート活動の概要

 当学の新入学生へ完全オンライン上で履修指導や生活全般についての助言を行うピアサポート体制は学生の主導で立ち上げられた。活動期間は2020年4月から2020年の5月末。参加者は助言を行う二年生から六年生までの上級生の「メンター」が26名と、新入生の「メンティー」が33名。上級生は新入生と同じ学科の学生であり協力をしてグループ体制で一年生への支援をオンライン上で継続的に行なった。

3.2. インタビュー調査

 プログラムに参加した学生のうち、新入生から4名、上級生メンターから4名を選出しインタビュー調査を行った。その結果をストーリーラインの記述により分析し、危機管理としての妥当性と参加学生の自己変容から見える教育的な意義について考察した。なお、このnote上では研究倫理の観点から個別のストーリーラインの具体的な内容の記述は控える。

3.3. 危機管理としての妥当性

 先行研究から危機管理としての妥当性が担保されているかどうかは、サポート体制のなかで支援をする側と受ける側がそれぞれの場面で民主的な合意形成を行うために参画できていたかどうかを指標とした。結果として、今回のサポート体制では一部では民主的な合意形成のプロセスが踏まれていた一方で、民主的な合意形成を阻害する要因も見つかった。阻害する要因を大きく分けると「オンラインでの支援」というシステムそのものに関するマクロ的な要因と、個人のもともとの性格や資質といったものに関するミクロ的な要因に分けられたことから、システム自体の改善と個人への啓発を含んだ事前準備が必要であるという結論に至った。

3.4. 学生への教育的な意義

 今回のように大学機関が封鎖になるという事態は前代未聞であり、新入生も上級生も学期のはじめには不確実性を前に大きな不安に襲われていたことが調査により明らかになった。それは先行きが不透明なことと大学機関からの支援が十分でなかったことが主だった原因であった。しかしながら、このサポートプログラムへの参加を通じて一年生も上級生も困難にただ打ちのめされるのではなくその中で仲間と協力したり、信頼ができる他者(学科の先輩)からの的確な支援を受けたりしながら困難を克服するに至った過程があったことが明らかになった。またサポート体制に組み込まれた種々の工夫により参加者は困難を乗り越えるために協力をすることができたというシステムについての言及も見られた。

4. 終わりに

 大学の新入生が受けると考えられた不利益に対しての危機対応として急拵えされたO大学のピアサポート体制であるが、教師を目指す学生にとっても有益となりうる「仲間による支援」の視点を一部ではあるが学生たちにもたらすことを確認した。コロナウイルスによる不安定な状況はしばらく継続すると考えられるが、今回の取り組みのようにパートナーシップ的な視点で困難に立ち向かうことで、個人の成長を促すという側面も確認された。
 また変化の激しい予測不可能な社会を生きるこれからの世代にとって「誰か」が課題を解決してくれるという考えでは社会を維持することはできない。故にパートナーシップ的な視点で課題に対峙することは必要不可欠となる。未来の世代を育てる教師にとっても、こういったパートナーシップは必要な視点だ。そこで教師の育成の段階で学生自身が今回のような活動に参加し、その意義を実体験できるようにプログラムを計画することは意義深い。改善点への対処も含めてこうした活動の広まりを筆者は望んでいる。

参考文献:

Fischhoff, B. (1995). Risk perception and communication unplugged: twenty years of process 1. Risk analysis, 15(2), 137-145.
Kasperson, R. E., Renn, O., Slovic, P., Brown, H. S., Emel, J., Goble, R., Kasperson, J. X., & Rtick, S. (1988). The social amplification of risk: A conceptual framework. Risk analysis, 8(2), 177-187.
川島啓二(2010).大学教育の革新とF Dの新展開 国立教育政策研究所紀要,139,9-20.
木下冨雄. (2009). リスク・コミュニケーション再考:―統合的リスク・コミュニケーションの構築に向けて (3). 日本リスク研究学会誌, 19(3), 3-3-3-24.
National Research Council (1989). Improving Risk Communication. National Academy Press.
中出佳操. (2002). ピアサポーター養成プログラムに関する一考察. 生涯学習研究と実践, (2), 95-103.

卒論を書いてみて。

以上です。
本当は35ページの卒業論文なんだけども、要約ということでだいぶ端折っています。
長くするのも難しいけど短くまとめるのも難しいね。
まあ、見てもらったように内容的にはこの仲間支援の枠組み、つまりパートナーシップ的な考え方は教師の教育としても有益なんじゃないという観点で締めてます。

僕が大切にしたい価値観のうちの一つのパートナーシップ。

大学院に進む予定だけど、そこで勉強したいのもこのパートナーシップに関係していることです。
その考えを少しは形にできた大学生の最終学年だったのかなと今は完成した卒論を読んで振り返っています。

卒論にももちろん書いてることだけども、ここでも。
まずこのプログラムに参加してくれた学科の学生に感謝。
素性もよくわからない五年生についてきてくれた一年生に感謝。
関わりもそんなにない大学五年目の僕についてきてくれた学科の二年生以上の学生にも感謝。
自身の専門外の分野での卒論の執筆を許可し、丁寧に指導してくださったゼミの先生に感謝。
このプログラムの立ち上げに携わってくださった学科の先生方に感謝。
英語論文の執筆にあたって添削を引き受けてくださった先生に感謝。
そして何より安心して修学できるようにサポートしてくれた家族や友人にも感謝。

ほんと、この卒論は自分だけで絶対に書けてない
今まで恵まれた環境で修学できていたんだなと、五年間を振り返ると何か感傷的な気持ちになる。
まだ大学院に進んで引き続き学生は続くけども、この素晴らしい環境に対しての責任をちゃんと果たすことが僕が唯一報いることができる道なのかなと思う。

引き続き、学問に自己研鑽に。

幅広く、奥深く。

これからも関わり続けよう。

そう決意を新たにしたのでした。
めでたし、めでたし。

ryota

この記事が参加している募集

スキしてみて

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?