あなたが服を選ぶ理由
こだわりが強い、とよく言われます。
靴や家具、食器が好きな時点で、モノの選び方の趣向性は強いのでしょう。
服選びはなおのこと。
奇抜なファッションをするわけでもないですが、好きな形や好きな素材、好きなスタイルは、頭の中に金型になって存在しています。
そのはずなのに、年の瀬に出会ったひとりの女性の影響で、まさかそれが揺らいでしまうとは思ってもいませんでした。
服を選ぶことは、相当に好きです。
そのときどきで、自分の理想に近づくための手段のひとつだと思っています。
中学校から高校生、WEGOやらRAGEBLUEやら、年相応のものを。
大学、海外かぶれのファストブランドや、古着やら。
社会人になって2年くらいは、LUMINE系の値段が張りすぎないものを。
そこから先は、身体にあうもの、感性にあうものを、好きなように選んできました。ときに流行に流されながら、服に対する価値観が磨かれて、自分のモノ選びの基準が出来上がってきました。
いまは、少しゆるっとしたカジュアルめな服が好きです。
好きなればこそ、こだわって選びたい。
そう強く思ってお買い物をしています。
そんな自分が、2023年も末のころ、誰かのための服選びをしてみようと久しぶりに思いました。
人生の中でも大きな決断をして、新しいひとと出会ったのですが、そのひとは僕にはないパワフルさをもっていながら、似ているところと似ていないところのバランスが絶妙な感覚がして、とても愛おしく思えるひとです。
彼女は、僕がいままで積極的に好んで着てこなかったような、韓国系のキレイめスタイルが好きでした。
自分でも着るし、パートナーにも着てほしいと思うようなひと。
人生をコントロールしてやろうと息巻く強欲さが、彼女の魅力のひとつです。
好きなメンズファッションのスタイルはなんとなくわかってきました。
セットアップ
ダウンジャケット
きれいめジャケット
フレアのスラックス
流行りに流されないオーセンティックな服装が好きな自分は、流行り物じゃん、と思いながら、彼女の目を引きたいという欲のほうが強いことに気づいてしまいます。
そのために、あれもこれもと、たくさんリストアップして、試着してみはするものの、全然しっくりこないうえ、良いものが見つからない虚しさと彼女の期待に答えられない悲しさで嫌になってしまいます。
とりあえず、一番彼女が好きそうで、似合いそうなものだけ、いったん安物を買って着てみようと、フレアのスラックスをZozoで買ってみました。
割りと似合うが、これで職場に行ける気も、昔なじみの友達に会える気もしないなあと思いながら。
それでも、彼女が喜んでくれるならと、休日がんばって着てみます。
目を輝かせて喜びながら、素直な言葉で褒めてくれました。
もともと少し欲しいと思っていたロングコートも、狙っていたカラーではなく彼女が似合うと言ってくれた色にしてしまいました。
そんなことをしていたからか、自分ひとりで服を見るときでさえ、彼女からどう見られるのかを気にしてしまいます。
これは良いものだな、と思いつつも、彼女はそんなに好きじゃないだろうな、と考えてしまいます。
頭の中が、慣れない思考でぐるぐる絡まっているみたいです。
もう、どうしようもないのでしょう。
周りにどう見られるのかを過剰に気にしてしまう自分にとって、服選びが趣味になるのは自然なことだったのかもしれません。
服選びは好きです。
自分の見られ方をコントロールできる手段だから。
その、わかりきっているけど言いたくない動機。
そこから逃げるように、流行から離れた自分のこだわり、選び方。
彼女の力強さに、根底の動機に引き戻されてしまいました。
自分のこだわりは、誰かに認められるためだけにあって欲しくはないのですが。
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