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フライトプラン無しの運航はありえない

[要旨]

ドラッカーは、「目標は絶対のものではなく、方向づけであって、未来をつくるために、資源とエネルギーを動員するためのものである」と述べています。すなわち、組織的な活動である事業活動に臨むにあたって、組織の構成員の考え方や足並みを揃えたり、必要な資源を明らかにして、それを調達するために必要ということです。

[本文]

今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの國貞克則さんのご著書、「財務3表一体理解法『管理会計』編」を読んで、私が気づいたことについて説明したいと思います。前回は、ドラッカーは、「今日、総コストの極めて多くの部分が直接費ではない、特定の製品のコストを知るには、コストのうち、膨大な部分が比例配分によって決定されるような数字は役に立たない、明確な焦点のない事業のコストは、作業量による配分が最も現実に近い唯一の計算となる」と述べ、ABC会計を提唱したということについて説明しました。

これに続いて、國貞さんは、ドラッカーが、目標や予算を活用して事業活動に臨むことが重要であると指摘していると述べておられます。「ドラッカーは、目標とは、企業がコントロールできない外部要因をどう見ているかの表れだと言います。つまり、外の世界は、常に変化しますが、もし、大きな変化がなければ、これくらいのレベルは達成できると期待している、もしくは、推測しているのが目標だと言うのです。

ドラッカーは、このことを、航空機のフライトプランと実際の運航を例にとって、次のように説明しています。『航空機には、フライトプランという目標があります。それは、外部に大きな変化要因がなければ、目的地にこれくらいの時間で到着するという目標です。ただ、例えば、乱気流が発生したなどの外部要因の大きな変化があれば、航路を変更したり、場合によっては目的地自体を変更したりします。しかしながら、フライトプラン無しでの運航などありえないのです』

ドラッカーは、目標について、次のように言います。『目標は絶対のものではない。方向づけである。(中略)未来をつくるために、資源とエネルギーを動員するためのものである』また、予算については、次のように言います。『予算が組織を方向付ける。(中略)予算によって、資源を成果に向けて配賦することができる。収支をバランスさせることができる。手遅れになる前に、打つべき手を打つことができる』」(69ページ)

これについては、私も何度もお伝えしていますが、目標や予算の作成に否定的であったり、または、それらを精緻なものにすることに消極的であったりする経営者の方は少なくないようです。その理由は、目標や予算を作成することに労力がかかるということや、それらを精緻なものにしたとしても、実際に、目標通りになる可能性があまり高くないからということのようです。しかし、このような理由は、ドラッカーの考え方を否定できるものにはなっていません。ドラッカーは、「目標は絶対のものではなく、方向づけであって、未来をつくるために、資源とエネルギーを動員するためのものである」と述べています。

すなわち、組織的な活動である事業活動に臨むにあたって、組織の構成員の考え方や足並みを揃えたり、必要な資源を明らかにして、それを調達するために必要ということです。予算についても、「予算によって、資源を成果に向けて配賦することができる、収支をバランスさせることができる、手遅れになる前に、打つべき手を打つことができる」と述べています。すなわち、予算の作成をするという過程を通して、事前に収支のシミュレーションを行うということです。このことによって、採算割れを避けることができたり、効率的な資源配賦をすることができたりします。

これらをひとことで言えば、事業活動を成行的ではなく計画的な活動をするということです。もちろん、繰り返しになりますが、目標や予算の作成には労力がかかりますが、同じ業績を得るために、成行的な活動をするよりも、計画的な活動をする方が、明らかに効率的と言えると思います。経営者の方は、いまだに、目標や予算の作成を始めとする管理活動を苦手としたり、避けようとしたりしますが、これらは経営者の方の避けることができない重要な役割と考えなければならないと、私は考えています。

2024/5/4 No.2698

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