東大理系数学2024を解く 大問5

東京大学で2024年に行われた入試の数学(理系)の問題を思考を交えつつ解いてみる。

大問5

分野は積分、中でも回転体の体積の問題となる。僕は、こういう問題では役に立つかどうかに関係なく、とりあえず軽く図を描くのだがこれを勧めておく。というのも、問題文の情報が具体的にイメージできる上に、平面図形の場合は特に答えにつながるヒントが得られたり、答えの予想が立てられるケースがあるからだ。

フリーハンドでも良いから問題を読みつつ書いておこう


ところでなんでこんな話をしたのかというと、実は図が割と役に立つからである。当の本人は後々に書く式の処理で解いたのだが、見てもらったら分かる通り、図形が割と単純なので式に落とし込まずとも断面図を考えられる。
ということで断面を考えるにあたって今回は回転軸が$${x}$$軸だから$${yz}$$平面で考える。
$${x=t}$$とすると$${t}$$の取る範囲は$${0\leqq t \leqq 1}$$であり、図を使って断面を考えると次のように場合分けをして考えられる。(以下では線分AB上で$${x=t}$$を満たす点をP、線分ADまたは線分BD上で$${x=t}$$を満たす点をQとする。)


平面が回転するので今回は断面は直線となり、回転体の断面図はドーナツ型になることが分かる。その時の断面積の求め方は原点(以下$${O}$$とする)から最も遠い線分PQ上の点との距離を$${L}$$、最も近い線分PQ上の点との距離を$${l}$$とすると、$${(L^2-l^2)\pi}$$となるから$${L}$$と$${l}$$を求めていこう。
まずは簡単そうな$${\frac{1}{2} \leqq t \leqq1}$$の時からやっていこう。
$${L}$$はOP(もしくはOQ)だから$${L=1-t}$$であり、$${l}$$は垂線を下ろして考えると、$${l=\frac{\sqrt2}{2}(1-t)}$$となる。
一方で$${0\leqq t \leqq \frac{1}{2}}$$の時、
長い方はOPだから$${L=1-t}$$であり、短い方は先ほどの図からおそらくOQになりそうだからQの座標が必要になる。Qは直線BD上にあるから実数$${s}$$を使って次のように書ける。
$${\vec{OQ}=\vec{OB}+s\vec{BD}}$$
$${\vec{OQ}=(0,1,0) +s(\frac{1}{2},-1,\frac{1}{2})\\=(\frac{s}{2},1-s,\frac{s}{2})}$$
Qの$${x}$$座標は$${t}$$だから$${\frac{s}{2}=t}$$とすれば、$${Q(t,1-2t,t)}$$と求まる。
故に$${l^2=(1-2t)^2+t^2}$$(結局2乗して使うことになることを見越してあえて平方根は取らない方がよい。)だから、後は積分計算をしておしまいだ。

で、本当に合ってるだろうか?

もしここまで読んで全く違和感を感じなかったならば、それは図を信用しすぎる悪い癖がついている。実はこのままでは正しい答えには辿りつかない。
では、どこが間違っているかというのは間違いを探すつもり、論理の甘さを指摘するつもりで読めば、気づくだろう。そう、「短い方はおそらくOQになりそう」が間違っている。
図だけ見れば合ってそうにも思えるが、一旦図のことは忘れて線分と線分上にないある点の距離の最小値がどうなるかを考えてみよう。
点と直線の距離ならば公式で一発だが、点と線分の距離ならば次の2つの場合に分けられる。


①の時には線分を含む直線に下ろした垂線の足が線分上にあるから、垂線の長さがそのまま最小値になる。一方で②の時には垂線の足は線分上にないから、最小値は点に近い方の線分の端と点とを結んだ線分の長さとなる。
これを頭に入れた上でもう一度、問題の部分を読んでみると「もしかすると直線PQに下ろした垂線の足が線分PQ上にあるケースもあるのではないか」と気づくはずだ。もちろん常にないケースもあるかもしれないが、実は今回はある。確かに図は相当便利だが、自ら勘違いを生む可能性が十分にあるから常に疑心暗鬼の状態で解き進めてほしい。
ということで直線PQに下ろした垂線の足が線分PQ上にある時の$${t}$$の範囲の考え方については色々あるかもしれないが、ここでは三角形OPQと角OQP($${=\theta}$$とする)に注目する。すると、「直線PQに下ろした垂線の足が線分PQ上にある」は$${\theta \leqq \frac{\pi}{2}}$$と言い換えられるから余弦定理を使って求められる。


すると、$${t \geqq \frac{1}{3}}$$となるから$${\frac{1}{3}}$$を境にもう一回場合分けが必要だと分かる。
$${0 \leqq t \leqq \frac{1}{3}}$$の時は、$${l^2=(1-2t)^2+t^2}$$
$${\frac{1}{3} \leqq t \leqq \frac{1}{2}}$$の時は$${l=\frac{\sqrt2}{2}(1-t)}$$となる。($${\frac{1}{2} \leqq t \leqq 1}$$の時と一緒)
ここまでやって、残りは積分計算となる。


積分計算は数Ⅱで扱うレベルで難しくない。
続いて、式でガチガチにやるパターンについてもやってみる。

断面積から後は同じなので省略


ポイントは最初のベクトルを使って三角形の内部に点が存在するための条件を使うところになる。この場合には垂線の足が線分上にある時の$${t}$$の範囲は$${z=y}$$の直線を引くことで簡単に求まる。今回は必要なかったかもしれないが、この方法でも解けるようにしておけると良いかもしれない。

この問題のポイントは図の有効さと落とし穴である。確かに図は分かりやすく、解答への足がかりとして非常に優秀だが、その反面、自分の描いた図に囚われて思わぬ勘違いをしたり、論証不足になったりする危険性は二次曲線から三角比まであらゆる分野で潜んでいる。図を解答に使う時は細心の注意をはらってほしい。

大問6へ続く。

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