京大理系数学2023を解く 大問6

2023年度京大入試の数学(理系)の問題を思考をめぐらせながら解いていく。

大問6


見た目的には分野は三角関数だが、(2)で実は整数に絡んでくる。
事前に言っておくが、この問題はチェビシェフの多項式という難関大では時々扱われるテーマが題材となった出題でそれを知らないと圧倒的に不利になるので、問題に取りかかる前に次の問題をやってみよう。(僕個人としては(1)と(2)の間にこの問題が入っていても良かったのではないかと思っている。)

(問)$${\cos{n\theta}}$$は$${\cos{\theta}}$$の多項式で表されることを示せ。
 ただし、$${n}$$は自然数とする。

以下に解答を載せておくが、この証明はテンプレとして覚えていてもいいのではないだろうか?
あくまで丸暗記しろという意味ではなく、この事実と証明には数学的帰納法と和積の公式を使うということぐらいは頭の片隅に残していた方が得だろう。

この問題はこれが分かっている上で、さらに一捻り必要な問題だから、知らなかったらそもそも手が進まないことだろう。
ということで進めていこう。(1)は単純な計算だからさっさと済ませる。


個人的な持論にすぎないのだが、三角関数関連の公式は色々あるが、半角、3倍角と積和和積に関しては覚える必要はないと思っている。まあ覚えている人の方が多そうだが。
続いて(2)だが、ここで先ほど考えたのを使うことになる。
$${\theta=\frac{m\pi}{n}}$$で$${\cos{\theta}=\frac{1}{p}}$$となる $${p}$$($${p}$$は3以上の素数)が存在するかだが、これはまずないと踏んで証明する方針で進んだ方がいいだろう。勘と言われれば、否定できないのだが、多くの人が直感的にないだろうと思うだろうし、実際ない。
だから、ないことを示していくのだが、$${\cos{n\theta}}$$は$${\cos{\theta}}$$の多項式で表されるということを使おうという意識を持って進めてみる。だから、一旦次のように書いてみよう。そしてついでに$${\theta=\frac{m\pi}{n}}$$の代入までやっておこう。(この後の説明を円滑にするためにここで述べておくが、$${\cos{\theta}}$$の多項式で表したらおそらく全ての係数は整数になるだろうという予測は立てておいてほしい。もちろん示すべき事項ではあるが、一旦、そうだろうと推測してるものとして進める。)


この式を見るとある程度高校数学に慣れてきたら両辺を$${p^k}$$倍したくなることだろう。というのも、この式から矛盾を導くとき、この式に何が反することになるだろうかと考えると「$${p}$$が素数になること」だと思われる。素数と相性がいいのは倍数だから、片方の辺が$${p}$$の倍数で、もう片方の辺が$${p}$$の倍数じゃないという形になれば、これで矛盾となる。そのためにも次のような式にする。
すると必要なのは$${\cos{n\theta}}$$を$${cos{\theta}}$$の多項式で表したときの最高次の係数が$${p}$$の倍数にならないことを示すことだと分かる。そして(1)を見れば、それぞれ4と8になっていて2の累乗(ここで偶数としてはいけない、というのも偶数は奇数で割り切れることがあるからだ。)ではないかと推測してほしい。
ここまでで整理すると、この(2)で示さないといけないのは次の3つである。
① $${\cos{n\theta}}$$は$${\cos{\theta}}$$の多項式で表される
②その多項式の全ての項の係数は整数になる
③その多項式の最高次の項の係数は2の累乗となる
これら3つはまとめて次のように数学的帰納法で証明することができる。(最初にやったものを少し応用させただけ)
しかし、証明する上で次の④を付け加えた方がかなり簡単になる。
④その多項式の次数は$${n}$$次である。

これができれば、あとは先ほどの式から、左辺の$${a_k}$$は$${p}$$の倍数ではないことを利用して矛盾が導ける。

この問題はチェビシェフの多項式を知っているかで難易度に差が生じそうな問題となっている。それなしに解こうと思ったらド・モアブルの定理を利用する手があるのではないかと思ったがなかなか上手くいかなかった。(もし上手くいくことがあったら教えてほしい。)
知らなかったならチェビシェフの多項式はここで既知のものにしておきたいところだろう。

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