『世界で最初に飢えるのは日本 食の安全保障をどう守るか』を読んで。

結論、日本の食料安全保障はゼロに等しく、
アメリカとの力関係のせいであろうか、上流からの改善・改革はほとんど期待できそうにない。
ということが見えて、読後感としては絶望に近い感情を抱いた。

食の安全と国家関係

中国やロシアの目に見えるデメリットが日夜報道される関係で、肌感覚として反中国・反ロシアの機運が強いように感じる一方、
アメリカに対する危機感やネガティブ感情は比較的弱いように感じる。
中立的な位置に自分を置く考え方をもっと広げていくべきだろう。

日米の力関係、そしてアメリカが敵または完全に見放されたようなケースにおける中国との力関係を念頭に入れると、
食・健康から見た日本の独立を強行的に、政府レベルで動くことはできない。
アメリカを敵に回して後ろ盾を失えば中国に飲み込まれるであろうし、
敗戦国であり、経済や食といった多くの面で首根っこを掴まれている現状、表立って反米的な動きをすることはできない。
それはそれで自殺行為に等しい。

草の根として我々ができること

『そのとき、日本は何人養える? 食料安全保障から考える社会のしくみ』における著者、篠原信氏の主張の通り、
食料増産や農林水産魚への補助金は必要だとしても、
日本産業を俯瞰してみて国内の社会経済を後回しにもできないのは現実としてある。

そのため、ボトムアップ的に、国民全体が食と健康と環境や産業の持続可能性を基本的な概念として保持することこそが現状打開のための突破口となる。

現実問題として、賃金が上がらず、手元に生活インフラとしての「日々の食」に充てるお金が足りないため、
背に腹は代えられないとして、輸入品の安価で危険な食材を選ばざるを得ない。
となれば、我々ができることは何だろうか。

観点としては、以下が重要だと思う。

・生産者と直接的につながることによって中抜きを減らし、可能な限り安価に安全な食を得る環境づくり
・農林水産業軽視の政治家を選ばない
・食の安全性や農林水産の生産業者の現状を正しく知る
・効率や値段や見た目を重視する姿勢を見直し、健康、持続可能性、倫理的な調達をベースとして備える教育

一番初めに考えられそうな、「収入を上げる」はあえて外した。
それは、収入を上げることは容易ではなく、またそれを第一に考えることは「節約」や「料理の時間の短縮」が発生する可能性が高いからである。
さらに企業目線でも、質を下げることでコストを下げ、食料を安く買ってもらうようにするという手が生じてしまうことを防ぐためである。

資本主義の問題点を念頭に社会的な視点から対策を考える

資本主義の大きな問題点として、
負債を転嫁し消費者から見えなくすることによって健康や環境への悪影響が隠蔽されてしまう性質や、
参加者が同じ土俵に上がることで搾取構造自体が再生産されてしまう性質がある。
これら問題点を防ぎ、改善するためには、
三権分立のように、第三者がその構造を摘発、公開、可視化させることによって利益を手に入れられるような体制をきちんと整える必要がある。

消費者センターや労働基準監督署のように、企業が利益のために暴走するのを止める手立ては非常に重要で、
食の安全という視点からもそのような第三者機関を備えたい。

消費者は「知らない」または「わかってはいるけど先立つものがない」という状況に陥ってしまっている。
よって、啓蒙および、実際に被害を受けたとした際の駆け込み寺としての第三者機関が必要に思う。

健康被害や農林水産業の衰退や食文化の劣化や土質の低下が緩やかすぎて、
茹でガエルのような状況になってしまっているように感じる。
また、労働組合やデモ・ボイコットが発生するには、日本は気質として空気を読みすぎる。
そのため第三者機関が自然発生することは考えにくい。
影響力のある人、発信力のある人が地道に活動し、
その影響力の輪を広げていくことがまず必要だろう。
また若い世代、とりわけ親和性の高いZ世代の心を掴めるように活動の方法、発信の方法を工夫することも欠かせないだろう。

民主主義の改革には、成田悠輔氏の活動が期待できる。
また資本主義の改革には、斎藤幸平氏の活動に注目したい。
右翼連中をうまく見方につけられれば、愛国心を起爆剤に、生産的な農林水産業の高進や伝統的な食文化の保全を進めやすいかもしれない。

同じ危機感を抱いている人を味方につけて、斎藤氏が取り上げていた、非暴力で社会を変革する「3.5%」のメンバーを増やし社会を改善していくためにも、現状を認識するための啓蒙のために発信をしていきたいと感じた。


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