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映画『横道世之介』(2012)

今日は当地シンガポールはラマダン明けの国民の祝日なので、のんびり。5、6年前に出張の機内でみた映画の感想を書いたのがFBででてきたので、思い出しながら以下加筆してPOST。

この映画について思い出そうとしたら、ふと、不安がよぎった。

これって、もしかして、三浦春馬が主演で女優は竹内結子だったか?飄々とした2枚目だけどいいヤツの主人公と可愛いヒロインの映画。役者はだれだったか。

ぐぐったら、高良健吾が主人公の横道世之介、ヒロインは吉高由里子とわかる。ふたりとも健在、よかった。そうそう、あのコミカルで馬鹿明るいのは吉高由里子だよなと納得。三浦春馬も竹内結子も好きなんですが、そうだといまや悲しい作品となってしまう。

機内で観る映画を選んでいる時にこのタイトルをみて、「横道世之介?」、なんだ、ふざけた名前だな、どうせ日本の薄っぺらい青春映画だろうと思ってたが、出ている俳優たちが好感もてそうだったので観てみた。結果、とてもよかった、2時間40分。(当時FBで書いていた、機内映画批評満点5ピーナツ中4ピーナツ)

お話は、80年代後半の学生ライフと、それから15年くらい後の話が交互する。自分も過ごした80年代の昭和の学生ライフが懐かしかった。主人公世之介はサンバ研究会にはいったりするが、そういえば、自分は入らなかったが体験入部してサンバ研で太鼓叩いたっけ。当時僕がいた学校は中南米研究の研究室をたちあげたもののスペイン語は第2外国語にすらなかったので、スペインから招聘した1人のスペイン人詩人に加えて、都内のカトリック系の古いスペイン語の大学と外語の大学から先生が教えに来てくれていた。どういうツテをたどったかまったく記憶にないが、そのカトリック系の大学にサンバ研究会があるというので連絡をとってひとり、練習を訪ねた。

彼らは暖かく迎えてくれて、ぜひいっしょにやりましょうとか言う。楽しそうだったなあ。僕のいた大学は当時は女性の比率がかなり低かったので、その共学?の大学のサンバサークルはきらきら、青春の輝きでまぶしかった。ちょうどこの映画の世之介がいた大学のサンバ研究会みたいに。結局、やはり自分は硬派路線で行こうと、その他学のサンバサークルには入らず、男ばっかりのジャズ研の日々を選んだが、実は、あの「きらきらさ」に気後れしてしまったからであったか。

いい映画なので、細かいあらすじは敢えて触れないが(映画観てください)、主人公みたいな、ああいういいヤツいるよな、という筋。くったくがない、いいやつ。そんなやつが仲間にいた青春を思い起こして懐かしむような映画。

と思ってみてたら、途中、主人公がある事故、我々同世代の人間ならみんななんとなく覚えている不幸な事故にまきこまれて死んだことがわかると、にわかにストーリーが厚みを増す。え、あの事故の?彼がそうだったのかと。といっても、ドラマチックなことは全然起きずに、淡々と映画は終わるのだが。

あの時代の、ごく普通の人の人生が切り取られて映像化されていた。そこに感動。そういう映画があってもいいと思う。映画を観ている間、その過去の時代にタイムスリップできるような。そして、それが自分が知っている時代だとなおさら懐かしい。とくにドラマチックでなくていい、結末もなくていい、あの時代の空気が再現されていて追体験できればいい。

映画ならではの、映像での伏線とか、あの時代の臨場感を追体験させてくれるような時間をたっぷりかけたシーンとか、けっこうよかった。たとえば、エアコンもない4畳半のアパートで、真夏に1人でインスタント・ラーメンを汗かきながらすすったりする。それを滔々と描く。あったあった、あの頃そういうの。美味しい記憶というのではないのだが、懐かしい、あの時代が蘇った。映画化の素晴らしさ。

スーパー裕福なサラ金社長一家?のお嬢さんというような役だった吉高由里子が、「ごきげんよう」とか友達に言う、バカ明るいお嬢さん役を好演していた。演技というより、地がこんなネアカの人なんだろう。こういう人も、いたいた。

僕の大学時代の思い出は、にやっと笑ってしまうようなとびぬけて楽しい思い出はそんなにない。むしろ、日々うだうだどうでもいいことを悩んでいたような思い出なんだが、世之介みたいないいやつとか吉高由里子の役みたいな女性とか、そういう知り合いがいたなあと思い出せるということは、それなりにいい人との出会いがあって、そんなに悪くない青春時代だったのだろうかな。ふと、そんなことを考えさせてくれた映画でした。■

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