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romi-unieアトリエ くりちゃんの働き方(1)

romi-unieでは製造部門を「アトリエ」と呼んでいます。

鎌倉のアトリエには、ジャムと焼き菓子の2部門があり、東京のMaison romi-unieは焼き菓子のアトリエのみです。

鎌倉の店で焼き菓子のアトリエ長を務めているのが“くり”ちゃん。店が2年目の2006年に入社して、16年目になります。彼女は製菓学校を卒業して、鎌倉の有名洋菓子店で3年働いたあと、20代でロミ・ユニに入りました。当初はromi-unieもジャムの製造のみでしたが、その後、Maison romi-unieや焼き菓子のアトリエも経験して、現在は一番長く現場を率いる存在になりました。職人肌で仕事が綺麗。毎日焼き菓子を見ているパッケージのスタッフからは、上がってくる焼き菓子を見れば、ひと目で“くり”の仕事だとわかる、と言われています。

店の商品に「キュリオジテ」というジャムがあります。ブルーベリーとヘーゼルナッツを組み合わせたもので、オープン以来ずっと作り続けているジャムです。彼女はそのジャムと出会って、店に興味を持ってくれました。しかし、その出会いはちょっと強引だったようです。彼女が初めてお客さんとしてRomi-Unie Confitureを訪れた日、棚にずらりとジャムは並んでいたのですが、よく見ると2種類だけ。恥ずかしい話ですが、製造が追いつかず、アトリエの仕事も混沌としていたころでした。

洋菓子店で仕事をしてきた彼女に、その様子は店としてありえない姿だったと思います。ところが、買って帰ったジャムを食べて「もっといろんな組み合わせを食べてみたい」という好奇心を優先して製造スタッフとして、応募してくれました。今では、アトリエの作業を段取りよく組み立てて、製造現場の事情でお客さんの選択肢が減る、という状況をゼロにしてくれています。頭のどこかに、初めて訪れたときの店の姿が残っているのかもしれません。反面教師のように。

この彼女が、じつは社内一の残業嫌いです。「何でもやります。でも残業だけはできません」がポリシーなのです。その日、やるべき仕事を時間内に計画的に進める段取りを組ませたら、彼女の右に出る人はいません。自分の持ち場だけでなく、隣接するジャム部門の仕事が終わりそうにないときは、さっとフォローにまわり、社内全体で「残業ゼロ」を実行してくれています。

アトリエはチームでまわしていく仕事ですが、担当を割り振られたあとは個人の裁量に任される職人仕事の連続です。一方で、自分の担当だけに終始していればいいというわけでもありません。チームプレーと個人の仕事、ふたつのバランスが大切です。残業嫌いの彼女は、ロミ・ユニで仕事を始めたばかりのころ、当時の先輩から大事な仕事のクセをつけてもらったそうです。

「質問をする前に、次にやることを自分で考えてまず動く。そこでわからなかったら初めて質問をしなさい、と先輩によく言われました。ただ漠然と『何かやることありませんか』と聞き続けて、言われることだけやっていたら、自分で考えるクセはつかなかったと思います」

これが、彼女の働き方のベースになっているそうです。その先輩は、思い返してみると、romi-unieのアトリエの製造の流れやチームが確立されていない時代に、仕事の流れを作ってくれた人でした。くりちゃんは、まず自分で考えることができて、いつのまにか、その先輩の役割を彼女が受け継いでくれるようになりました。いまは、新しく入ったスタッフが段階的に仕事をマスターしていけるよう、教育的側面も意識しながらアトリエの仕事を組み立ててくれています。romi-unieにとっては、本当に心強い存在です。

ワークライフバランスを考える上で、残業がないというのは当然いいことですが、「仕事の終わりが就業時間の終わり」という習慣だった人にとっては、決まった時間の中でペースを上げながらもクオリティーを落とさずに仕事を終わらせるという密度の濃い仕事の仕方は、それはそれで難しく、高い製造技術と思考レベルが要求される職場です。

鎌倉のアトリエは朝8時に始まります。終わるのはきっちり17時。間に休憩を1時間はさみます。

「朝一番にその日の作業を全員で確認して持ち場の分担を決め、焼き上げまで一気に進めます。だいたい13時ごろ、量が多いと14時を過ぎることもありますね。そのあと休憩。後半は計量など翌日の準備をして17時にすべての仕事が終わります」

オーブンはリンナイのガスオーブンが2台。外から来られた方は驚かれるのですが、業務用としてはかなり小さいこの2台を駆使して、サブレとケイクを製造しています。オーブン担当になったら、一人で効率よく庫内を生かして、今日のお菓子を時間内に仕上げるにはどう段取ればよいか、焼く前のシミュレーションが必要になります。やり直しのきかない責任の重いポジションですが、うまくまわったときの達成感は大きいようで、アトリエのスタッフに聞くと、意外と人気のある仕事です。

「焼き菓子でもジャムでも自分たちは何百個、何千個と作りますが、お客さんにとっては、その中の大切な1個。これでいいや、というのを一つも出さない――これも先輩に言われたことで、大切にしている言葉です」

やるべきことを商品にしっかり込めたうえでの残業ゼロが仕事の基本です。こうしてアトリエの土台を築いてくれている彼女は、プライベートで自分の時間をちゃんと持ち、年に1度、夏に有休を使って海外旅行に行ったり、人生設計のために仕事とは関係のない金融系の勉強も少しずつ始めたりしているようです。そんな彼女も迷いなくここまで来たわけではありません。むしろ社内一、迷いながらこの仕事を続けてきたと言っていいかもしれません。長くなりそうなので、その話はまた次回に。

※Romi-Unie Confitureでは、現在スタッフを募集しております。https://www.romi-unie.jp/ (ホームページ下の方までスクロールして【お知らせ】を参照してください。

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