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ベスパについて

序章

私はベスパが好きだ。どれくらい好きかというと乗るたびにニタニタしてしまうし出来たら墓場まで持っていきたいくらい好きだ。乗っていなくても眺めているだけで可愛いし格好いい。いつからかと言うと3年と少し前くらいなので別に昔から好きというわけではない。むしろ、極々最近好きになったニワカ・新参者といったところだ。

そんなニワカであり新参者である私が、世界に向けてベスパについて語るという愛好家の先輩方からすると呆れて言葉を失うくらい無謀なことをしているのである。皆さんもどうかこの事を忘れないように読み進めて欲しい。

この記事におけるベスパの定義

この記事でいう「ベスパ」は1946年~2017年に製造された2ストロークエンジンのMT(マニュアルミッション)モデル全般を指す。ベスパ取扱店では今も新車を販売しているが4ストロークエンジンのAT(オートマチック)モデルだけであり、今回の記事の対象ではなくはっきり言うとまったく別物だ。

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誤解のないように補足するが、ベスパ=2スMT車というのはあくまでもこの記事限定の便宜上の定義であり、現実世界では現行4ストAT車も間違いなく正式なベスパである。

私の愛機50S

ベスパは 約70年にも渡る長い期間製造販売されいていたわけだが、その中で私が所有する50Sは初度登録年が平成3年、西暦で言えば1991年製で今年が生誕30周年の個体だ。

30年前のバイクというと一般的には旧車の部類だがベスパ70年の歴史からするとむしろ新しい方だ。一部の愛好家にはいまだに1950年前後の個体を現役で乗っている猛者もいるし、1970年前後のものなら運が良ければその辺の地方都市を走っているのを見つけることができる程度には現存する。

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(VESPA50S)

愛機との出会い

私は愛機50Sを2018年2月終わりに無謀にもメルカリで買った。癖のあるイタリアンスクーターであり故障もしやすいと言われている。素人であれば(素人でなくても)整備済み車両を知識と技術のあるバイク屋から購入するのが正解であることは分かっていた。しかし、当時の私は「自分で整備して乗りたい」という欲望に支配されていたため、端から「不動車でもいいから安い車体をオークションとかで買って自分で整備して乗る」というオチャメな計画で動いた。

そして購入したのがこれである。

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(SOLDになっているが私が買ったから当然だ)

メルカリに出ていた50S、エンジンは75ccにボアアップ済みだ。私は自動二輪免許を持っているため原付二種登録することにより2人乗り可能、二段階右折不要、30km/h制限なしなどのメリットが大きいため都合が良い。

77,000円という価格について言えば十分に安い。同型の整備済み車両であれば現在の価格で25万円~50万円で流通している。外装含めてすべてフルレストア(新品同然に修復すること)された綺麗な車体であれば40万円~50万円くらいするし、25万円程度で手に入る車体はどこかしら難ありというのが相場だ。

私はその価格に釣られて買うことになったが、程度の良し悪しについては過度な期待はせず、エンジンが掛かれば儲けものくらいに考えていた。

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メルカリに掲載されていた写真はこの4枚のみ。何故か全体を収めた写真はなく、撮影が下手くそなのか意図的にそうしているのか判断がつかないが車両の一部が見えないため出品者に質問した。

私「写真に写っていない箇所で大きな凹みはありませんか?」
出品者様「ありません」

ちょっと迷ったが不動車でも10万円を超えることが珍しくないVESPA50Sでエンジンはかかるし車体に大きな凹みはない(出品者談)という許容できる範囲の車体(怪しいけど)が77,000円なので購入することにした。陸送はこちらで発注して15,000円程度だったので合計しても10万円を切る価格で手に入れることができた。

難ありの車体(想定内)

届いた車体は凹みや曲がりがあったが想定内のものだった。安いから仕方ない。エンジンについては始動はするから嘘はないが吹け上がらず速度は出ないし少し走ると間もなくストールしてしまう。再びエンジンをかけるには30分以上おくか点火プラグを他のものに変えるとそのうち掛かるが、始動することに成功した時は何が原因で成功したのか理由は全然わからない。

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安定して走行できない。。。なかなか苦戦しそうな予感だ。

とにかく整備して本来の調子を取り戻さないと日常使い出来ない眺めるだけの盆栽になりそうだ。バイクは昔から所有しているし乗っているが全てバイク屋任せなのでベスパどころかバイク自体を自分でメンテナンスすることが初めての経験となる。まずはアマゾンで工具セットをポチった。

