「一枚絵小説まとめ」四月号
どもども、明原星和です。
私ごとですが、今月末付近より「一枚絵小説」という制作したイラストをもとにした短編小説を制作し始めました。
こちらの小説は一時間の制限を設けて小説を書くという、自身の小説を書く上での瞬発力を鍛えるために始めたことなのですが、思った以上に楽しくこれから先もどんどん続けていくつもりです。
そんなわけで、せっかくならつぶやきだけではなく、制作した小説をテキストでまとめたものも投稿しよう!
となって生まれたのがこの「一枚絵小説まとめ号」です。
今月は三作品だけですが、今後はもっと月の作品を増やしていけたらなと思っています!
そもそも「一枚絵小説」とは?
一枚絵小説とは、僕が独自に始めた「制作したイラストをもとに書いた小説」のことです。
(もちろん、もとにするイラストは写真でもOK!)
加えて、執筆時間を一時間と定めることで、素早くアイデアを思考する瞬発力と、一枚の絵から物語のイメージを広げる想像力。素早く作品を制作する集中力を同時に鍛えることができるトレーニングでもあります!
まぁ、端的に換言するなら有名な「三題噺」のイラストバージョンとでも思ってください。
僕が制作する一枚絵小説は、ひと作品につき500〜1000文字ほど。
文字数もとっても少ないし、別にオチがついてなくてもOK
(ここは書く人それぞれで違って大丈夫です!)
一時間という時間制限の中、瞬発的に作品を制作することが目的なので、完成度にこだわるのは慣れてからで大丈夫です。
ゼロから作品を生み出すのが難しい人や、小説初心者の方には個人的に是非ともやってみてもらいたい制作方法。
それが、「一枚絵小説」となっております!
①私色に染まって
この世界にひとつ、色を定義するのなら、それはいったい何色になるのだろう?
多分、多くの人は「地球が青いから」という理由で青を選択するだろうけど、私は違う。
だって、今こうして見上げている空は赤い夕日に染まっていて、ほんのりと見える月色に染まった空は、鮮やかな藍色に満ちている。
それだけじゃない。
街を照らす照明は黄色や朱色に輝いていて、ネオンの輝きは羅列すればキリがないほどの色々に光っている。
この世界は多彩な色で出来ている。
だから私は、この世界に色を定義するなら「濁って汚い黒茶色」だと思う。
パレットの上で全部の色の絵の具を混ぜた時にできる、あの汚い色。
この世界には色が満ちていて、それらがグチャグチャに混ざっている。
一見すると美しく見えるこの世界も、本質を見れば醜く汚いものだ。
私が今こうして見ている世界も、きっと表面上の「世界の綺麗な部分」でしかないんだろうな。
なんて、ひねくれた考えを持ってしまうのが私の悪いところだ。
いつからだろうか。私の持つ色が何色かが分からなくなったのは。
やりたいこともできずに、ただ自分を傷つけながら生きることに必死になる日々。
そんな毎日を送っているうちに、私は自分のやりたいことも、夢も、色も忘れてしまった。
今の私は、無色透明な存在だ。
「……なんか、疲れたな」
この世界にひとつ、色を定義するのなら、それはいったい何色になるのだろう?
もしもそれが私みたいな「無色透明」だったら、もう少しこの世界も生きやすいと感じるのかな。
②この監禁は ”優しい” ですか?
「ねぇ、もう私を解放して……」
薄暗い部屋の中。埃っぽい香りとジメジメとした空気感に包まれた少女は、涙ながらに訴えてくる。
「ごめんね。それはできないんだ」
ベッドに座った俺は、ぺたりと床に座り込んでいる少女を見下ろすようにして返事をする。
俺の言葉を聞いて少女は俯き、床にポタポタと涙の雫を数滴落とした。
「会いたいよ……お母さん、お父さん――」
その声は耳に届くことがやっとなほどに弱々しく、少女が精神的にも肉体的にも衰弱していることがわかる。
もう一週間以上、俺はこうして少女と狭い部屋で二人、過ごし続けている。
その間、俺は片時も少女から目を離すことはなく、こうして監視してきた。
ほんの少しでも目を離してしまうと、この部屋から忽然と少女が消えてしまう恐れがあったからだ。
いっそのこと縄でも縛り付けて簡単に動けないようにした方がいいのではないか、なんて考えた時もあったけれど、それはさすがに可愛そうだと思ってやめた。
だけどまさか、俺がこんな立場の人間になるなんて。夢にも思っていなかった。
「解放してよ……お願いだから……」
解放してだなんて、それはこっちの台詞だ。だけども俺は、少女を自由にさせることはできなかった。
「お願いだから、私を死なせてよ……」
少女は、俺の兄夫婦の子供。兄は俺とは真逆の優秀な経営者だったが、ほんのひと月ほど前に業務上の大失態をしてしまい、すべての地位と財産と信用を失った。
すべてを失った兄は精神を病み、妻と子供と一緒に「一家心中」を図ったのだ。
その心中で兄夫妻は死亡。けれど、奇跡か残酷か。子供だけは一命を取り留めてしまったのだ。
そんな身寄りのない少女を俺は、兄の親族として引き受けたのだ。
それ以降、少女は少しでも目を離すとすぐに死のうとした。
ただひたすらに、すでに死んだ両親に会いたいと繰り返し呟きながら。
俺はそんな死にたがりの少女を半ば換金することで、何とかその命を繋ぎ止めている。
これ以上、親族がいなくなるなんてのは、嫌だから。
③宛先不明の君へ
ある日の朝。一羽の鳥が白い封筒を一通運んできた。
不思議なこともあるのね、と届けられた封筒を興味本位で開いて見ると、そこには「二十世紀の君へ」と書かれた差出人不明の手紙が入っていた。
今は、一九五七年。
この手紙を書いた人は、二十世紀に存在していないのだろうか? それとも、ただの悪ふざけ?
手紙の内容には、「すまーとふぉん」や「れいわ」など聞き馴染みのない言葉ばかりが書かれていて、記された文字もどことなく鮮やかに見える。
ひょっとして、本当に二十世紀ではないどこかの時代から送られた手紙なのかも。
なによりも驚いたのが、この手紙に私の名前が度々出てくることだ。
偶然か否か。手紙の中の私は、差出人の方と親しい間柄で、なんと結婚までしているとのこと。記された文字列からはどこか物悲しさが感じられて、ところどころに水滴が落ちたような滲みができている。
私の名前が記された手紙を一羽の鳥が運んできた。果たしてこれは偶然の出来事なのかしら。手紙に書かれたことが真実でもそうでなくても、せめて差出人の名前くらいは書いてほしかったわ。
そんなことを思いながら、私はタイプライターで返事を書く。
書き出しは、そうね――
『宛先不明の君へ』でいいかしら。
今月の「一枚絵小説」は以上になります。
これからもどしどし投稿予定ですので、ちょっとした隙間時間などにご拝読いただけますと、幸いでございます。
今回も読んでいただき、ありがとうございます。
これからも様々な記事を書いていきますので、次回もぜひ読んで下さい。
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