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『2035 10年後のニッポン ホリエモンの未来予測大全』を読んで。

書籍名:2035 10年後のニッポン ホリエモンの未来予測大全
著者:堀江貴文
出版社:徳間書店
発行年:2023年7月3日発売

幅広く最新の情報を得ているためだと思うが、色んなアイデアをよく思いつくなと感心した。

未来予測としては、確かに様々な本や新聞・ニュースなどで得られる情報の通りなので予想外なものはなし。最も膝を叩いたアイデアは駐車禁止対策の件。

他の堀江氏の本でも思うが、極端なまでの資本主義万歳的な主張とソリューショニストとしての考え方にはやや疑問が残る。

本書でいえば例えば「(経済活性化のために)外資をどんどん受け入れればいい」「外国人や外国企業にもどんどん土地などを買ってもらえばいい」という主張や、「食糧不足問題はテクノロジーがすべて解決する」といった点など。

これらの点、それぞれの根拠は論理的ではあるが、若干まだ納得感に欠ける。

国内産業が消える危険性

資本主義の仕組みとして、お金はお金を呼ぶ。
外資によって最も儲かるのは、外国企業。
それによってトリクルダウンとして地元企業にお金が流れたり、税収は増える。
しかしそれは二次的なもの。欲を言えば国内企業自体を育てたい。

もし日本のインフラ、例えば本書で例として挙がっている発送電や水源管理を外資に置き換えると考えてみると、日本企業は今後その産業に太刀打ちできなくなる未来の方が強く見える。インフラ産業を掴まれるのは外交の場で弱みとなるのでは。

モバイル端末、クラウドサービス、SNS、AIサービスなど、国内にも火種はあったが、結局メガテック企業が強く、国内の似たような小さなサービスはみんな競争に負けてしまった。
OSなどに至っては過去にアメリカに圧力をかけられて潰されてしまった例もある。どれも日本だけの話ではないが。

一度シェアを奪われたら巻き返すのは至難の業だ。
生活インフラと化したAmazonやGoogleやAppleに今さら国内企業が勝つことは不可能である。

勿論、AmazonやGoogleやAppleのサービスの恩恵を我々は強く受けている。それらのサービスやプロダクトによってめちゃくちゃ生活の利便性が高まった。

その代わりそのプラットフォームなくしてアプリを市場に出したりWeb検索したりしたりしにくくなっていて、使えば使うほど外国企業が儲かり、ビッグデータが海外に流れ、国産企業が相対的に弱まっていく。

また農業もアメリカなど海外から安い農産物が入れば入るほど、競争力の弱い国内農家は衰退していく。
アフリカや中南米のように相対的に弱い国々はこうして国内産業が壊滅してしまった例が多い。

こういった例を増やさないようにする必要がある。

外資に頼るには前段階が必要

「競争原理万歳、自然淘汰として弱い企業は消えるべき」
とは僕は思えない。
弱肉強食となったら食いつぶされて終わりだからだ。
現実的に今の日本は弱い。

純粋に、人口規模が大きく、競争原理が働きやすく、外交的パワーバランスに差がある大国と日本が競争するのは分が悪く、足掻いても無駄なきらいはある。才能のある人材の母数が違い過ぎる。

国力が弱い以上、後からインフラを買い戻そうとしてもお金がなさ過ぎてとても買い戻せない…という悲惨な未来は絶対に避けたい。

日本企業を保守的に守ったところで、ゾンビが残るだけで経済が活性化しない面はあるが、かといって外資に頼ると国産企業は衰退していってしまう。

『ただでさえ国内経済が縮小していくのだから、日本人は商売人としてもっとしたたかになるべきなのだ』
と本書でもいわれているように、ビジネスにおいてうわ手に立たねばならない。

誘致するのであれば条件付きにして美味しい部分はしっかり国産企業や国が頂く仕組みがなければ、マーケットという植民地になって終わってしまいかねない。

資本を受け入れても、権利はしっかりホールドできる仕組みを整えたり、外国企業のやり方を学んですぐに活かせるような体制を整えることなしに安易に外資に頼るのは危険だと思う。

堀江氏と自分では持っている情報量も経験値もコネも違い過ぎるため、大きな声で批判は出来ない。
ただ現時点の自分の持っている知見ではリスクの方が高く見えてしまう。

どこまで深くシミュレーションしているか、各産業の内情をどこまで把握した上で考えているかという点について、詳しく知りたいと思った。

核融合発電への期待

核融合発電についてはそこまで詳しく追えていないが、未来は明るそうだ。過去の日本グッジョブと言える。

完全にクリーンなエネルギーがあるとは思えないし、運用リスクがゼロとは思えないが、原発を使っているのと比較すればこの上なく良いエネルギー源であることに変わりはない。

各国で核融合発電が当たり前になり、エネルギーを持続可能に得られるようになったとき、どのような変革が行われるのか。

余りにも影響度が大きすぎてシミュレーションしにくいが、世界が全く別物になり、大きな歴史転換となることは確実だ。

資源をめぐる争いはほぼなくなると思われる。
残るのは、地の利のような、地形、立地のようなもの。

乾燥しすぎている土地、日照時間が少なすぎる土地、そもそも国土が狭い土地、他国と離れすぎていて移動しにくい土地、新鮮な食料を得にくい土地などは、エネルギーが豊富にあっても相対的に魅力が薄い。
争点はこういった部分に移るかもしれない。

エネルギーが豊富にあれば化学肥料に困らなくなるし、養殖も培養もし放題、食糧問題はこの点でほぼ改善される。

どれだけ自由に使える時間があるか、
どれだけ他者を支配できているかとかそういった部分が争いの場になるのだろうか。

このシミュレーションは中々面白いので引き続き自分でも考えていこう。


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