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映画『メモリー』(2022) リアム・ニーソン

先週、日本からのSQ便で観た映画。

近年、リアム・ニーソンのおっさんが主役はっているアクション犯罪映画はあると全部みてしまう。シンプルな筋書き、勧善懲悪、銃撃にカーチェイスと紋切りなんだが、やはりいぶし銀のリアム・ニーソンの魅力か。

リアム主演でそういう系統のは、ヒットして続編も作られた『96時間』とか。たしか前回みたのが『誘拐の掟』(2014)。

この今年古希70才のアクションスター、まだまだ主役はって孤軍奮闘、ひとりで悪い奴らを片っ端から追っかけ、殴り、銃殺する。

元特殊部隊のメンバーとか、殺人課の刑事とか、プロの殺し屋とかの役で、年とって引退しようとするんだが事件に巻き込まれる。娘とか愛する人が巻き込まれ助けるために、武器、暴力、アンダーグランドのコネなど駆使して悪い奴らと戦う。

マフィアとかテログループとか凶悪な犯罪者集団とかとてつもないやつらを相手に、体をはって、時に古い仕事の友人(癖のある犯罪者が多い)の力を借りて、その友人が殺されたりしてさらにかっとして悪い奴らを叩きのめしにいく。

今回、今年製作のメモリーをみていて、ふと、こういうプロットの彼のでる映画に共通する要素があるのに気づく。

そして、その共通したテーマが、観ている自分の怒りを誘うし、リアムが戦うのをさらに強く応援したくなる背景だと気づく。


悪い奴らが弱いものいじめというのはよくあるプロットだが、リアムのこういう作品では共通して、弱者がティーンエイジャーかそれより幼い子供で、悪者は彼らをしばしば性的に食い物にする変態達だということ。

そういう変態悪者をリアムは追い詰めて、自分も死にそうになりながらも、やっつける。へんなポリコレ配慮で悪者は実は不幸な生い立ちや過去があったとかいう説明はなく(日本の犯罪ものにありがち)、あくまでも悪者は悪い変態として描かれ、リアムは銃弾を変態たちの頭にぶちこんで息を止める。

まあ、あまりいい子ぶる気はないけれど、幼児虐待とかティーンエイジャーを性的な食い物にするやつらには、腸煮えくり返る気持ちになるんです。

自分に子供がいるからかもしれないが。世の中、いろんな性癖や、実害のないファンタジーみたいなものがあってもいいかとはおもうが、弱い立場の子供を凌辱するような輩は、こてんぱんにリアムじいさんに始末してもらいたいと思う。そんな潜在意識があるのかなと思う。まあ、リアム必殺仕事人のほうも映画の中の世界で、実際に変態を殺しているわけでないから、感情移入して映画を楽しむ部分では、こんな怒りを発散させてもらってもいいかなと思うんですが。

大昔、90年代前半、アメリカに住んでいた頃、前ブッシュ政権(親父さんのほう)でダン・クエール副大統領というはっきりいって無能な政治家がいていろいろ彼についてのジョーク、ダン・クエール・ジョークがはやっていた。

けっこうおもしろかったのである年配の日本人の知人で奥さんがアメリカ人のお宅で食事をごちそうなった時に、いい気になってそれを披露してしまった。

するとその奥様は上品な真顔で、「無能なのはみんなわかってるのだけれど、チャイルドポルノとか規制をやってくれるのはダン・クエールのような共和党の保守派の政治家なのよね」とぽつり。リベラルを自称していた僕にもその言葉はぐさりとささり、それからずっと、時々その言葉を思い出す。

まあ芸術の表現の自由とか、へんな倫理観を政治に持ち込むのはきらいだけど、子供を守ってやるというのは大人の義務でしょという考えですね。そんなおやじは結構世界中世の中にいるのか、リアム爺さんが変態たちをやっつける映画が製作されつづけている訳なんだと、勝手におもった次第。

表現の自由としてのファンタジーに対する、こちらも表現の自由としてのフィクションの中での怒りの制裁。そこに感情移入したいオヤジ達がリアムを応援している構図はありますね。

今回の映画『メモリー』、その系統なるも、かなりひねりがあった。


まず、無敵の我らがリアム、な、な、なんと、アルツハイマーがちょっとでてきてしまった初老の殺し屋という設定。

準備万端にバックアッププランもしっかりした計画も、ふとしたことを忘れてしまって万事休すになったりする。やはり古希、さすがのスーパーおじいさんも年には勝てないということか。


そして、悪いやつが、テキサスでメキシコ中米からの不法移民を管理する会社の黒幕でその不法移民の13才くらいの女の子を変態に売春させたりしているのだが、それが、野郎でなくて、な、なんと、女性のラテン系上品なおばさん。

どこかでみたことがある、若い頃美人だったんだろうなという女優だったが、キャストみてびっくり。昔憧れだった、イタリアの往年の美女俳優モニカ・ベルッチ!若い頃から中年の頃も、絵に書いたようなラテン系美女。アラ還の今でも美しい。

べつに彼女が変態なわけではないのだが、子どもたちを食い物にして金儲けしている腐敗した会社のオーナー一族で、表向きはチャリティに熱心なビジネスレディの顔で、裏ではすべてを息子を動かして牛耳っているワル。

それで、筋書き通り、リアム爺さんはさいしょ一人孤軍奮闘するのだが、今回は、な、なんと強力な援軍を得る。

リアムが見込んだ、正義感のある刑事たちにリアムから情報を託して、殺された女の子の正義を果たすことを頼む。それが、ひとまわりもふたまわりも下の、30-40代の刑事たち。

ネタばれなるので詳細はぶくが、いつもは死にそうにメチャメチャにやられながらも最後には生きているリアムが、最後には、な、なんとになってしまい、悪のおばはんは、バトンタッチを受けた世代によって無惨な死をとげるという筋書き。大筋はいつもと同じで、必殺仕置人ストーリーで、悪は成敗されて無惨に死ぬ。観てて、すかっとする、そんな流れだが。


もう、リアム必殺仕事人の映画はみれないのかな?

まだ見てみたいが。そういえば、同じ系統の Equalizer シリーズも、大活躍のアクションをこなす元特殊部隊のデンゼル・ワシントンが主演で、かれも今年68才。

トム・クルーズ、還暦でスローダウンしている場合じゃないですね。

まだまだ人口の多くを占める団塊の世代の観客が、前期高齢者の必殺仕事人が活躍する映画を所望しているようです。興行成績見込める、「爺さんヒーロー物」のカテゴリーが、ハリウッドにはあるんじゃないかなあ。 ■


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