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【映画】"In the Land of Saints & Sinners" (2023) 渋すぎるリアム・ニーソンのハードボイルド

今年まだ前半戦だが、既にハードボイルド映画の今年のイチ推し傑作をみてしまった感じ。

昨年の作品だが、Netflix の英語系の国でアクセスでみれるはず。

御年72歳のリアム・ニーソンが故郷の北アイルランドの寒村を舞台に、いつものようなプロットのハードボイルドストーリーを展開する。

ほんとにいつもと同じような展開なんだが、やはり1970年代のIRAが爆弾事件おこしまくっていた頃を舞台にしてるのが、リアリティと彼の持ち味を最大限に出した近年で一番の傑作だと思う。

ほぼアクションは引退したよという映画かなと思った前作(このPostの末尾にリンク)だったが、またもや、凄腕の殺し屋の初老の主人公は、少女を虐待する変態野郎を殴って思い知らせようとしたら不要な殺人に巻き込まれてしまい、IRAテロリスト達を相手に血みどろの殺し合いへと展開していく。

子供を虐待する変態野郎を成敗するのはいつもの定番、悪を成敗する必殺仕掛け人みたいに怒りをこめてなぶり殺すのかと思ったら、やきを入れればいいくらいだったのが反抗され、それを若い殺し屋同僚に救われるというひねりが今回はあった。

北アイルランドの海に絶壁の崖があるど田舎が舞台なので、都会のカーチェイスとかは今回はないのだが、素手、ナイフ、銃、ダイナマイトでの殺し合いが満載。まあこういう暴力描写は賛否両論あるが、あくまでもフィクションで「暴力」や「殺人」が、「反論する」とか「絶縁する」というような現実の人間関係の、ある種の映像的なメタフォーの表現だと思っていれば、痛快で楽しめる。自分の倫理観と折り合いをつけながら、動物的な欲求をみたすエンタメみたいな感じで。

アイルランドは行ったことがないので想像でしかないが、ノワールで描かれるIRAとかパブにいる飲んだくれはなんとも暴力的で、当時、70年代とか、そうした乱暴な暴力的な暗く歪んだなにかが社会に蔓延していたのかと思う。いとも簡単に、人を殺し、穴を掘って埋める。

我らが中高年老人オヤジのヒーローのニアム・リーソンは、いつものように無口で、人殺し稼業なんだが良心の呵責もあって、周りの人には優しい。とくに弱者には優しくて、彼らをいじめるような奴は許さない。でも、そろそろ引退かなと思って、庭で野菜つくってみようとしたりしている。

周りを固める役者がまたいい。絶対他の映画でみたことがある名脇役の役者であろう、ゴッドファーザー映画にでてそうないかつい顔つきの老人Colm Meaney とか、警察官役の老人とか、渋すぎる。その佇まいそのものがその役を表している感じ。その他の役者も、たぶん北アイルランド出身を中心に選んだのかよく知らない人たちだが、なかなかいい演技。とくに一番ワルの女性テロリスト役の女性は粗暴でとち狂っていて怖いくらいだった。

そして、その舞台となる北アイルランドの海辺の寒村。たいした穀物も育ちそうにない茶けた丘。冷たそうな風が海からびゅーびゅー吹いてそうな冬。住んでみたいとはぜんぜん思わないが、ぜひ、一度行ってみたい。白い崖が美しい。フィドルでアイルランド民謡とかが流れるパブで、ビールにシングルモルトのショットをくぃっと飲んでみたい。

たんなるアクション映画と思ってみても十分楽しめるが、同時に、牧歌的で美しいあの地域の風情が伝わってきて、なんとも、職人技の脚本と監督に名俳優が作り出した、ハードボイルド映画の傑作のひとつかなと思った次第。

渋い役者Colm Meaneyが主役ででてたスペイン映画:


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