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ベスパの師匠

私にはその道の師匠がいる。ベスパ初心者の私が整備されていない車両を現物確認もせずに購入決意したのは師匠の存在が大きかった。師匠は趣味でベスパを多数レストア所有している人であって本職はまったく関係ない業界の人だ。だが今まで数々の不動車を蘇らせてきた経験を持つ人だし、私がメルカリで不動車レベルのベスパを買う背中を押してくれたので、そこは完全に信頼しきって購入に踏み切った。そもそも師匠と出会わなければベスパに興味を持つことも無かっただろう。

購入した工具と師匠から指示されたキャブクリーナーなどを用意して、早速師匠の指導のもとキャブの洗浄から始めた。その結果、愛機はエンジンストールすることなく町内を一周することが出来るまで力を取り戻した。

力を完全に取り戻すための作業

その後、宇賀神商會(ベスパ所有者御用達の通販業者)などで劣化パーツや足りないパーツ(ウインカーレンズ、ゴムモールなど)、シート、装飾品、キャブのメインジェット数種類、1次減速比変更用の16Tギアなどを調達し、本来の性能を取り戻す作業に勤しみ、2018年の4月下旬にはついに完全復活を成し遂げた。

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(2018年4月30日撮影)

ステッカーを傷隠しで貼っているが、これは完全なレストアを目指したわけではなく、年季による使用感も大事にしようとした結論だ。お金の節約にもなるし、ありのままの姿を愛でようという考えのもと細かい傷や凹みはそのままだ。

なんとか性能を取り戻すことに成功して、今は町内どころか他県へのツーリングをこなせる安定した状態となった。安定ってすごい。

ベスパという実用品

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ベスパは実用品だ。とても美しく芸術的な趣があり博物館やオシャレなカフェなどの室内で保存・展示されている個体がある。けれどベスパは現実の公道を走り、人を目的地へ運ぶという実用的な目的のために作られ、そして今も世界中で人々を運び続けている実用品であることは間違いない。

実用品であるベスパが多くの人を魅了して止まないのは何故だろうか。実際にベスパに触れ、運転してみないと分からないかも知れないがベスパには外観以外にも他のバイクとは違う魅力がある。

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(給油時の儀式、2ストオイルの投入の図)

今どき2ストロークという絶滅寸前のエンジンを動かすため、給油の度に2ストオイルを規定分量投入する儀式があり、エンジン始動はキックしかない。なんとも不便な乗り物だが、そういう不便さもベスパの魅了だ。ガソリン残量メーターも存在しない。。。だがそこが良い。

通勤の相棒

私は他のバイクにも乗っているためベスパだけが愛機というわけではないが通勤のため毎日乗っている。そういう意味で相棒である。バイク乗りに「あなたの相棒は?」と聞かれたらベスパと答える。毎日乗っているからね。

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(ガソリンスタンドでのショット、かわいくて仕方ない)

通勤といっても自宅から駅までの間なのでたかだか片道5~6分のことだが、ベスパのおかげで通勤は楽しい。以前は駅までの往復を国産スクーターに乗っていたが単なる移動手段であり、特段の思いはなかったからベスパって本当に特別だと思う。この気持を分けてあげたい。

ベスパの魅力・特徴

ベスパの特徴を箇条書きすると
・鉄ボディ
・2スト
・4速MT
・混合給油(ガソリンにオイルを自分で混ぜる)
・イタリア製
・バッテリーレス
・クラクションが蛙🐸ボイス(ゲロゲロ)
・造形が美しい

4速MTという点についてはクラッチ操作もあるため、本格的なMTだから操作感はバイク乗りの人も納得の本格派だ。

鉄ボディの質感は車と同等であり、他のスクーターのようなプラスチックボディではないため高級感がある。プラスチックボディのスクーターの外観は太陽光や風雨による劣化で10年もすれば相当見すぼらしいものになってしまうが、ベスパは錆さえ気をつければ30年経っても高い質感を維持できる。もし、錆びてしまったとしてもレストアは可能だ。

2ストサウンドも楽しい。今どき2スト車は殆ど走っていないためベスパの4速MT2ストエンジンの音は特別だし乗っていて楽しい。

ほんとベスパって素晴らしい。

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(見てくれ俺のかわいいベスパを)

私の愛して止まないベスパの良さを少しでも多くの人に知ってもらいたいと思ってこの記事を書きました。最後まで読んで下さりありがとうございました。

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