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筋骨めぐりという不思議な世界

土曜日にひょんなことから「筋骨めぐり」という聞き慣れないワードを知ることになった。私は筋肉フェチでも肉体改造派でもないため「筋トレ」や「フィットネス」関連の情報を辿ることは勿論ない。そんな私がこのワードに巡り合った理由はバイクでのツーリングの行き先を探していたからに他ならない。

筋骨めぐりをすることになった理由

愛知県に住んでいる私は県内より岐阜県や長野県にツーリング先を選ぶことが多い。ツーリングと言っても集団で行くツーリングではなく、主にソロツーリングなので行き先については完全に自分の思い通りにできる。

どうして岐阜県長野県を選ぶのかというと、まず私は宿場町などの古い町並みが好きだからだ。岐阜県には中山道の馬籠宿、誰もが知ってる飛騨高山、合掌造り集落のある白川郷など見ごたえのある古き良き町並みを保存した名所が目白押しだし、長野県も妻籠宿奈良井宿(まだ行ったことない)など私の触手を動かすのに十分なツーリング先がある。また「明治、大正、昭和」あたりの文化が好きなので「昭和村」とか「大正村」みたいなワードにも敏感に反応してしまう。とにかく古くさいものが好きなのだ。

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(2020.12.13 馬籠宿)

もう1つの理由として、これは他のライダーさんとも共通してるはずだが、信号のない田舎道田園風景綺麗な河川壮大な山脈快適な高原楽しいワインディング険しい峠道など(岐阜県民や長野県民の皆様には申し訳ないが)とにかく田舎が楽しいからだ。

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(2021.05.03 岩屋ダム)

つい先日、私はGoogleマップでツーリング先を探していた。マップ上で気になる場所をクリックすると色んな情報が見えるので大変参考になる。「あ、この辺行ったことないわ」とか思いながら地図を拡大縮小スクロールして、道路の繋がり具合を見たり近隣の道の駅や観光スポットを探したりできて計画が立てやすい。

今回もそんな感じでGoogleマップを見ていたら自宅から頑張らない程度で行って帰ってこれるくらいの距離に「飛騨金山」という地名(駅名)を見つけた。特に理由があるわけでもないが(瀧くんのように)行ったこともない場所に何故だか惹かれて情報収集を開始した。

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(Googleマップでクチコミを表示している図)

Googleマップのクチコミ情報にはちらほらと「筋骨めぐり」という聞き慣れないワードが登場し「なんだろ?」と疑問に思って色々調べた。岐阜県下呂市・金山町観光情報サイトがあり「筋骨めぐり」が詳しく説明されており大いに興味を持つこととなった。

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他にも個人ブログなどで「筋骨めぐり」を解説している記事を読み漁り(というより写真を見漁り)私の『絶対に行くぞスイッチ』がONになった。
翌日は梅雨の合間の晴れた日曜日という奇跡のツーリング日よりだったため早速現地に向かった。途中の休憩でおいしいソフトクリームを食べたりしたがそこは割愛して話を進める。

筋骨めぐりの必須アイテム「散策マップ」

最初に向かったのは筋骨めぐりの時に無料で駐車できる「ドライブイン飛山」だ。ドライブインでは筋骨めぐりの必須アイテムである「“筋骨めぐり” 散策マップ」(以下「散策マップ」)を入手できる。JR飛騨金山駅でも入手できるようだがそちらは確かめてないので悪しからず。

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このマップは必須だと思う。「筋骨」というのは住民が生活に使う細い通路なのだが本当に狭い。マジで狭い。なんとなく「1本目の曲がり角を右に~」みたいに探しているレベルでは見落としてしまうくらい狭い。

どれくらい狭いかと言うとこれくらい狭い。

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ただここはまだ分かりやすい。初心者でも注意していれば見つけ易いしビジュアル的にも通路であることが一目瞭然なので難易度は低い。私は画像奥のガソリンスタンドの方から手前側に歩いて来たが、早速見落として通り過ぎてしまい引き返して通路入り口を発見した。向こう側からは非常に見つけにくいが、こちら側からはわりと見つけやすい。

しかし中にはこういうところもある。

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ここに気付ける初心者は少ないだろう。

もし、万一すぐに気が付けたとしよう。その時、貴方はここに入っていく勇気があるだろうか?他人の裏庭や勝手口だけに通じるような私有地なのかどうか判断もつかない「隙間」にズカズカと入っていけるような「常識人」はいないと断言しよう。常識人であれば入れないはずだ。

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(このあと右側の民家の扉が開いて住人が出てきて気まずかった)

そこで「散策マップ」が必要なのだ。散策マップさえあれば間違うことがない・・・とも残念ながら言い切れないのだ。私も見慣れないうちは何が何やら分からず今いる場所をマップで探すことがとても難しかった。けれど慣れてくれば大丈夫。マップと今いる場所はそのうち一致するようになる。慣れが必要だが必ず分かるようになる。

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これはマップが悪いのではなく恐らく自分の中にある「常識」が邪魔しているのだ。地図上にある道(赤色で描かれている)を探そうとしても、自分の中にある道の基準に当てはまらないほど細いため「目視」しても無意識に「隙間」であると脳内解釈されてしまいなかなか道が見つからないのだ。

しかし、行ったり来たりしているうちに少しずつ道を見つける能力が養われて次第に地図の見方を習得することができるからその辺はそんなに心配しなくても良い。

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(この先の庭で家族がBBQとかしてるかも知れない・・・)

