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Inflight movie critics 映画感想

5年位前か、Facebookに飛行機で観た映画の短評を、Inflight movie critics と称して、「ピーナッツ3個」とか評価をつけてのせていた(5個が満点)。

今回、ANA国際便で観た映画3つについて以下。

1.ナインデイズ 🥜🥜🥜


ピーナッツ3つ。

不思議な設定の映画。SFというより、ニューエイジ的スピリチャル系。

アメリカの田舎のさびれたビーチサイドの一軒家みたいなところに主人公ウィルは住んでいる設定だが、それは天国だかあの世だかの設定で、仕事は現世に生まれかわる魂?たちを面接してそこから送り出す候補を絞り込むという「面接官」の仕事。

天使なんだかそういう設定なんだろうけど、ウィルはどこにでもいそうなインテリの黒人のおっちゃんで、映画が進行すると、かつて現世で人間やったことがあることがわかる。

もうひとりのアジア系の天使?は、人間やったことない。8人だかの候補から、9日間で生まれ変わる魂を選ぶという話。

たしかに、こちらとしては、生まれ変わりや輪廻転生を信じたとしても、その生まれ変わり先やアップグレードの判断は、万能の神様のような存在が公平にやってくれるものと想定していた。それが、面接プロセス、それもその判断に自ら揺れ動く面接官の決定だったという不思議な話。

いい映画です。ピーナッツ5ほどではないけれど、ラストのふっきれたウィルが太いいい声で演劇的に詩を叫ぶとこなんて、いいですね。なんのために生きるんだろうとか、考えさせてくれる話。

2.梅切らぬバカ 🥜🥜🥜

ピーナツ3つ。

なんか、NHKの週末の単発のドラマとかでやってそうな、いい話。

自閉症の中年の息子を持つ初老の母と、隣に引っ越してきた家族との交流。

母親の役、最初、演技派の夏木マリとばかり思っていたら、加賀まりこだった。とてもいい感じ。加賀まりこってこんないい演技派だったんだと感銘。

筋書きはけっこう展開が想像できてしまうんだけど、ほのぼの、ほっこりする気分にさせてくれる話。林家こぶ平(今は名前変わったんでしたか)が、自閉症ハウスの世話係でいい味だした。

3.花束みたいな恋をした 🥜🥜🥜🥜🥜

ピーナッツ5個。

おじさんとしては、機内映画でこの青春映画をみるのは、周りにみられたらとちょっと気恥ずかしかったけれど、Note上で何人かのとてもいい鑑賞感想を読んでいたので観てしまった。よかった。

Noteで読んだ感想では、若い純粋な恋愛で出会いから5年の月日がたち、人生の現実に直面して好きなのに別れてしまう、ほろ苦い若き日のドラマというものを想像。自分の過去に重ねて涙したというNoteポストを読んで、いいなと思っていた。

このテーマって、昭和の昔から、

かぐやひめが「22才の別れ」で、「あなたにさよならって言えるのは今日だけ、、、今はただ五年の月日がながすぎた春といえるだけです」と歌ったり、

ユーミンが「いちご白書をもういちどで」、「就職が決まって 髪をきってきた時、もう若くないさと、君にいいわけしたね」と描写してたり、

松田聖子が「スィートメモリーズ」で、「あの頃は若過ぎて、悪戯に傷つけあった二人」と歌い上げていたりする、あれですよね。

引用が古臭く長かったですが、若き頃の出会いや恋愛の感情から社会的な形としての結婚への道筋のドラマだったり、夢を語る日々から現実的に生きる糧を得るための選択のドラマだったりというプロット。

この昔からある、切ないプロットは、恋愛進行形の若者たちへというより、それよりちょっと後の、5年くらい前の初々しい恋愛を経て今を生きている世代の心を打つテーマなんじゃないかな。

でも、おじさんとしては、それは遠い遠い昔の色あせた淡い記憶スィートメモリーに風化してしまっているので、ちょっと違う見方をしたのだが、この映画での捉え方は、とても進化していて、前向きで、ポップな感じがした。

男の方が、クリエイティブなことに憧れて夢を追っていたのが営業職でどやされながらも仕事をこなしていく、そこに諦観を読み取るよりも、本人なりに自分の言葉で頭のなかが整理されていて、好きな女性のためならつまらんことやっても人生いきていくんだと言い切っている。結婚して、子供が生まれて、多摩川の土手を笑顔でベビカー押して歩いているのが想像できるとまで言い切る。しっかりしてるな、こいつ。

女性のほうも、自分のやりたいことを貫き、純粋な気持ちを大事にしたいと言いながらも、5年たって、日々の生活でけんかばかりになること、その原因が人生観の違いだということをちゃんとわかっている。それで、別れることを言い出す。

これって、昭和時代の、じめじめしてウェットで諦めや悲しさだけの別れじゃなくて、ちゃんと自分で考え抜いて、なんだか着実に進化した男女関係じゃね?と感心。すごいな、平成世代。まあ、こんなカップルは珍しいよ、存在しないよといわれるかもしれないが、こんな在り方が映画で描かれていることがすごいと思う。

映画や文学や夢やいろんな関心がいっしょの、ソウルメイトみたいな存在。そんな存在と必ずしも永遠に人生をともにできるわけではないけれど、若いときに「花束みたいな素晴らしい5年間がありました」、そんなまとめかたか。

それは、昭和時代の「若すぎて傷つけあった」とも違うし、「長すぎた春だった」というのとも違う。そんな進化した恋愛観を持てる、あるいは共感できる、今の日本の若者世代はなかなかたいしたもんだな、としみじみ思って、ピーナッツ5個の満点評価。 ■



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