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バイクを守ることは自分を守ることーその3

まだ経験の浅い若い方に、考え方だけでも良いので知っていてもらいたい事があります。
それはチェーンの張り具合の調整のことです。
ここでは、バイクの車種やバイクの用途によって、チェーンの調整の方法や弛み大小が違うので、数字で表現することは避けます。
ただ、何故チェーン調整が必要なのか、何を目安に調整すれば良いのか、その考え方を語りたいと思います。
実際の数字やサイズなどご自身のバイクの具体的な調整に関するデータはご自身でご確認ください。
あくまでも自己責任です。

下の図はあまり上手に描けていませんが、左側の小さい青い〇をフロントのスプロケット、右側の大きい青い〇がリアのスプロケットです。
黄色い長方形はリアのサスペンションで伸びている状態だと思ってください。
例えばセンタースタンドをかけた状態、或いはサイドスタンドでバイクが立っている状態と考えても良いです。
灰色の長方形はスイングアーム、左端の黒い〇はスイングアームのピボットです。

この時、フロントのスプロケットの中心からスイングアームのピボットを経てリアスプロケットの中心(アクスルシャフト)の3点を結ぶ線は「への字」の状態(図中の紫の点線)です。
この時のフロントスプロケットの中心からリアスプロケットの中心までの距離を ”A” とします。

図ー1

バイクが走っていると段差を越えたりブレーキングや加速を繰り返すことで、リアサスペンションは伸び縮みを繰り返します。
或いはタンデムをしていたりすると、段差を越えなくても同乗者の重さでリアサスペンションは縮んだ状態になります。
このサスペンションが縮んだ状態の時は、フロントスプロケット、スイングアームのピボット、リアスプロケットの3点を結ぶ線は直線に近づくかまたは直線になります。
この状態の時、フロントスプロケットとリアスプロケットの中心間の距離はサスペンションが伸びている状態の時に比べて長くなります。
これはバイクの構造上避けることはできません。

図ー2

もうお気づきでしょうか?
図ー2の状態では図ー1に比べてどうやってもフロントスプロケットの軸から後輪の軸までの距離は長くなります。
つまり、この状態の時にチェーンが最もピンと張った状態になるわけで、この瞬間にチェーンに適切な弛みがないといけないのです。
エンジンの燃焼室で爆発した力を動力として取り出すには、エンジンのクランク軸からドライブシャフトへ伝えられ、減速された力を受けるのがドリブンシャフト。
このドリブンシャフトにフロントスプロケットが取り付けられていて、チェーンが過度に引っ張られてピンと張っている状態が何度も繰り返されればドリブンシャフトに無理な力がかかって、いつかはギヤが偏摩耗したりベアリングを傷めたりしてエンジンを開けて修理することになりかねません。

モトクロス用のバイクを見たことがあるでしょうか?
モトクロスはスポーツバイクと違って荒地を走りジャンプすることもあるので、サスペンションのストロークはロードスポーツと比べると格段に長く作られています。
サスペンションのストロークが長い、言い換えるとサスペンションが伸びている時のフロントスプロケットとリアスプロケット間の距離と
サスペンションが最大限縮んだ時のそれとはかなり大きな差になります。
だから停車状態のチェーンはかなり弛んでしまいますし、弛み過ぎでチェーンが外れてしまわないようにチェーンテンショナーが取り付けられていたりもします。

こんなふうに、バイクの車種や用途でどんな張り具合が適切なのかは、サスペンションが縮んだ時でも余裕のある弛みができるように調整しなければなりません。
停車状態の時のチェーンの弛みだけで「こんなもんだね」と大雑把に判断してしまうのはやめて、もう一度適切な弛みをチェックして調整するのがお薦めかもしれません  ・・・というお話でした。

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