筋骨めぐりを始めるにあたって初心者が抱える問題で一番厄介なのは自分の中にある(やはりここでも)「常識」なのだ。私達は普段いくらご近所で気の知れた間柄と言えど他人の家の裏側に抜ける細い通路らしきものがあったとしても決して入り込むことはしない。

他人の家の勝手口のドアのすぐ隣を抜けて台所の換気扇や居間の窓・足元には資源ゴミとして出される日を待っている空き缶や空き瓶などが並んでいる外壁と隣家の外壁の間にある人ひとりがギリギリ入れるくらいの細い「隙間」に断りなく入ってはいけないことを本能が知っているのだ。

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(この先の浴室で呑気に窓を開けながら入浴しているシズカちゃんに見つかって「きゃーエッチ」と言われてしまうかも知れない・・・)

そういう家と家の間の細い隙間をガツガツ入っていくようなメンタルを我々常識人は持ち合わせていないのだ。

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(この先で上半身裸のおじいさんが乾布摩擦しているかも知れない・・・)

ここでもやはり「散策マップ」である。こいつは通行書か免罪符なんだと思う。普段なら他人の生活を覗き見るような裏の通用路に決して足を踏み入れるようなことをしない私達でも、このマップさえ持っていれば「あー、筋骨めぐりに来た人ね」って思ってくれるに違いないという奇妙な安心感を持って臨むことができるのである。

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(思いのほか複雑に入り組んだ立体的な通路になっている)

そこには住民の普段の暮らしがあって部外者がガツガツ入ることが許されないことのように思ってしまうのだが、マップさえ持っていれば「あー、筋骨めぐりの人ね」ってきっと思ってくれているに違いないから人の家のすぐ裏を行ったり来たり、立ち止まったり撮影したりしていても「許される」のだと自分に暗示をかけることができる。

自分に暗示さえかかればこんな所にも入り込める。

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(この先に進むには大人であれば屈みながら歩く必要がある)

実際に許されているかどうか人の心を確かめる術もないのだが、なんせ町興しのために大々的に宣伝している「筋骨めぐり」であり、パンフレットや情報サイトまで作ってしまっている地域自治会お墨付きのレジャーのはずなので、ここは堂々と地図を片手に筋骨めぐりに臨みたいものだ。

「筋骨めぐり」を始める前に必ず「散策マップ」を入手して欲しい。

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そこには我々の知らない世界観があった

散策してみて感じたことだが都会に比べてプライバシーが軽視されていると思う。筋骨めぐりをしていると洗濯物は普通に干されているし、網戸の向こうから生活音が聞こえてくるのに、そこを他の住人や観光客が通行する。

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見られることを分かっているのに余裕で洗濯物を干すし、裏口の鍵なんかは多分ろくに施錠もされていない気がする。(確かめたわけではない)

都会といっても大都市でもなく地方都市近郊レベルでもで「隣人」と言えば「たまたま隣に住んでいる人・家族」といった程度の認識であり、それ以上でもそれ以下でもないだろう。単なる隣人だ。

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(建物同士の境界も曖昧だ・・・くっついているのか?)

しかし、ここ金山町では「隣人」は単なる隣人より「親戚」に近いもののように感じる。あくまで私の主観なので合っているかどうかは分からないが、信用の出来ない他人同士であれば通路を封鎖して行き来できないようにしたいものだろう。

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(湧き水を共同利用しているようだ)

町全体が独特の世界観で溢れていて、我々の日常とは一線を画すものとなっている。特異であることは間違いないが、どこか懐かしさと温かみのある風景だ。

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(通路の途中にこんなスペースがある)

古き良き時代の日本では集落で助け合いながら暮らしていくのが当たり前だった。ここ金山町にはそんな懐かしい情景が残されている気がした。

昭和感が満載

町並み全体が何故だか懐かしい感じだと思った。昭和感が満載だ。愛知県内ではここまで昭和感が残る地域も少ないだろう。というか私は知らない。(知っていたら教えて欲しい)

昭和終期の感じが好きなひとにはオススメな観光スポットだ。

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(隠しきれない昭和感)

鎮守山の両面宿儺

一通り散策し終わってから「もちこう」さんで「丹波の黒豆大福」をお土産として買いにいった。お店の人に「両面宿儺」を見に行くように勧められたのでマップ右下の方に載っている「鎮守山」へ行った。

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(こ、これなのか?・・・・ごくり)

「両面宿儺」と聞いてワクワクしながらちょっとした山を登ったら、そこには石で造られた「両面宿儺像」があった。

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イメージしてたのとは全然違う「両面宿儺」がそこには居た。景色も良いので筋骨めぐりの際には立ち寄る価値はあると思う。

まとめ

岐阜県下呂市金山町には「筋骨」と言われる市が所有し地域住民が生活道として利用するばかりか、観光客へもその門土を開いている細い通路がある。そこには普段の生活とは違う世界観が待っているのでちょっとした異世界転生気分を味わえるかも知れない。

以下に当てはまる人にはオススメできるので是非訪れてみて欲しい。

●愛知、静岡、長野あたりに住んでいる人
●狭い道が好きな人
●この記事を読んで興味が湧いた人
●アジアンを体感したい人
●古い町並みが好きな人
●知らない街を散歩したい人
●異世界に転生したい人

気まぐれで書いただけの記事を最後まで読んでいただいてありがとうございました。



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