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『職業遍歴』#11 駆け出しグルメライター①

筆者が過去に経験した「履歴書には書けない仕事(バイト含む)」を振り返るシリーズ第11弾。初めてライターとして書かせていただいたのは、某有名週刊誌でのグルメ記事でした。

11. グルメライター

現在も続けているライターという仕事。初めてこの仕事をさせていただいたのは、まだ学生の時。誰もが知っている某有名週刊誌でのグルメ記事だった。

私は学生時代からライターや編集という仕事に憧れを抱いていた。卒業後は出版社に入るということも決めていた。そんな私がライターの仕事を依頼されたのは、偶然の出会いがきっかけだった。

その頃私は週末ごとに新宿二丁目で飲んでいた。通っていたレディスバーがあり、そこでできた友達と誘い合ってクラブやらバーやらをはしごしていた。そんな時出会ったのが、新人編集者のOさんだった。Oさんは新卒で有名出版社に入社し、週刊誌の編集をしていた。

編集の仕事に興味津々だった私はOさんに色々質問し、自分も編集やライターの仕事をやりたいと思っているという話をした。するとOさん、「じゃあうちの雑誌でライターやってみない?」と言うではないか。その雑誌は編集者ごとに担当ページが割り振られており、Oさんはグルメ記事を担当している。ところがその雑誌で使っているライターさんやカメラマンさんが男の人ばかりで、やりにくい。女性のライターにお願いできれば自分も仕事がしやすい、とのこと。そんな理由で?という感じだが、私にとっては願ったり叶ったりである。二つ返事で引き受けた。

断っておくが、この時点で私のライターとしての経験はゼロ。Oさんと一緒に仕事をしたこともなく、ただ飲み屋で出会ってちょっと話したというだけの関係性だ。今考えても、やっぱりこの時のOさんは無謀という気がする。でも、「ライターを誰にするか」というのは、往々にして編集者の一存で決定していることが多いというのも事実。極端にいうと、編集者の好みによって決まっていると言っていい。後年自分も編集者をやるようになってから痛感したのだが、やっぱりライターって原稿がいいかどうかだけでなく、「一緒に仕事がしやすいかどうか」が重要。どんなに上手な文章を書く人でも、人間的に問題があったり編集者とうまく付き合えないようなライターには仕事はこない。だから、Oさんが「同性のライターの方が一緒に仕事がしやすいから」という理由で私に仕事を頼んできたのも、まあわからなくはない。Oさんも新人だったから、まだ人脈もなく、ライターの知り合いもいなかったのだろう。けどやっぱり、有名週刊誌なのに、新人編集者の裁量でいきなり未経験の人間がライターとして記事を書くことになる、ってちょっとどうなんだろう?とは思う。新人といっても編集者は自分の担当ページについては諸々の決定権を与えられているということなのか。

つまり、ライターになる近道としては、飲みの場だろうがなんだろうが、とにかく編集者の知り合いを作るということが一番だ。いきなり知らない出版社に作品を持って売り込みなんかに行ったって、冷たくあしらわれるだけだ。ほとんどの編集者は、知らないライターではなく、自分がよく知っているライターに仕事を頼みたいと思っている。そのほうが、どんな文章を書くかもわかるし、原稿料の相場感もわかる。だからとにかくライターになりたいというのであれば、最初の段階では、文章力を磨くとかより、編集者と知り合い、自分をアピールして仕事をとることが先決だと思う。

ま、これは、「人対人」だった昔の紙媒体の話であり、今はだいぶ事情も変わったのだろう。WEB媒体だったら、WEB上でライター募集とかもやっている。そこに応募して採用されれば、編集者に実際は会うことなく仕事をすることになるのだろう。コロナ禍では特にそういう事例は多いと思う。あと、ブログとかでいい文章を書いているライターに編集者の方から声をかける、ということも多いみたいだ。noteとかもそれで本を出しているライターさんがたくさんいるし。けど実際のところは、やっぱり編集者って多忙だから、普段からいろんな記事に目を通すわけにはいかず、人からの紹介だったり、誰かに勧められたりして記事を読んで、ライターを知る、ということの方が多いのではないだろうか。つまりはやっぱり「編集者と知り合う」のが大事というのは、昔も今もあまり変わらないのかもしれない。

話が逸れてしまったが、とにかく私はそうして初めてライターとして仕事をすることになった。この時担当していたグルメ記事は1ページ。お店の取材をし、原稿を書く。カメラマンは別にいる。写真が大きめで、テキストもお店をおすすめする人たちのコメントが中心なので、取材原稿のボリュームは少なかった。1000字もなかったんじゃないかな?ただ、コメントを抽出したりといった作業も任された。それで原稿料は確か2万程度だったと思う。1000字未満の原稿で2万ってかなりいいと思われるかもしれないけど、当時は文字数でカウントするのではなく、ページ数でカウントするのが一般的だった。私の場合はページ2万、となるので、それほど高いわけではない、ということになる。まあ、標準レベルの原稿料。

取材には原則編集者が同行するのだが、多忙な編集者はライターに現場を任せることも少なくない。とはいえ私はライターとして未経験なのだから、最初の取材くらいは当然Oさんが現場を仕切ってくれるものと思っていた。ところがOさん、別件が入って最初の取材に同行できないという。私はライター初体験ながらいきなり現場を仕切ることになってしまった。

続く

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