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初めての駅から初めての駅へ 西中島南方から十三まで

電車が淀川を越える時はいつも、未知の遠い地から呼ばれているような気がした。

寝屋川に住んでいると電車で淀川を越えることは滅多にない。その日は、新鮮な散歩のために初めて降りる駅を目指していた。

西やし中やし南やし地下やし

せっかく知らないところに来たのだから、ゆっくり歩くことにする。
西中島南方。方角がいっぱいある地名。従うようになんとなく西に向かっていく。十三駅の方へ。

栄えているような、栄えていないような町並み。背が低い茶色い木壁と、輝くような白いコンクリ壁が向かい合う道を歩いていく。平日の昼間は郵便局員と保険屋がそこかしこにいる。どっちも声が大きい人に向いている仕事らしい。直接は見えないどこかで説明されている保険の内容がよくわかった。

煙突がにょっきり。住宅街の中に現れた。銭湯だ。なんだか嬉しくなって表に回る。

閉業してしまっていた。お湯の匂いはしない。その外観を撮りながら、なんだか恐ろしいようなことをしている気持ちになった。

散歩は趣味なんだろうか、娯楽なんだろうか。散歩を趣味と言う人も多いけれど、どこかで違和感を覚えることもあった。趣味と言うほど高尚なものと思えなかった。かと言って娯楽というほど娯楽じみていない。なんなんだろうと考えながら歩く。


代表的な娯楽の、映画を観ることや音楽を聴くことと違うのは、散歩中はどこか小さい自分が居ること。塀の染みを比べて見たりとか、漏れてくるテレビの音に耳を傾けてる時でも、どこかそれを受け取ってる自分が居る。歩くと足が疲れるなー、小指が擦れて痛いなー、静かにそんなことを考えている自分が居る。散歩がただの移動と違うのはそこで、世界越しに自分を見つめているような感覚がある。
なら、趣味とも違うような気がしてくる。散歩とはなんなんだろう。

たこ焼き。ここに来たくて散歩のルートをなんとなく決めていた。
8個で200円。少し冷めてたから2個おまけしてくれた。そうそう。たこ焼き屋さんって熱々じゃなかったらおまけしてくれるものなの。久しぶりにその温かさを思い出した。

Y字路はいいね。Y字路を通るだけでもドキドキする。いろんなドラマの残り香がそこに残ってるみたい。

昼なのにこの暗さの商店街。屋根が重たく蓋してる。そんなことをしなくてもいいのに、どこか伏目がちに歩いてしまう。

脚が疲れてきたから喫茶店に入る。十三駅すぐ近くの純喫茶。ゴルゴ13と金田一少年の事件簿がすごい置いてある。タフと白竜も。
他のお客さんは全員常連だった。不思議と居心地は悪くない。120℃はある熱すぎるコーヒーを飲みながら撮った写真を見返す。
常連さんの1人が「むくみとるために水めっちゃ飲まなあかん」と話しているのを盗み聞きした。おわり。

こういうのめっちゃワクワクしますね

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